これは、テンプスタッフを通じてスタッフとして働く加藤さんのお話です。
加藤さんは、保険関連の会社に合計で43年間勤めたのち、定年退職をされました。そして今は、テンプスタッフを通じて業務スタッフとしてお仕事をされています。
では、どうして加藤さんが定年退職後も働いているのか、そして、なぜテンプスタッフを選ばれたのか。探っていきました。
加藤さんは最近、定年退職されたとのことですが。
ええ、損保関連の会社に23年、共済関連の会社に20年いましたので、合計で43年間勤めました。
定年は60歳ですか?
そうです。ただ、共済関連の会社では嘱託で65歳まで雇ってもらえるということで、毎年更新しながら65歳まで働きました。
65歳で満了して、何を感じましたか。
「まだまだ働きたい」と思いましたね。とても家に引っ込んでいるなんて嫌だなと思って。
『70歳就業法』の施行で何が起きたか
まだまだお元気そうですものね。それで、どうしたんですか。
65歳で満了する前に、情報収集をしなきゃいけないと思ったんです。
情報収集?
ええ。世間では『70歳就業法』なんていう言葉も出てきていましたし、実際に仕事はあるのかな、と。
▼『70歳就業法』とは
『70歳就業法』は、正確には「改正高年齢者雇用安定法」といいます。
従来の法制度においては定年退職せざるを得なかった高年齢者のなかでも、「まだまだ働く意欲がある」という人が活躍できる環境を整備しようと制定された法律です。
もともとは1971年、「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」として制定されました。その後、何度かの改称や改正を経て、現在の「(改正)高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」になっています。
最新の改正は2021年4月1日に施行され、少子高齢化が急速に進んでいる日本の社会状況を加味して「早急に対処しなければならない」と指摘されています。
最新の改正は2021年4月1日でしたよね。実際、どうでしたか?
ハローワークに行って聞いてみたんですけど、「なかなか難しいと思いますよ」って言われましたね。
現実的には、まだ仕事を選べるような雰囲気ではない、という感じですか。
その通りです。守衛とか清掃とか、そういった“力仕事”ならあるけど、私がやってきた事務系の仕事はまず難しい、と。国が音頭を取っていても、まだ企業としては動けていない感じで……
そうでしたか……。それで、どうされたんですか?
どうしようかな、と思っていたら、家内から「派遣に登録してみたら?」って言われまして。家内は以前に派遣で仕事をしていたんですよ。
なるほど、奥様が以前に派遣を。
それで、3社ほど登録してみたんです。最初のうちは何の連絡もなくて「まあ、そんなもんかな」と思っていたんです。
ええ。
そうしたら、テンプスタッフから連絡がありまして。小田原でコールセンターの仕事があるけど、どうかって。
それは、派遣ですか?
いえ、業務委託という形態なので「業務スタッフ」という位置づけでしたね。業務委託は初めてでしたし、コールセンターで働くのも初めてでしたけど、「ぜひ」と。
65歳を過ぎて、初めてのコールセンター業務
65歳を過ぎて、初めての業務委託とコールセンターだったんですね。ちなみに、どんなコールセンターでしょうか。
新型コロナウイルスのワクチン接種に関連した、小田原市民の方からの電話対応ですね。ワクチン接種の予約や、接種券に関するお問い合わせに対応しています。
いかがですか? 初めてコールセンターでお仕事してみて……
人と話をすることは好きですし、全然問題ないですね。クレームを言われることもありますけども、損保時代に『事故対応』などを経験してますから。
そうか! 『事故対応』って、かなり大変そうですよね。緊迫してますし。
そうなんです。だから、今のコールセンターでクレームがあっても「嫌だな」とか思ったことはありません。
わあ、さすがですね。
クレーム対応がどう、というよりも「人と人との関わり」というのを私はすごく大事にしたいと思って仕事をしてまして。
「人と人との関わり」を大事に?
