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悩ましい新卒教育(2)
~「個性が前提」の時代、人事と現場は何を担うべきか

公開日:2026.05.29

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新卒社員が入社して三ヶ月。多くの企業で初期研修が一区切りし、本配属を迎えつつある時期ではないでしょうか。新卒たちは「守られる存在」から、徐々に「成果を期待される存在」へと立場を移し始めています。

今回の編集部レポートでは、二回にわたり、当社の事例として「教育される側の新卒社員」「教育する側の先輩社員・人事」のそれぞれにインタビューを行ったレポートをお届けしています。

第一回のレポートでは、新卒二年目社員へのインタビューを通じて、教育される側から見た新卒教育のリアルを掘り下げました。
そこから浮かび上がったのは、「若手が弱くなった」などの単純な話ではなく、成長実感を持ちづらい構造や、評価や期待が見えにくい環境への戸惑いでした。

第二回となる今回は視点を変え、教育する側、すなわち人事・現場マネジメントの立場から、新卒教育の現在地を探ります。

話を聞いたのは、当社の人材開発室で新卒教育を担当する荒井。彼女は同室に入社してきた新卒の教育担当を担う立場でもあります。
毎年約100名規模の新卒と向き合い続けてきた人事の視点と実際の教育担当者としての視点から、近年の新卒の特徴や育成の難しさ、管理職に求められる関わり方などを語ってもらいました。

「知識欲が高く、自己表現できる」25卒の特徴

彼女がまず挙げたのは、最近の新卒社員に見られる顕著な変化です。

「『自己主張』とは少し違うのですが、自分の考えを言葉にできる人が多いですね。それに、新しいことを覚えたい、知りたいという気持ちがとても強く、知識欲がかなり高い印象です」。

研修中や人事面談の場でも、「なぜそれをやるのか」「もっと知りたい」といった問いが自然に出てくるそうです。指示を待つよりも、自ら理解しようとする姿勢が目立つといえます。

その背景として挙げるのが、学生時代の環境です。25卒以降は、コロナ禍が一定程度緩和された状態で大学生活を送り、対面でのコミュニケーションや自己表現を経験してきた世代です。

「24卒までの世代と比べると、表現することへの抵抗が少ないです。コロナ明けの環境が、少なからず影響していると思います」。

進む“個性の分散”と、育成の難易度

もう一つ、近年の新卒教育で強く感じる変化があると言います。

「年々、新卒を“カテゴリー”で捉えにくくなっています」。

かつては、10人単位である程度似た傾向の新卒を括ることができていました。しかし現在は、4~5人単位でも差異があり、どの枠にも当てはまらない新卒も珍しくないそうです。

「これは、多様性が急に生まれたというよりも、もともと存在していた多様性が可視化された結果であるともいえるし、「個」を尊重してほしいという気持ちが非常に強いともいえます。言い換えると、「みんなで同じ何かを目指す」という意識が薄れているともいえるでしょう」。

以前は、周囲に合わせることで個性が表に出にくかっただけで、今は『違っていてもいい』という社会的な空気が、個人の特性を表に出しやすくしているのかもしれません。

一方で、育成する側にとっては大きな課題にもなっています。画一的な研修だけでは、物足りなさを感じる人もいれば、逆にハードルが高すぎると感じる人も出てくるためです。

「統一された研修だけでは、どうしても合う・合わないが出てきます。だからこそ、個別の育成プランや、関わり方の調整が必要だと感じています」。

研修は同じ、関わり方は変える

特に意識しているのが、研修におけるグループ設計です。同じ内容をインプットすること自体は必要不可欠ですが、アウトプットしやすい環境は人によって異なります。

「発言しやすさを重視して、あえて似たタイプ同士を組ませることもありますし、新しい価値観を生み出すために、異なる考えの人をミックスすることもあります」。

どの構成が正解ということはなく、『このメンバーにとって最適な場は何か』を考え続けること自体が、人事の役割だと語ります。

また、新卒は「自分のために何をやってくれるのか」という点を非常によく見ているそうです。「この研修が何の役に立つのか」「各自のどの部分に、どのような影響があるのか」といった事前の説明も重要だと感じていると言います。

配属後に求められる、人事の“橋渡し役”

新卒教育は、配属された瞬間に終わるものではありません。人事部門では、教育担当者向けの研修を定期的に実施し、新卒の様子や課題を共有しています。

「『最近こんな様子だから、こう関わってほしい』という形で、現場に伝えています」。

また、教育担当者から寄せられる悩みも年々増えているそうです。特に多いのが、「自分とはタイプが違う新卒をどう育てればいいのか分からない」という声です。

「個別に面談を設けて、一緒に状況を整理することも多いですね」。

さらに、新卒本人との個人面談は年2回実施し、管理職にフィードバックしています。

「うまくいく現場」に共通する空気

数多くの現場を見てきた彼女が、「理想的だった」と振り返るチームには、二つの共通点があるそうです。

「仕事に対して、全体的に前向きな空気があります。新卒が失敗したときも、マネージャーが受け止め、次にどう活かすかを考えます。その姿勢は教育担当や新卒本人へと連鎖し、組織全体の雰囲気を形づくっていきます」。

