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ロールモデルとは?意味や具体的なモデル例、設定する際のポイントを解説

公開日:2026.04.10

人事ナレッジ

キャリアの選択肢が多様化する中、社員が自律的に成長し続けるには、社員自身が目指す姿を具体的に描ける状態をつくることが重要となります。そこで注目されているのが、行動や考え方の手本となるロールモデルです。ロールモデルをうまく活用できれば、キャリアビジョンの明確化やスキルアップ、定着率の向上につながります。

この記事では、ロールモデルとは何かをまとめた上で、実務における具体例や社内で設定するメリット、社員別の選定基準などについて分かりやすく解説します。

ロールモデルとは?

ロールモデルは、キャリア形成やスキルアップを考える際、目指す姿を具体化するための手がかりとなる考え方です。まずは、ロールモデルの意味と、混同されやすいメンターとの違いを整理します。

ロールモデルの意味

ロールモデルとは、自分自身のキャリアや生き方、特定のスキルにおいて模範や手本となる人物を指します。「あの人のようになりたい」「あのようなはたらき方がしたい」と思える対象がいると、日々の意思決定や行動の基準が明確になり、成長の方向性を定めやすくなります。

ロールモデルは必ずしも一人に絞る必要はありません。仕事の進め方、コミュニケーションの取り方、マネジメントの姿勢など、特定の要素だけを取り入れる部分的ロールモデルとして設定することも可能です。

メンターとの違い

ロールモデルと混同されやすい言葉に、メンターがあります。ロールモデルが目指すべき理想像(手本)であるのに対し、メンターは対話を通じて個人の成長や課題解決を支援する助言者・指導者を指します。

つまり、ロールモデルは観察して学ぶ対象であり、必ずしも直接の関係性が前提ではありません。一方、メンターは、相談やフィードバックを通じて伴走する存在で、関係性の構築が前提です。両者の役割を理解した上で、目的に応じて使い分けなければなりません。

ロールモデルが注目されている理由

ロールモデルが重視される背景には、はたらき方や価値観の多様化があります。「まずは管理職を目指す」など一律のキャリアパスが前提ではなくなり、専門職としてスキルを磨く道、育児や介護と両立しながらはたらく道、副業を含めてキャリアを広げる道など、選択肢が複雑化しているためです。

選択肢が増えた一方、自分はどの方向を目指せばよいのか、今の経験をどう積み上げればよいのかが見えづらいのが、はたらき方の多様化における課題です。そこで、社員が自律的にキャリアを描くための具体的なサンプルとして、多様なロールモデルの提示が求められるようになりました。

女性活躍推進やダイバーシティ経営の観点でもロールモデルは重要です。属性やライフステージが異なる社員が「この会社でなら自分らしくはたらき続けられる」と実感できる状態をつくることは、定着・育成の土台となります。多様なロールモデルの可視化は、その土台を支える取り組みの一つといえるでしょう。

ダイバーシティについては、以下の記事でより詳しく解説しています。
>>ダイバーシティとは?推進するメリットや重要性、取り組み事例をご紹介

ロールモデルの具体例

ロールモデル=理想の人物像というと、偉人や著名人を思い浮かべるかもしれません。しかし実際は身近な人から学べることも多く、企業のサービスやブランドの姿勢を手本にするケースもあります。ここでは、代表的なロールモデルの例を3つの視点からご紹介します。

身近な人物

身近な人物としては、職場の直属の上司や先輩をロールモデルにするのが一般的です。自分の担当業務や職場環境に近い立場で成果を出している人からは、具体的な業務スキルはもちろん、社内での立ち回り方、トラブルへの対処法など、実務に直結する学びが得られます。自分の状況に当てはめやすく、再現性も高いでしょう。

また、ロールモデルは必ずしも年上や先輩に限りません。同僚や後輩、年下の社員、さらには友人や家族など、視点を広げることで違った気付きにつながることもあります。

同僚や後輩、年下をロールモデルにする場合は、自分にはない強みを持つ身近な存在から学べます。新しいツールの使い方、柔軟な発想、特定の専門スキルなど、最新のトレンドや効率的なやり方を吸収できる点がメリットです。年上から学ぶべきという固定観念を外すことで、成長のきっかけを増やせるでしょう。

友人や家族は、仕事の場面だけでなく、生活や価値観まで含めて理解しやすい存在です。誠実さ、ワークライフバランスの取り方、金銭感覚、子育ての方針など、人生の質(QOL)を高めるヒントが得られることもあります。

