アルバイト求人情報サービス『an*で求人広告の制作を担当し、『テンプスタッフ』でスタッフ向けのWEBシステム改善などを担当してきた新井は、過去に大手劇団のヘアメイクを担当していました。

*『an2019年サービス提供終了

新井:小学校5年生の時に初めてミュージカルを見て、ものすごく感動したんです。それで、「舞台の裏方として仕事をしたい」と思うようになっていました。自分が先頭に立つタイプではなかったので、役者じゃなくて『裏方』になりたくて。

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オンラインマーケティング本部 スタッフマーケティング第一室新井 裕子

その時は漠然と『裏方』というだけで、裏方にどのような仕事があって具体的に何になりたいのかは決まっていなかった新井。高校生の時に、再び夢への拍車がかかります。

新井:大手劇団の有名なミュージカルを友人と一緒に見る機会があって。で、一緒に見に行った子は「この劇団で俳優になりたい」って言って、私は「この劇団で裏方になりたい」っていう話をしながら、具体的にどうしたらなれるかを模索していったんです。

いろんな方から「美容師免許を取るといい」「美容院での勤務経験もあった方がいい」とアドバイスをされ、美容師を目指した新井。すぐに、美容院でアルバイトをはじめます。そして、卒業後は大学に進むと思っていた親の反対を押し切り、美容師の専門学校へ。

新井:美容学校に通いながらも美容院でのアルバイトは続けていました。それで、美容学校でお世話になっていた着付けの先生がいたんですけど、卒業後はその方のお店で働けることになって。

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大手劇団の裏方を目指しながらも社会に出た新井。1年半後に、その劇団の「アルバイト募集」がかかりました。ただ、仕事内容はチケットの『もぎり』や物販の担当、お客様の案内係。それでも新井は、すぐに応募をしたのです。

新井:とにかく一歩でも入り込んで、まずはコネクションを作ろうと思って。それで「いずれは技術スタッフとして働きたいんです」という話をいろんな人にしていきました。

裏方として働きたい一方で「本場のブロードウェイも見ておかないと」と思った新井は、早朝に劇場の近くのコンビニでアルバイトをしたり、コールセンターで働いたりして留学費用を貯め、ニューヨークに短期留学に行きます。

新井:ニューヨーク大学付属の語学学校に入学をして、日中は語学を学びました。あとは、ひたすらブロードウェイを見に行っていましたね。

6カ月の短期留学を終えて日本に戻った新井は、技術スタッフの試験を受けて、無事に合格。晴れて裏方として働けることになりました。

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新井:41日に技術スタッフとして入社して、43日から福岡勤務だと言われました。喜んで福岡に向かいましたね。しかも担当する演目が、友人が出ていた演目だったんです。

実は、高校の時に同じミュージカルを一緒に見に行った友人も夢を叶え、大阪公演でその演目に出ていたのです。そうして大手劇団のヘアメイクとして働くようになった新井。そこで強く感じたのは、「お客様のことを想像し、いかに喜んでもらえるかを考えること」だったと言います。

新井:美容院でもそうでしたけど、劇団のヘアメイクも「相手にとって一番心地よい形は何か」をより強く想像して提供することが多くありました。例えば、“水の精”が30人出てくるシーンがあったとして、その“水の精”はどんな髪型であるべきかを考えるんです。

水の精がどんな場面で出てきて、どう振舞っているのか。性格はどんなタイプなのか。どんな1日を過ごしてきたのか。そうすると、どんな髪型であるべきなのか。そして、それを見た観客は、何を感じてくれるのか。そうやって想像力を膨らませながら、目の前の仕事と向き合っていったのです。

新井:もう一つ、劇団のヘアメイクをするうえで大事なのは、「人を見る目」でした。俳優とすれ違っただけで、髪の乱れはもちろん、メイクの乱れや衣装の乱れまで瞬時に見抜きます。それを繰り返すうち、俳優の見た目だけでなくコンディションの変化に気づけるようになりました。

そんな新井が所属するヘアメイクのチームは、「いまだかつてないぐらい、すごくいい関係のチームだ」と周囲からも評判の高い裏方のチームになったと言います。

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憧れていた舞台の裏方を経験していった新井は、体調を崩したことにより退職。『doda』の転職エージェントに相談に乗ってもらったことを機に、『doda』を運営する会社に入り、未経験ながら『an』の仕事をするようになり、同じグループである『テンプスタッフ』にやって来たのです。

新井:求人媒体に求人記事を出稿するとか、そこから応募してくれた方にどうやって登録してもらえるか、という裏方の活動がメインの部門です。でも、過去に経験した美容師の仕事もヘアメイクの仕事もすべて、今につながっていますね。

新井が言っていた、「お客様のことを想像し、いかに喜んでもらえるかを考えること」や「人を見る目」というのは、会社内でチームとして働き、スタッフの皆様にサービスを提供するうえでとても重要な考え方だったのです。

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新井:それに、私たちの部門は、コーディネーターや営業と違って、スタッフの方と直接お話しする場がありません。だから、ついつい自分たちの目先のことばっかり考えてしまいがちなんですよね。

しかし、「その先にはスタッフの方がいる」「その先にはクライアントがいる」と考えられるようになったのは、やはり舞台の裏方として働きながら、劇場に楽しみにやってくるお客様を目の当たりにしていたからだと新井は言います。

新井:舞台の裏方として働いている時も、瞬間的に感覚が麻痺する時はありました。キャパ1,200人の劇場が連日満席になると、“それが当たり前”みたいな感覚になったんです。でも、「これは当たり前じゃないぞ」っていう意識を役者も持っていましたし、私も11人のお客様のことを考えながら動くようにしていました。

かつて自分自身が感動して舞台の仕事を目指すことになったように、「この中から1人でも同じ気持ちを持ってくれたら」と思いながら毎回臨んでいたという新井。なかでも、特に印象的だった舞台があると言います。

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新井:体調を崩して特に辛かった時期に、ファミリー向けのミュージカルを担当する機会があったんです。その時、客席にもマイクが仕込んであって、客席の声が舞台裏にも聞こえるっていう仕組みがあったんですよね。

その舞台で、劇の後半になって役者が客席の子供たちに「今日の劇、面白かった?」と投げかけをしたところ、会場中にいる子供たちから大きな声が返ってきたと言います。

新井:お子さんたちが全力で「面白かったー!!!」って返してくれたのを舞台裏で聞いていて、涙が止まらなくなりました。自分の仕事が、お客様に届いていると感じられる瞬間でしたね。あの感覚は、どんな仕事をしていても忘れたくないんです。

そして新井は今、スタッフ向けのマーケティング部門でマネージャーを任されるようになりました。

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そんな新井に、「仕事で大切にしていること」は何なのか、聞いてみました。 

新井:求人媒体を出すとか、派遣登録をしてくださる方が「どうやったらもっと登録してくださるか」っていうことを追っていくと、どうしても数字を追っかけてしまうんです。でも、仮に「派遣登録数=100」という数字があったとして、その100という数字がポンと存在するわけではないんですよね。

細かく見ていったら、私たちの求人を見て「ここなら楽しく働けそうだな」という期待の「1」なんだ、と。派遣っていう制度をうまく使って「この仕事を通じて、自分のなりたい姿になっていけるかな」という期待を込めての「1」なんだと。

そんな「11つの期待が100人分積み重なっての『100』」なんだ、というのは常に意識していたいですね。単なる数値としては扱いたくありません。

美容師として11人のお客様と向き合ってきて、劇団のヘアメイクとして多くのお客様に「面白かった」と言ってもらってきて、そんなことを感じています。

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