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【セミナーレポート】
ロート製薬 髙倉氏に聞く、事例と課題「個人と会社の共成長と変化し続けるHR」
公開日:2025.04.25
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ロート製薬株式会社
取締役 CHRO
髙倉 千春 氏
人材版伊藤レポートに検討会委員として携わり「人的資本経営コンソーシアム」の企画委員を務めるロート製薬CHRO髙倉氏。これまでの取り組みやロートでの個人と会社の共成長、HRが変わるべきポイントや担う役割について、人的資本経営を踏まえながらお話しいただきました。変化し続ける社会環境や経営の中で、2023年度の人事に何が必要なのか、事業戦略を推進する主要プレイヤーとなったHRを考えていきます。
「Human Asset」から「Human Capital」に
1980年代から現在にかけて「人材」は「人財」に、「働き手」から「新しい価値を創造する担い手」に、その意味は大きく変遷しています。近年では「持続的な企業成長」から「持続的な価値創造」がフォーカスされており、「人材」はその担い手としての「人財」と位置付けられています。さらに加速するさまざまな変化に対応するため、多様な人財の多様な視点を持っているかどうかが企業の価値基準の一つとなっています。また、経営理念と事業戦略との連携、人材マネジメントとの連携についても不可欠であり、昨今では機関投資家が投資を行う際の判断材料の一要素とされています。
人材版伊藤レポート2.0では「経営戦略と人財戦略の連動」「As is-To beギャップの定量把握」「企業文化への定着」の3つの視点、さらに「動的な人材ポートフォリオ」「知・経験のD&I」「リスキル・学び直し」「従業員エンゲージメント」「時間や場所にとらわれない働き方」の5つの共通要素があると示唆しています。これに加え、変化を受け入れ、闊達に意見が言い合えるオープンな企業風土や企業文化を形成することも重視されるようになりました。
人的資本経営の実現に向けた「個人と会社の共成長」
ロート製薬ではおよそ20年ぶりに人事制度を刷新しました。多様な人財に活躍してもらうために、個人と会社の共成長を持続的に循環させるさまざまな取り組みを展開しています。また、中期事業戦略ではウェルビーイング経営を目指し、プロの仕事人として将来の社会課題に向き合い、社員一人ひとりが仕事の価値を創出することを見据えています。さらに個人と組織の共成長に向けて「動的人財マネジメントによる異動・組織構築」「“プロの仕事人”としての仕事の価値で評価」などの施策を打ち出しました。
個人の成長においては、自律的キャリアと学びの継続を目指すキャリアオーナーシップを高めることが重要と捉えており、その一環として「社外チャレンジワーク(複業)」や「社内ダブルジョブ(兼業)」を進めてきました。それにより、社員本人のキャリア形成として有益な経験になるだけではなく、組織全体に対しても新しい取り組みに挑戦する風土醸成にむけた良い変化を与える機会であることがわかりました。さらに社内起業家支援制度も導入し、社内クラウドファンディングなどによる出資サポートで全社員が参画できる仕組みを取り入れています。
まとめ
個人と会社の共成長の実現に向けて、社員が主体的に意欲的に「学ぶ」ことは大きな価値があります。当社では社員に多様な視点で思考してもらいたいという想いのもと、「ロートアカデミー」という学びの場を設け、今後の新たな挑戦の糧になる学びをタイムリーに提供することを試行しています。これにより現場での経験と学びの好循環が生み出されています。チャレンジする意欲を高め、さらに多様な視点で外部環境の変化を捉えられる力を養うことは最終的に各自の特性を活かした「自分ブランド」の構築に寄与します。ひいては組織の成長とエンゲージメントの向上につながっていくのです。
Profile

ロート製薬株式会社
取締役 CHRO
髙倉 千春 氏
1983年、農林水産省入省後、米国Georgetown大学にて、MBAを取得。1993年コンサルティング会社にて、新規事業に伴う人材開発などに携わった後、1999年ファイザー株式会社、2004年日本べクトン・ディッキンソン株式会社、2006年ノバルティスファーマ株式会社の人事部長を歴任。2014年より味の素株式会社にてグローバル戦略推進に向けた人事制度の構築をリード。2020年ロート製薬株式会社に入社、取締役 人財・WellBeing経営推進本部E. Designerを経て2022年4月から現職。
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