これは、派遣社員である鈴木さんのお話です。
鈴木さんはもともと役者を目指して上京してきたといいます。そんな鈴木さんが、派遣社員として働くなかで「50歳を過ぎた今が一番楽しい」と言うのです。
なぜ、そう思えるのか、それはどんな仕事なのか。役者から派遣社員へと変わっていった理由や、役者への思いなど、様々なことを探っていきました。
役者を目指し、親に反対されながらも大阪から上京
鈴木さん、若い頃は役者をやっていたとか。
そうなんです。実家は大阪なんですけど、役者になりたいと思って大学3年の時に東京に出てきました。有名な劇団のオーディションに受かって研修生として。
大学3年でオーディションに合格なんて、すごいですね。
でも、3年ぐらいしかいなくて……。その後も小劇団に移って芝居をやりながら、データ入力のアルバイトをしていました。それで、結婚しまして。
お芝居はどうされたんですか?
主人には反対されたので、やめてしまいました。子どもも2人できたのでいろんなバイトをしながら生活して。だから、ちゃんと就職をしたことがないんですよね。
初めて派遣で働きだしたのはいつ頃でしょう。
しばらく専業主婦でしたけど、2人の子どもが小学校にあがってからですね。そこからずっと派遣で働いています。
派遣会社はどのように選んでいるんですか?
とりあえず何社かバーッと登録して、一番早く反応がきたところで「いいな」って思ったら行くって感じですね。だからいろんな派遣会社を活用していました。
派遣会社のレスポンスの早さは大事だ、と。
そうですね。同じ時給だったらレスポンスが早いほうがいいです。
これはすべての派遣会社が肝に銘じないとダメですね。
仕事は「お金を稼ぐもの」だから、やるしかなかった
派遣先でのお仕事内容はどういったものでしたか?
基本的には事務ですね。区役所とか銀行とか、いろんなところに行きました。残業がものすごく多かったり、「派遣なのにここまでやらされるの?」ということもあったりして、辛い時もありましたね。
嫌な思いをしてしまうこともありましたか……
でも、仕事って「お金を稼ぐためのもの」だったので、辛くても嫌でも、とりあえずやるしかないって感じでしたよね。もう「仕事は仕事だ」って諦めて。
そんな時のストレス発散の方法ってあるんでしょうか。
映画を観に行ったり、友達が出ている舞台を観に行ったりして気分転換してましたね。あとは、ゲームも好きで。
ゲームですか。
若い頃は、それこそ『ドラゴンクエスト』が出た当時の世代だったのでハマりましたし、『ドクターマリオ』とか、『テトリス』とかのパズル系が好きで。
ストレス発散といってもシューティング系ではないんですね。
そうですね。シューティング系は苦手で、パズル系ですね。『ドクターマリオ』なんて最後までクリアしましたからね。
すごい……。『ドクターマリオ』ってクリアする人いるんですね(笑)
トランプゲームの『ソリティア』とかも、「同じ並びだけどやり方を変えたらいけるんじゃないか」みたいなことをやってて。だから、考える系のゲームのほうが好きですね。
「仕事は仕事」と割り切って、ストレスが溜まったら観劇やゲームでストレスを発散して……。そういった生活から、なにか転換点はあったのでしょうか。
RPAツールとの出会いと、仕事への感動
ある派遣会社の紹介で働いた場所が、銀行の事務センターで。お客様の書類を入力して処理していくっていう仕事のなかで、RPAツールがあったんです。「WinActor®」っていう。
それを触ったわけですか。
基本は「社員以外、触っちゃいけません」って感じでしたけど、何名か選ばれて触らせてもらえることになって。
なぜそこで選ばれたんでしょうか?