歴史上の偉人や著名人

歴史上の偉人や著名人は、直接会うことは難しいものの、著書やメディアを通じて考え方や行動に触れられます。日々の業務の手本というより、マインド(考え方)や志を学び、自分の視野や判断軸を広げるのに適したロールモデルといえるでしょう。

例えば、ビジネス界の著名人や経営者からは、経営哲学、リーダーシップ、高い視座、逆境を乗り越えるメンタルなどを学べます。自分の基準(スタンダード)を引き上げたいときに参考になりやすいでしょう。

歴史上の偉人からは、倫理観や長期的な視野、社会への貢献意識など、普遍性のある学びが得られます。また、トップアスリートや芸術家をロールモデルにする場合は、努力の継続力、自己管理能力(ルーティン)、プレッシャーへの向き合い方などが学びになります。仕事とは領域が異なっても、ストイックさやプロ意識に刺激を受けるケースは少なくありません。

企業のサービスやブランド

ロールモデルは人物だけでなく、企業のサービスやブランドがモデルになることもあります。仕事の姿勢や顧客への向き合い方を磨きたいときに有効です。

例えば、ホスピタリティに優れたサービスからは、言われる前に動く先読みの姿勢や、機能だけでなく感動や心地よさを提供する考え方が学べます。こうした姿勢が身に付けば、周囲からの信頼も厚くなり、「あなたにお願いしたい」と指名してくれるファンも定着するでしょう。

また、世界観づくりがうまいブランドは、スペック(性能)だけでなく、物語や体験を一貫して伝える力を持っています。発信や表現の一貫性は、個人の仕事にも応用可能です。自分の強みや価値を分かりやすく伝える上で、ブランドの考え方は大いに参考になります。

社内にロールモデルを設定することで得られるメリット

ロールモデルは個人が見つけるものというイメージもありますが、企業として社内にロールモデルを設定・可視化すると、社員の成長や定着を後押ししやすくなります。ここでは、社内にロールモデルを設定するメリットを見ていきましょう。

キャリアビジョンが明確になる

社員が目指すべき姿がぼんやりしていると、目標設定が抽象的になり、行動に落とし込みにくくなりがちです。しかし、社内に具体的なお手本がいると、社員は「3年後、5年後にどうなっていたいか」を現実的にイメージしやすくなります。

また、同じ会社の中で活躍している人のキャリアや経験を知ると、どのように仕事を経験し、どのような力を身に付けてきたのかが見えやすくなります。その結果、自分に必要な経験やスキルを逆算しやすくなり、目標設定の精度も上がるでしょう。

成長スピードの向上やスキルアップにつながる

「あの人のようになりたい」「あのようなスキルを身に付けたい」という憧れは、成長の原動力です。ロールモデルが明確になると、ただ漠然と頑張るのではなく、具体的な行動目標を設定しやすくなります。

例えば、プレゼン力を高めたいなら資料作成の工夫を学ぶ、マネジメントを身に付けたいなら部下との関わり方を観察するなど、成長に必要な要素を日々の行動に落とし込みやすくなります。結果として、社員が主体的にスキルアップに取り組む流れが生まれ、成長スピードの向上が期待できるでしょう。

定着率の向上につながる

社内に目標となる人物がいることは、「この会社ではたらき続けた先に自分の将来が描ける」という安心感にもつながります。特にキャリアの初期段階では、将来像が持てないことが不安となり、離職のきっかけになることも少なくありません。

一方、身近なロールモデルの存在は、「ここで経験を積めば自分も成長できそうだ」「この会社でも希望するはたらき方が実現できそうだ」という実感を生みやすくなります。将来への不安を和らげ、離職防止(リテンション)につながる点も、社内にロールモデルを設定する大きなメリットです。

【社員別】ロールモデルの選定の基準

ロールモデルに求められる役割や参考にしたい視点は、対象となる社員のフェーズによって変わります。年次や立場、ライフステージに応じて必要なモデルを設定することが大切です。

新入社員・若手社員の場合

新入社員や若手社員は、まず日々の業務に慣れ、基礎的なスキルや仕事の進め方を身に付ける段階です。この時期は、役員クラスのような距離の遠い存在よりも、3〜5年上の少し先の先輩を設定する方が効果的です。

