HRナレッジライン

カテゴリ一覧

ESGとは?SDGsやCSRとの違い、取り組むメリット・事例を解説

公開日:2026.04.10

人事ナレッジ

ESG経営という言葉を耳にしたことはあっても、具体的にどのような経営なのか、取り組むメリットはどこにあるのかが分からない経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

投資家の判断指標としても用いられるESGですが、ESG経営は資金調達が可能になるだけではなく、取り組まないでいると、企業の長期的な成長を妨げる要因にもなりかねません。

この記事では、ESG経営の概要、導入メリット、プロセスなどを解説します。自社で取り組む際の参考にしてください。

ESGとは

ESGとは、「環境(Environment)」「社会(Social)」「企業統治(Governance)」の頭文字を取った言葉です。投資家が、財務情報だけでは判断できない企業のリスクや価値、長期的な成長可能性を評価する観点として注目されています。

ESGの各要素について表にまとめました。

要素 詳細 取り組みの例
E:Environment(環境) 企業活動が環境に与える影響と、それに対する企業の取り組みを評価する
  • 温室効果ガス(CO2など)排出量の削減
  • 再生可能エネルギーの利用
  • 水資源の保全、廃棄物の削減・リサイクル
  • 環境に配慮した製品やサービスの開発
S:Social(社会) 企業が、従業員や取引先、地域社会といったステークホルダー(利害関係者)に対して負う社会的責任を評価する
  • 人権の尊重(サプライチェーン全体での強制労働・児童労働の防止など)
  • ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容と活用)
  • 安全で健康的な労働環境の整備、長時間労働の是正
  • 地域社会への貢献、カスタマー・サティスファクション(顧客満足度)の向上
G:Governance(企業統治) 企業の経営体制や、不祥事を防ぎ透明性を確保するための内部管理体制を評価する
  • 透明性の高い情報開示
  • 取締役会の多様性と独立性の確保
  • 法令遵守(コンプライアンス)の徹底
  • 適切な役員報酬の設定、贈収賄や汚職の防止

ESGと比較されやすい言葉

ESGには、似たような概念を持つ比較されやすい言葉がいくつかあります。それらの言葉との違いを解説します。

SDGs

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、国連が定めた、2030年までに達成すべき国際社会共通の具体的な目標(17の目標と169のターゲット)です。ESGが企業を対象にしているのに対し、SDGsは国、自治体、企業、個人が参加する、より広い概念です。企業がSDGsの達成に貢献する活動(貧困撲滅、気候変動対策)をすることが、ESGの評価を高めることにつながります。

SDGsは社会全体で課題解決のために目指すべき方向、ESGはその取り組みを企業活動に落とし込んで評価する観点です。

CSR

CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)は、企業が自発的に行う社会貢献活動や倫理的な活動のことです。企業の本業を含む事業活動全体で社会的責任を果たす取り組みを指します。植林活動や寄付、地域ボランティアなど本業外の活動に限られません。

SRI

SRI(Socially Responsible Investing:社会的責任投資)は、財務情報だけでなく、企業が社会や環境に対して負う責任を考慮して行う投資の手法です。社会的課題を踏まえ、投資家自身の価値観や倫理観には合致しない事業活動を行う企業への資金提供を避けることが目的です。ESG投資に近い概念で、近年はESG投資に統合されつつあります。

CSV

CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)は、社会的な課題の解決と経済的な利益の創出を両立させるための戦略です。本業の事業活動そのものが社会貢献としての価値を生み出します。CSRとは異なり利益を重視するのが特徴です。

ESGが重要視されるようになった背景

続いて、企業経営においてESGの考え方が重要視されるようになった背景をご紹介します。

地球規模の環境問題と社会課題の深刻化

児童労働や劣悪な環境下での労働などの人権侵害、森林伐採や温室効果ガス排出による気候変動や自然災害の増加などは、消費者の関心も高く、企業は外部リスクの深刻化を無視できなくなっています。

機関投資家・年金基金の意識変化

投資額が大きく、世代を超えて運用をする機関投資家や年金基金は、持続的な利益を重視します。2006年、国連が提唱した責任投資原則(PRI)は、多くの機関投資家や年金基金の投資行動に影響を与えました。投資先の選定や議決権の行使を通じ、企業活動が社会に及ぼす負の要素を減らして企業の価値を高め、長期にわたって安定した収益を獲得しようとする傾向が強まっています。

投資家・消費者からの企業の透明性への要求

短期的な利益だけではなく、企業規模に見合った社会的責任を果たしているかが、個人の投資家や消費者からチェックされるようになりました。企業活動がもたらす負の影響は他国であってもメディア報道やインターネットを通じて瞬時に拡散され、企業は厳しいバッシングを受けます。これまで以上に倫理的な経営、積極的な情報開示へのプレッシャーが高くなっています。

