わたしの生きる道

第83話 アウトソーシング分野への進出

経済環境が依然として厳しく「業界全体で1万人のリストラが必要」といわれる中で、私は「人材派遣会社が生き残りのためとはいえ、働く場を減らすなんておかしい。絶対雇用は守る」と決めた。

まずは長期間登録して働いてくれているスタッフの仕事を確保すること。社員のリストラもしたくない。役員たちと議論を重ねた。
ちょうど経費削減を迫られた官公庁から大型受託案件が次々に舞い込んでいた。競争入札なので利益は望めないが、受託によってスタッフの仕事が生まれ、管理責任者として社員が常駐すればリストラを回避できる。つまりアウトソーシング分野への進出というテーマが浮上した。
「その仕事は私がやります」と手を挙げてくれたのは取締役の和田孝雄さん(現テンプスタッフ副社長)だった。

こうして10年4月、和田さんを本部長とするアウトソーシング事業本部が発足した。法務局の窓口業務を皮切りに、官公庁の仕事を次々に受託した結果、不況にもかかわらず多くのスタッフに働く場を提供でき、300人の社員が社外で仕事を始めた。

(日本経済新聞朝刊2013年6月29日掲載の『私の履歴書』より引用)