わたしの生きる道

第45話 法人税って何のことですか?

仕事が回り始めると不思議なことが起きた。顧客企業から代金が入るのは、スタッフに賃金を支払った1カ月後。すると忙しくなればなるほど資金繰りが苦しくなるのだ。日銭がほしくてたまらず、夜になると会社の看板を裏返し、英会話教室を開いた。近所の会社に勤めるサラリーマンがそこそこ集まった。

どうにかやり繰りして1年が過ぎたころ税務署から電話があった。「あなたの会社の法人税がまだ納付されていません」「何のことですか?」。私は会社が税金を払わなければならないことすら知らなかった。

高山さんが整えてくれた決算書には税の納付書も添えられていたのに忙しくて見る余裕がなく、納付期限を過ぎていたのだ。高山さんは「源泉所得税と法人税は払わないといけません。税金を払わないで成長しようなんて、お門違いもいいところよ」とぴしゃりと言った。

(日本経済新聞朝刊2013年6月16日掲載の『私の履歴書』より引用)