わたしの生きる道

第65話 バブル絶頂期 売り手市場な新卒採用

男女20人の新卒社員1期生が入ってきたのは、そんな混乱のさなかだった。当時はバブルの絶頂期で就職戦線は完全な売り手市場。大手企業があの手この手で学生を囲い込もうとしていた。

人材派遣業という業界自体が成長途上で、その中でもトップ企業ではないテンプスタッフに一体どれだけの学生が関心を持ってくれるだろうかと不安だった。

前年の会社説明会は青山の本社に近い「こどもの城」の1室を借りて開いた。予想に反して部屋いっぱいに学生が来てくれ、私は彼らの顔を見ているだけでうれしくてずっとほほ笑んでいた。

学生が訪問してきても会社に人事部がなかったから、私と水田正道さん、人事担当社員で面接した。話を聞いてみると全員が大手商社や不動産会社、生命保険会社、広告代理店などの内定をもらっていて、中には6社内定という学生もいた。

(日本経済新聞朝刊2013年6月23日掲載の『私の履歴書』より引用)