年次が近い先輩であれば業務のつまずきや成長のプロセスがイメージしやすく、次に何をできるようになればよいかが具体化されます。結果として直近の業務目標がクリアになり、リアリティのある成長ステップを描きやすくなるでしょう。

中堅社員の場合

中堅社員は、実務の中核を担いながら後輩の指導やチーム内の調整役を求められることが増える時期といえます。同時に、マネジメント職を目指すのか、スペシャリストとして専門性を極めるのかといったキャリアの分岐点になりやすい点も特徴です。

そのため、中堅層には複数のモデルを提示する考え方が有効です。例えば、マネジメントとして成果を出している先輩と専門性で価値を発揮している先輩の両方を参考にできる状態をつくると、自身の適性や志向を比較検討しやすくなります。将来どのような貢献ができそうかを具体的にイメージできるようになり、次のステージへの成長につながるでしょう。

ベテラン社員・管理職層の場合

ベテラン社員や管理職層は、すでに組織の長として活躍している層、あるいは高度なスキルを持っている層です。このフェーズのロールモデル設定には、大きく分けて2つの方向性があります。

1つ目は、視座を高めるためのモデルです。経営層や社外の有識者など、より高い経営視点や広い視野を持つ人物を参考にすることで、意思決定の軸や長期的な戦略思考を磨きやすくなります。

2つ目は、キャリアの軟着陸や再構築のためのモデルです。役職定年や再雇用を見据える中、豊富な経験を活かして後進育成に注力する先輩や、リスキリング(学び直し)に挑戦し続けるシニア社員など、多様な貢献のあり方を示すことで、モチベーションの維持につなげられます。

女性社員・育児中の社員の場合

女性社員や育児中の社員に対しては、キャリアアップだけでなく、ライフイベント(出産・育児など)との両立を現実的にイメージできるようにすることが重要です。両立を実践している先輩社員を可視化し、この会社ではたらき続けられるという安心感を持てる環境づくりが求められます。

モデルとなるのは管理職に限りません。時短勤務やテレワークなどを活用しながら成果を出している人、専門性を軸にキャリアを築いている人など、多様なはたらき方を実践するモデルを見つけることができれば、自分に合う選択肢を検討しやすくなるでしょう。

企業がロールモデルを選定し活用するまでの流れ

ロールモデルは、企業が意図的に可視化し活用の仕組みをつくることで、導入や選定の効果が高まりやすくなります。ここでは、企業が社員の中からロールモデルを選定し社内で活用していくまでの基本的な流れを、ステップごとにご紹介します。

ステップ1:目的の明確化とターゲットの設定

最初に行うべきは、なぜロールモデルを設けるのかを明確にすることです。女性管理職を増やしたい、若手の自律的なキャリア形成を促したいなど、解決したい課題を定義します。目的が曖昧だと、どのような人をロールモデルにすべきかが定まらず、施策が形骸化しやすくなります。

併せて、誰に向けた取り組みなのか、ターゲット層(新入社員、若手、中堅、育児中の社員など)を設定します。目的とターゲットが整理できれば、選定や情報発信の方向性もぶれにくくなるでしょう。

ステップ2:ロールモデル候補の選定

次に、設定した目的に合致する社員をリストアップします。ここでは、ハイパフォーマー(成績優秀者)だけに偏らせないことがポイントです。ロールモデルは自分も目指せそうと感じられてこそ効果が出やすいからです。

例えば、育児と両立しながら成果を出している社員、異動を経験して成長した社員、専門性を磨いてキャリアを築いている社員など、多様な共感ポイントを持つ人材を候補に含めるとよいでしょう。複数の候補を用意しておくことで、多様なニーズに対応しやすくなります。

ステップ3:本人への依頼と意識合わせ

候補者が決まったら、本人へ依頼し、ロールモデルとしての意識合わせを行います。この際に大切なのは、完璧である必要はないと伝えることです。ロールモデル役を頼まれた側は、理想像として振る舞わなければならないと過度に感じてしまうことがあります。心理的なハードルを下げる伝え方ができれば、引き受けてもらいやすくなるでしょう。

また、必要に応じて、ロールモデルとしての関わり方や伝え方のレクチャーを行うことも検討しましょう。発信内容の整理やインタビュー対応のサポート、場合によってはメンター研修のような形で支援することで、本人の負担を軽減しつつ施策の質を高めやすくなります。

ステップ4:情報発信・共有の場づくり

ロールモデルを選定したら、社内に向けて情報発信や共有の場をつくります。社内報やイントラネットでのインタビュー掲載、座談会の開催、ランチミーティングなどが代表例です。