ESG投資とESG経営について

ESGの概要や重要視される背景を踏まえ、ESG投資やESG経営といった言葉についても詳しく理解しておきましょう。

ESG投資

ESG投資の主体は機関投資家や個人投資家です。長期的に安定的な利益を確保するために行われ、企業による環境問題への対応(E)、人権・労働問題への配慮(S)、透明性の高い経営体制(G)への取り組みを評価基準とします。その評価が高ければ、株価を悪化させるリスクは低く、長期的な競争優位性が見込まれると判断されます。

投資家は長期的・持続的な成長が見込まれる企業に投資をし、議決権行使を通して投資先の意思決定に影響を与えて企業の成長を促し、自らの利益も確保します。

ESG経営

ESG経営の主体は企業自体で、目的は、資金調達や人材確保による長期的・持続的な成長です。ESGの視点を自社の経営戦略に反映させ、事業活動を通じて環境や人権など社会課題の解決に貢献し、企業の非財務価値・財務価値の双方を高めます。

環境や市民生活に負の影響を与えるものを低減させるだけではなく、それらをビジネスチャンス(脱炭素技術の開発、多様な人材の登用)として捉え、積極的にリソースを投入することも、ESG経営にあたります。

そうした取り組みにより、資金調達が容易になるだけでなく、優秀な人材の確保、消費者からの支持獲得、グローバル規模でのサプライチェーンからの信頼強化を実現できます。

ESG投資の代表的な7つの手法

ESG投資は、投資家が投資先を決定する際、財務情報だけでなく、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)の要素も考慮する投資アプローチです。どの程度ESG要素を重視するか、あるいはどの分野が重要と捉えているかで、複数の手法を使い分けます。企業の経営にどの程度関与するかもポイントとなります。

ここでは、ESG投資の代表的な7つの手法について概要を解説します。

ネガティブ・スクリーニング

ネガティブ・スクリーニング(別名:エクスクルージョナリー・スクリーニング)は、ESG投資の初期段階で実施する手法です。特定の事業や活動を行っている企業、または国際的な規範に反する企業を投資対象から除外します。例えば、武器やタバコ製造、石炭火力発電、カジノを主要な事業とする企業や、汚職、環境破壊、児童労働が発覚した企業の株式や債券をポートフォリオから外し、株式・債券市場での資金調達を困難にすることで、企業の経営戦略に影響を与えます。

ポジティブ・スクリーニング/ベスト・イン・クラス

ポジティブ・スクリーニング/ベスト・イン・クラス(Positive Screening/Best-in-Class)は、ネガティブ・スクリーニングとは反対に、ESG評価が高い企業を選別する手法です。温室効果ガスの削減やダイバーシティに取り組む企業を評価して投資対象とすることで、企業に資金を集め、社会の変化を加速させる狙いがあります。

ポジティブ・スクリーニングでは、業界を問わずESG評価が高い企業を投資先に選定します。一方、ベスト・イン・クラスは特定の業界・分野の中で相対的にESG評価が高い企業を選定する手法で、環境負荷が高い産業を排除せず業界全体の変革を促進させます。

規範ベース・スクリーニング

規範ベース・スクリーニング(Norms-based Screening)は、国連のグローバル・コンパクトやOECD(経済協力開発機構)の多国籍企業ガイドラインなどの国際的な規範に反している企業を投資先から除外する手法です。ネガティブ・スクリーニングが投資家の方針に基づき特定セクター等を除外するのに対し、規範ベース・スクリーニングは国際的な規範への適合状況に基づき除外判断を行います。

ESGインテグレーション

ESGインテグレーション(ESG Integration)は、ESG評価のみを判断指標とするのではなく、投資先の選定や分析のプロセスで財務情報とESG要素を総合的に考慮する手法です。ESGへの取り組みを単なる企業の倫理的配慮と捉えるのではなく、ESGに積極的に取り組むことが企業へのリターンになる、という考え方に基づいています。

例えば製造業の場合、CO2排出規制による将来のコスト増大リスク(E)やサプライチェーンでの人権侵害リスク(S)を株価に影響を与える潜在的なリスクとして数値化し、そのリスクへの対応力を評価します。

サステナビリティ・テーマ投資

サステナビリティ・テーマ投資(Sustainability Themed Investing)は、気候変動対策、再生可能エネルギー、グリーンビルディングなど、ESGの中でも特定のテーマに取り組む企業やプロジェクトに特化して投資をする手法です。投資家の価値観に基づき、環境技術に特化した企業や低炭素経済への移行を実現するファンドなど、特定の社会課題解決に直接貢献することを目的としています。

