わたしの生きる道

第40話 女性だけの会社をはじめよう

女性の能力をきちんと認めない日本の会社に就職したら、中途半端ではやめない自分のことだから、補助的な役割に甘んじながらいつまでも働くことになるのではないか。私はそうなりたくなかった。

シドニーに臨時社員を派遣していた会社があった。女性ばかり数人で切り盛りしている場面をこの目で見ている。ああいう会社をつくってみようか。最初は小さな思いつきだったが、次第にはっきりした目標になった。

しかしどうしたら会社を設立できるのかわからない。知人に高山弘子さんという税理士を紹介してもらい、自分がやりたい事業を説明して「会社は女性だけでやりたいのです。男性は入れません」と言った。

「女性には『ちょっと手伝ってよ』と気軽に言えるが、男性は敷居が高い」という意味も含めて「男性は入れない」と口にしたのだが、男性税理士ばかりの世界で生きている高山さんには別の響きで聞こえたのかもしれない。彼女は「一肌脱ぎましょう」と答えてくれた。私が38歳、高山さん39歳の出会いだった。

(日本経済新聞朝刊2013年6月15日掲載の『私の履歴書』より引用)