わたしの生きる道

第60話 これまでのやり方と 攻めの営業

ほどなく支店長会議があった。支店長会議といっても「こんなふうに頑張っています」とか「お客さまからこのような感謝の言葉をいただきました」といった報告をする場だった。ところが水田さんが発言すると空気が一変した。「どうして各支店の売り上げが支店でわからないんですか。これでは売り上げ目標が立てられません」

顧客企業への請求とスタッフへの支払いは本社の担当部署が一括処理しているから、個々の支店の売り上げは支店長も知らない。支店が売り上げ競争でぎすぎすしないためにそうしてきたのだが、普通の企業では考えられないことだという。水田さんの批判は私にも向けられていた。

攻めの営業を得意とする体温の高い会社で仕事をしてきた人の指摘は鋭かった。しかし支店長たちは、水田さんの厳しい言葉に気押されたように沈黙している。

(日本経済新聞朝刊2013年6月21日掲載の『私の履歴書』より引用)