パソコンが得意だったこともあったからですかね。これまでも入力系の仕事でパソコンには触れていて、分からないことがあるとすぐ調べたくなるので、いつの間にかパソコンが得意になっていたんです。
「分からないことがあるとすぐ調べたくなる」というのが良かったんですかね。
そうですね。だから、派遣でどこへ行っても「パソコンできる鈴木さん」って認知されて、皆さん質問してくるんですよ。それで、答えられないと気になっちゃって、調べたうえで「こうだったよ」と教える。そんなことを繰り返してきました。
なるほど、だからこそRPAツールにも触らせてもらえたと。
はい、とはいえ「スタートボタンを押してください」というくらいですけどね。でも、そこで初めて動く様子を見て衝撃を受けました。どんどん勝手に動いて入力されていくのがすごく面白くて。
そっか、パズルゲームが好きだから。
血が騒いだのかも知れません(笑) それで、ある時に「エラーになりました」って止まってしまったのを見て、強烈に「直したい!」って思ったんです。
そっか、分からないことは調べて直せるようにしてきたんですものね。
そう。でも、プログラミングとか全然知らないし、直せるのかな……と思って。それで、RPAのことが気になって気になって、ネットで調べまくったんです。そうしたら、テンプスタッフが『RPAアソシエイツ研修』というのをやっていることを知って。テンプスタッフなら登録してあるし、やりたいなと。
それで申し込みをしたわけですね。
「面倒くさがり」はRPAに向いている
朝から夕方までまるまる1カ月の研修だというので、その時の契約期間が満了するのを待って、申し込みました。
研修はいかがでしたか。
本当にスケジュールがビッシリで驚きましたね。リモートだったので、家でずっと月曜から金曜までやって。それでも足りないぐらいボリュームがあって。でも、研修担当の方にもしっかりサポートいただけたので安心でした。
1カ月やってみて、気になっていた「RPA」はどう感じました?
とにかく楽しかったです。やっぱりパズルゲーム好きの私には向いていたみたいで。プログラミングとかマクロも使ったことなくてもできるんですよ。もちろん失敗も繰り返すんですけど、その後にうまくできた時の喜びが本当に大きくて。「よし! できた! すごい!」みたいな。
楽しそうな様子が伝わってきます。
そもそも、私の性格もRPAに向いていたのかも知れません。
性格もRPAに向いていた、というと?
とにかく『面倒くさがり』で、なるべく無駄な動きをしたくないんです。だから、例えば買い物をする時も「まずお店に入ったら、これを取って、これを取って」って順番を全部決めていて、すべて“ひと筆書き”でたどるようにしてて。
“ひと筆書き”で買い物をする……
そう。あと電車で出かける時も、何号車の何番目まで覚えていて、「ここで出ると〇〇駅は階段の目の前だな」とか。「ここは階段に近いけど、混むから少しずれておこう」とか。
すごいなあ。効率的な考え方なんですね。
でもそれって、RPAでフローチャートを作ってるのと一緒だったんですよ。フローチャートでも無駄な動きがないほうがいいって教わりましたからね。
やってみたいと思ったことは、まずやってみる
パズル好きで面倒くさがりな鈴木さんには、RPAがピッタリだったわけですね。
そうですね。研修に申し込んだのが53歳の時で、そこから勉強してRPAツールを覚えて、それで働きはじめましたけど……、この歳になって初めて「仕事が楽しい」と思えるようになったんですよ。
それはすごいことですね。
過去の自分もそうでしたけど、仕事ってやっぱり「楽しいものではない」って人も多いじゃないですか。だから、大きな声では言いにくく感じるんですけど。でも、私としては本当に「仕事が楽しい」って思えて。「仕事が楽しいって思えるなんて!」って、ずっと感動している状態です。
そんな仕事に出会えて良かったですね。
過去の鈴木さんのように、「仕事は仕事」と割り切って悶々と働いていらっしゃる方に何かアドバイスをするとしたら何と言いますか?
「やってみたい」と少しでも思うことがあったら、ぜひ手を出してみては?ってことでしょうか。私も興味があることに手を出し続けてきて、50歳を過ぎてようやく「今までで一番楽しい仕事」に巡り会ったので。
まずは動いてみる、と。
向いてなければやめればいいし、向いていたら突き進めばいいし。何もしないよりは、「気になったら動く」って感じでいいんじゃないかと思います。
役者になろうとして大阪から上京するぐらいの鈴木さんなので、説得力がありますね。
いえいえ。あ、役者に関しても、やっぱりやりたくて、今でもやっているんですよ。
え、そうなんですか!
大手の劇団が「40代以上のクラス」を設けていたので1年間入って舞台に立たせてもらったり、来年ある朗読劇のお声がけをいただいたので練習していたり。あとは、シナリオ制作の勉強もしています。
すごい。舞台関係の活動も充実しているんですね。
仕事のほうが楽しくなっちゃったから、少しおろそかになっている部分もありますけどね。でも、やりたいことはまだまだ山ほどあって、時間が足りないぐらいです。
仕事だけでなく人生そのものを楽しまれている様子に、こちらも嬉しくなりました。鈴木さん、ありがとうございました!