エンゲージメントと議決権行使

エンゲージメントと議決権行使(Engagement & Voting)とは、ESGに関する課題において、株主として企業の経営に積極的に関与する手法です。投資後の関わり方を重視するアクティブ(積極的)な手法であり、建設的な対話(エンゲージメント)や株主総会での議決権行使を通して、企業価値の向上に長期的に関与します。

金融庁が2014年に日本版スチュワードシップ・コード(責任ある機関投資家の諸原則)を公表して以来、日本の投資家の間でも重要視されるようになりました。

インパクト投資

インパクト投資(Impact Investing)は、経済的なリターン(利益)と同時に測定できるポジティブな社会的・環境的インパクト(よい影響)を生み出すことを目的としています。社会課題の解決という点で、他の手法に比べて最も積極的な手法です。リスクの軽減によるリターンの拡大ではなく、意図的に社会に好影響を与えることを主目的としています。

途上国でのマイクロファイナンス支援や特定の環境保全技術への出資などが該当し、定量的・定性的な影響と利益の拡大の両立を図ります。

企業がESG経営に取り組むメリット

続いて、企業がESG経営に取り組むメリットを解説します。

資金調達の優位性・コスト低減

近年は世界中の機関投資家がESGの観点を重視しています。ESG評価が高い企業は持続可能性が高く、リスクも低いと見なされ、資金調達が容易になる傾向があります。

また、ESGに特化したプロジェクトに限定して活用できるESG債(グリーンボンド、ソーシャルボンドなど)の発行や、ESGの実績に応じて金利が優遇されるサステナビリティ・リンク・ローンの利用が可能となり、資金調達の手段が多様化したり、好条件で融資を受けられたりします。

経営リスクの低減とレジリエンス向上

環境汚染や人権侵害、違法労働などの問題は、将来的に巨額な賠償金や規制強化による事業撤退などにつながる恐れがあります。ESG経営は、これらの潜在的なリスクを事前に特定して管理・低減し、企業のレジリエンスを高めます。

また、独立性の高い取締役会の設置や適切な情報公開に取り組めば、経営の健全性が高まります。ガバナンスが強化され、不正や不祥事が発生するリスクを抑えられます。

ガバナンスについては以下の記事で詳しく解説しています。
>>ガバナンスの意味とは? コンプライアンスとの違いや強化の必要性について解説

企業イメージ・競争優位性の向上

企業がESGに積極的に取り組めば、一般消費者からの評価が高まり、企業イメージやブランド価値の向上が期待できます。

BtoBの事業を展開する企業でも、ESGへの取り組みは外部にPRしやすく、高い評価も受けやすくなります。社会課題の解決に貢献したいという若く優秀な人材を自社に招き入れやすくなり、従業員のエンゲージメント向上や定着率アップにもつながります。

企業がESG経営に取り組むためのポイントや留意点

企業がESG経営に取り組むためのポイントや留意点も確認しておきましょう。

経営層のコミットメントと戦略への統合

ESG経営を推進するためには、ESGをコストではなく未来への積極的な投資と位置付け、経営層が全社にメッセージを発信して積極的に推進する体制を確立することが重要です。

トップが示したESGの方針に対し、自社の事業や自部署の業務とESGのどの要素が最も密接に関係しているかを分析し、取り組むべき最重要課題(マテリアリティ)を設定しましょう。

目標設定と情報開示の徹底

マテリアリティに基づき、CO2の削減目標、女性管理職の登用、障害者雇用比率など、具体的で測定可能な目標(KPI)を決めます。

活動を始めたら、ESGへの取り組み状況、目標に対する進捗や達成状況などを、非財務レポートやサステナビリティレポートで積極的に開示しましょう。社外に対するアピールになると同時に、社内の取り組み強化につながります。

サプライチェーン全体への拡大

自社の成功例をもとに、取り組みをサプライチェーン全体に拡大させます。原材料調達先や製造委託先における環境負荷や人権侵害のリスクを把握し、改善を促しましょう。ノウハウや技術を提供したり、人員を派遣したりして支援し、サプライチェーン全体でESGの取り組みを加速させます。特にE(環境)とS(社会)の評価において重視されています。

ESG経営の具体的な取り組み事例

最後に、ESG経営の具体的な取り組み事例をご紹介します。

E(環境):脱炭素化の推進

製造業や運送業、IT企業などは、ESGの中でも環境分野の取り組みが求められています。工場やオフィス、車両など、事業で使用する電力の再生可能エネルギー100%を目指す国際イニシアチブ『RE100』に参加し、サプライヤーに対してもカーボンニュートラルを求めるガイドラインを設けるなどの取り組みが見られます。