ええ。電話を掛けてきたということは、何かしらの要望をお持ちなのですから、その電話を受けた以上はお応えしてあげたいなと。電話でも“一期一会”の対応をしたいと思っています。
素晴らしい心構えですね。
コールセンターの仕事は初めてですけれども、今までのその考え方でなんとかやれているのかなっていう感じでしょうか。
いえいえ、「なんとかやれている」どころじゃない感じがします。
過去の経験を活かし、『研修講師』も担当
最近は、新人の方が入ってきたら「ちょっと見てあげてください」と言われてサポートをしています。新人さんが困ったら手を上げて、そこに行ってお手伝いをするわけですけども。
いや、それはもう、コールセンターのSV(スーパーバイザー)ですよね。すごい。
最初は「そんなことできるかな」と思ったんですけど、やってみたら新人さんに喜んでもらえるんですよね。それがまた嬉しくて。
「人と人との関わり」を大事にされる加藤さんらしいですね。
いやあ、お手伝いをして喜んでもらえるのは嬉しいものです。すごく「やりがい」を感じますし、モチベーションも上がっていきます。ただ……
ただ……?
1カ月半やってみて、「ここをもっと皆さんに教えたら、ボトムアップして対応の質も上がるんじゃないかな」と感じる部分があったんです。
それで、どうしたんですか。
先日、管理者の方にそうお話をしたところ、「じゃあ、ちょっと簡単な研修をお願いできますか?」と言われまして、やることになりました。
すごい! 研修の講師まで!
実は、現役の時も研修はよくやっていたんですよ。
そうだったんですね。
思い返すと、現役の時はとにかく忙しかったので、伊賀の里とか甲賀の里にでも行って「分身の術」でも学んできたいなって思っていたんです。
ははは(笑)自分が1人じゃ足りないと。
ええ、3~4人いたら、もっといい仕事ができるのにって。でも、そんなことできるわけないし「じゃあどうしたらいいんだ」って考えた時に、『人を育てる』ということの大切さに気づいて。
なるほど。それで、社内研修とかをやったわけですか。
そうです。「1カ月に1回、勉強会をやろう」って声を掛けて、やるようになりました。そうすると、知識だけでなくて、人間関係も近くなって仕事もやりやすくなったんですよね。
そういった経験も今につながっているんですね。
知識を得るときのコツは「急がば回れ」
私は、研修などをするときに「覚え方」にはコツがあると思っていまして。
どういったコツですか?
歴史が好きなので「城攻め」によく例えるんですけど、城を攻めようと思っても、いきなり本丸の天守閣を取れっこないじゃないですか。
確かに、そうですね。
まずは外堀を埋めて、内堀を埋めて、という風に順番があるでしょう。
なるほど。周りから攻めていく、と。
そうそう。何かの知識を得ようと思ったら、本丸の天守閣だけ押さえようとするのではなくて「全体像を理解して周辺から押さえていくべき」ということなんです。
それは分かる気がします。まず全体像を理解したほうがいい、と。
ええ。今までの経験から、そちらのほうが『急がば回れ』だと思っているんです。それに、行き詰まった時に立ち止まることなく『基本に帰る場所』があることも大事なんです。そこから次につながる道が見えてくるんですよね。
まさに加藤さんの培ってきた経験が役立っているんですね。
自分の経験で役に立つことができるのなら、こんなに嬉しいことはないですよね。今の職場はすごく環境もいいですし、出勤するのが毎日楽しみで。
「出勤するのが毎日楽しみ」なんて、本当に素晴らしいことですよね。
良いお仕事をご紹介いただいて、テンプスタッフの皆さんには感謝していますね。やっぱり、家に引っ込んでいる場合じゃなかったです。
加藤さんの豊富な経験は、まだまだ還元すべきってことですね。
いやあ、本当に少しでも社会に還元したいと思っています。社会保険料をしっかり払って、将来の子どもたちのためにも役立ててほしいですし。まあ、微力ではありますけどもね。でも、自分が培ったもので少しでも社会のお役に立てればと思っています。