「もう一つ重要なのが、業務の意味付けです。『なぜ今、これを任せるのか』『この業務が何につながるのか』といったことを少し補足するだけで、新卒の納得感はまったく変わります」。

目的や背景への理解と納得が非常に重要で、納得さえすれば、その後の動きは非常にスピーディーになると言います。いわゆる「背中を見て育つ」だけでは、育ちにくい時代だといえるでしょう。

任せることと、放置することは違う

彼女が強く訴えるのが、管理職の関与です。

「『教育担当者の成長にもなるから』と、教育担当者だけに任せきりになってしまうケースは本当に多いです」。

しかし、任せた以上、管理職には新卒と教育担当者の双方を見る責任があるのです。それをすっかり忘れて、「それも教育担当者の勉強」という言葉を盾にして放置してしまう。これでは、新卒だけではなく、教育担当の社員も沈んでいってしまいます。

「教育担当者が悩んでいるなら、介入してほしいです。任せることと、放置することは違います」。

任された以上、教育担当者は悩んだ様子を見せずに必死に頑張っていることでしょう。そこを管理職のほうから声掛けをし、フォローをしていくことがどれだけ大切なことか、と彼女は述べます。

また近年は、会社の将来性に不安を感じる若手も増えています。だからこそ、部長・本部長クラスから、会社の方向性やビジョンを語ることも重要だと言います。

何のための『今』なのか、その目的をより丁寧に伝えることが大切です。『自分で考えて動け』と言うだけでは難しいと思います。総じて、年長者が若者に歩み寄る必要がある感覚です。ただ、長年積み上げてきた経験や知識は、明らかにベテラン社員のほうが豊富です。お互いに譲れない異なる価値観を持っているからこそ、双方の歩み寄りや相互理解が重要だと思います。そのすり合わせを行うのが、管理職やベテラン社員の役割なのではないでしょうか」。

新卒教育に必要なのは「正解」ではなく「関与」

「新卒教育に万能な正解はありません。ただし、『関わり続けること』だけは、時代が変わっても変わらない前提条件だと思います。できるだけ個に寄り添いながらも、譲れないものは譲れませんし、守ってもらわなければならないこともあります。厳しさとやさしさをうまくミックスしながら進めていくことが大切ですね(笑)」。

育成を誰か一人に背負わせず、チームで見る。
任せながらも、目を離さない。
個性を評価するだけでなく、扱い方を考える。

新卒教育は、組織の価値観そのものが問われる領域に入りつつあります。

あとがき

二回にわたり、新卒教育を「教育される側」「教育する側」という二つの視点からレポートしました。

前回、話を聞いた新卒2年目社員たちは、「甘やかしてほしい」とも、「責任を負いたくない」とも語りませんでした。彼らが繰り返し口にしていたのは、「成長したい」「ちゃんと前に進んでいる実感がほしい」という、きわめて素朴な思いです。
ただ、その成長の道筋や現在地が見えにくい――その戸惑いが、静かな不安として表れていたように思いました。

一方、育成する側もまた、確実に変化の中にいることが見えました。個性が前提となり、画一的な育成が通用しにくくなる中で、人事も現場も「どう関わるか」を常に考え続けていました。新卒一人ひとりに向き合おうとすればするほど、育成は複雑になり、負荷も増していきます。

また、印象的だったのは、共通して語られていたキーワードが、実はとてもシンプルだったことです。それは、「具体的に伝えること」「関わり続けること」「一人にしないこと」

新卒は未完成であり、教育担当もまた発展途上です。だからこそ、誰か一人に背負わせるのではなく、複数の視点で見守り、必要なときに介入する
正解を与えることよりも、「今どこにいるのか」「次に何を目指すのか」を言葉にして共有することが、これまで以上に重要になっているように感じます。

二つのインタビューを通して見えてきたのは、新卒教育が単なる人材育成のテーマではなく、組織のマネジメント力や対話の質そのものを映し出しているのではないか、ということでした。
新卒が感じている違和感や不安は、決して彼ら個人の問題ではありません。それは、組織側が従来当たり前としてきた前提が、アップデートを求められているときなのかもしれません。

「やって覚えろ」「任せているから大丈夫」という言葉が機能していた時代から、「なぜやるのか」「どこを見ているのか」を共有しながら育てる時代へ

二回のレポートを通じてお伝えした当社現場の声が、育成やマネジメントを改めて見直す機会となれば幸いです。

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監修者

HRナレッジライン編集部

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