わたしの生きる道

第61話 このままでは 会社は潰れます

水田正道さんという、異業種でばりばり働いていた男性が入ってきただけで、会社はぐらぐらと揺れ出した。

水田さんが他の支店に登録していたスタッフを派遣したらその支店長から「彼女はうちの支店のスタッフよ。どうして勝手なことをするの」と猛烈な抗議の電話がかかってくる。水田さんは「スタッフによろこばれることをして、何が悪いんですか」と反論した。

女性支店長たちにとって支店は自分の城だから、そこに触れられることを嫌った。スタッフとの強いつながりこそ、何よりの宝だった。会社という全体ではなく、支店が全てになっている。

ある日、水田さんが私を呼び止めて「このままでは会社は潰れます。仲間を連れてきていいですか」と言った。会社は生き物だ。経営者自らが揺さぶって変化させなければいけないと常々考えていた私は、即座に「そうしなさい」と答えた。すると水田さんが前にいた会社の後輩たちを中心に、10人ほどの若い男性が入ってきた。

(日本経済新聞朝刊2013年6月22日掲載の『私の履歴書』より引用)