わたしの生きる道

第66話 創業以来初めての 売り上げ目標

会社は組織整備と社内改革が始まったばかりだった。大手の内定をもらっている学生にとって、なんと未熟な会社だろうと思われるのではないかと心配だったが、そうではなくて彼らは「テンプスタッフは小さくてもこれからの会社だから、逆にやりがいがあるのでは」と考えて入社を決めてくれた。

彼らは過去のテンプスタッフを知らないが故に大胆な提案をし、精力的に営業に回った。同期で飲み屋に集まって、随分議論もしたらしい。そして2年から3年で支店長にあたるマネジャーに育ち、その後も社内ベンチャー企業を次々に興していった。

新卒組は会社に清新な風を起こした。バックオフィスに回った元支店長たちも入れ替わった会社の空気になじみ、新しい舞台で持ち前の力を発揮するようになった。

その年、私は全体責任者会議で「今期180億円を目指す」と創業以来初の売り上げ目標を掲げた上で「達成したら社長賞を出します」と宣言した。こうしてテンプスタッフは「企業」になった。私もどうにか「経営者」になり、この「第二の創業期」を経て会社はひと皮むけた。

グループの会長兼社長だった私は、安心してこの21日付で水田さんに社長のバトンを渡した。

(日本経済新聞朝刊2013年6月23日掲載の『私の履歴書』より引用)