重要なのは、ロールモデルを過度に「すごい人」扱いしないことです。「自分にもできそうだ」と感じられる切り口で発信することで、社員は行動へとつなげやすくなります。悩みを乗り越えた経験、失敗談、1日のスケジュール、仕事と家庭の両立の工夫など、等身大の情報があればあるほど、共感も得られやすい傾向にあります。

ステップ5:定期的な見直しとフィードバック

ロールモデルの施策は導入して終わりではありません。社員にアンケートを取るなどして効果を測定し、参考になったか、キャリアを考えるきっかけになったかなどの反応を確認します。その結果に応じて、発信方法や内容を改善していきましょう。

併せて、ロールモデル役を引き受けた社員へのフォローも欠かせません。負担が大きくなっていないかを定期的に確認し、状況に応じて交代や追加選定を行うと、継続的に運用しやすくなります。こうした見直しを繰り返すことで、ロールモデル設定の取り組みを社内に定着させやすくなるでしょう。

ロールモデルを設定する際のポイントや留意点

ロールモデルは、社員に合う形で取り入れ、行動につなげてもらってこそ、キャリア形成や成長の支えとなります。ここでは、ロールモデルを設定する際に押さえておきたいポイントや留意点を紹介します。

完璧を目指さなくてよい

ロールモデルとなる人物は、自分とは生まれ育った環境や性格、価値観が異なることがほとんどです。そのため、「100%その人のようになろう」と考えると、理想が高くなり過ぎ、苦しくなることがあります。

大切なのは、性格や才能ではなく、思考法や行動習慣、身に付けているスキルに着目することです。社員には、自分に取り入れられる部分だけを参考にし、無理なく活用していくよう伝えましょう。

結果ではなくプロセスを重視する

ロールモデルを設定する際は、成功している結果だけに目を向けないことも重要です。表に見える成果の裏には、多くの試行錯誤や失敗、地道な努力の積み重ねがあることを忘れてはいけません。

そこに至るまでのプロセスも知ることで、自分が壁にぶつかったときにも「これはロールモデルも通ってきた道だ」と捉えやすくなり、踏ん張る力につながります。

時代や環境のズレを考慮する

歴史上の人物や著名な経営者、大企業の成功事例を参考にする場合は、当時と現在では社会状況や市場環境などの前提条件が異なる点に注意が必要です。あの時代だからできた、あの規模だから成り立ったという要素をそのまま当てはめると、現実とのギャップが生じる恐れがあります。

重要なのは、何が再現可能で何が再現しにくいのかを見極めた上で、今の環境ならどう応用できるかを社員一人ひとりに考えさせることです。

必要な手本を見直す

ロールモデルは、一度設定したらずっと同じである必要はありません。社員が成長し、役割や置かれる立場が変われば、手本も変化していきます。入社直後は業務の進め方を学べる先輩が参考になっていても、中堅になればマネジメントや後輩育成の観点で別の人物が必要になるかもしれません。今の自分に何が必要か、社員一人ひとりに見直させることが大切です。

複数の人からよい部分を組み合わせる

「この人こそ完璧なロールモデルだ」と一人に絞ろうとすると、中々見つからなかったり、理想が偏ったりしがちです。そこで有効なのが、複数の人物からよい部分を組み合わせる考え方です。

例えば、Aさんの企画力とBさんの調整力を参考にするなど、必要な要素ごとに手本を分解すると、現実的で取り入れやすくなります。必要な力を整理しながら柔軟にロールモデルを活用できるような仕組みを整えましょう。

多様なロールモデルの可視化が社員の自律と定着のカギ

キャリアパスが多様化する中、社員が自律的に成長していくためには、「こうなりたい」「こういうはたらき方もできる」という現実的なサンプルに触れられる環境を整えることが大切です。ロールモデルは、そのための道しるべとなります。

企業にとって重要なのは、限られた一部の成功例だけではなく、多様なロールモデルを可視化することです。さまざまなモデルが見えることで、「自分にもできそうだ」という納得感が生まれやすくなります。その結果、社員は目標設定や学び直しに前向きになり、将来の不安が和らいで、定着へとつながっていくでしょう。

社員が自分のキャリアを自分で選び取り、安心して長くはたらける環境づくりの一環として、ロールモデルの活用をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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監修者

HRナレッジライン編集部

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