こうした取り組みは、再生可能エネルギー事業者に資金を集めることになり、将来的な再生可能エネルギーの価格低減や一般消費者への普及につながります。化石燃料の使用量やCO2排出量に応じて負担する炭素税の負担も抑えられます。

S(社会):人権と多様性の尊重

サービス業や金融業などは特にS(社会)の分野への取り組みが効果を発揮しやすい傾向にあります。フレックスタイム制の導入や企業内保育所を設置して従業員の育児と仕事の両立支援策を拡充したり、女性管理職や障害者雇用の比率に関する明確な目標を設定したりする取り組みが見られます。また、サプライチェーンの人権デューデリジェンス(人権侵害リスクの特定・防止・軽減と説明のプロセス)により問題点を洗い出し、改善につなげることも重要な取り組みとなります。

これらの取り組みにより、国籍や性別、年齢を問わず優秀な人材を獲得できるようになり、離職率も低減できます。多様な視点によるイノベーションも期待できます。

G(企業統治):コーポレート・ガバナンスの強化

上場企業で見られる事例として、自社と利害関係のない独立社外取締役の比率を高めることが挙げられます。多様な視点(ジェンダー、専門性)を確保することも重要です。それにより職務の執行を監視する体制を確立し、経営トップの報酬決定プロセスも透明化します。経営の監視機能を強化することで、不正や不祥事の発生が予防できます。

GX事務派遣サービス

サステナブル経営の実現に向け、CO2排出量の算定、ESGの開示など、実務を担える人材が必要となりますが、組織課題・人的課題を抱える企業も多くあります。

このような背景から、各企業のGX実務を支える人材不足を解決するためのサービスとして、パーソルテンプスタッフでは、新規事業であるGX事務派遣サービスの立ち上げに取り組んでいます。

GXとは、ESGのうち特に「E(環境)」に焦点を当て、脱炭素化を経済成長の機会と捉え、産業構造を転換する取り組みのことです。

本サービスで対応可能な業務例としては、ESG指標データの収集や情報開示資料の作成など、多岐にわたります。約1ヶ月間のGX講座(研修)を終え、必要なスキルを習得したスタッフを派遣・紹介します。

研修は、パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社(PBD)でGXコンサルタントとして勤務する傍ら、関西大学で学生向けに「カーボンニュートラル入門」の講座を非常勤講師として教えた経験もある社員が、基礎となるリテラシー研修から実践スキル研修までを開発・監修しています。

この研修は、他社にはない独自の研修カリキュラムであり、研修終了後はテストを受けてもらい、合格基準をクリアした派遣社員が就業する流れとなります。

GXやサステナビリティ分野の採用にお困りの際は、ぜひご相談ください。

ESG経営は人材活用と企業成長のエンジンとなる

ESG経営は、環境問題や社会課題の解決に向けた自社の貢献、経営の健全性などを示し、持続的な成長を可能にする取り組みです。初期にはある程度の投資が必要で、短期的にはコストが増大します。しかし、長期的な視点に立てば、ESG経営に取り組んでいないこと自体がリスクになる恐れもあります。

ESGに自社が取り組む目的を整理したうえでトップが明確なメッセージを発し、従業員に浸透させられれば、社内に好循環が生まれます。人材の確保や成長にもつながり、成長をより強力に推進できるようになります。ESG経営はいわば、人材活用と企業成長のエンジンとなるものなのです。

「人材派遣」ならパーソルテンプスタッフ

人材に関するお困りごとはお気軽にご相談ください

メールマガジン登録いただいた方限定でお役立ち情報を配信中!

監修者

HRナレッジライン編集部

HRナレッジライン編集部は、2022年に発足したパーソルテンプスタッフの編集チームです。人材派遣や労働関連の法律、企業の人事課題に関する記事の企画・執筆・監修を通じて、法人のお客さまに向け、現場目線で分かりやすく正確な情報を発信しています。

編集部には、法人のお客さまへ人材活用のご提案を行う営業や、派遣社員へお仕事をご紹介するコーディネーターなど経験した、人材ビジネスに精通したメンバーが在籍しています。また、キャリア支援の実務経験・専門資格を持つメンバーもおり、多様な視点から人と組織に関する課題に向き合っています。

法務監修や社内確認体制のもと、正確な情報を分かりやすくお伝えすることを大切にしながら、多くの読者に支持される存在を目指し発信を続けてまいります。

おすすめの記事