「私なんか、厄介者なんですよ」
そう口にするスタッフの方に対して、キャリアアドバイザーになったばかりの室井は申し訳ない気持ちになっていました。
室井:スタッフの方から「こんな私ですみません……」みたいな自虐的な言葉を言われて、「すごく嫌だな」「こんなことを言わせちゃいけないな」って感じていました。
キャリアアドバイザリーセンター二課室井 恵実
実は室井には、「私なんて」という言葉に強く反応してしまう理由がありました。
室井:姉がいるんですが、持病の影響で就職活動が上手くいかなくて塞ぎこんでいる時期があって……。その姉もよく、「私なんて」って口にしていたんです。
しかし、お姉さんはハローワークの支援を受けて専任の担当がついた途端、すぐに就職が決まりました。室井は、その一連の動きに感銘を受けたといいます。
室井:仕事が決まった姉がすごく明るくなったのを見て、「こういうお仕事って素敵だな」と思ったんです。それで、求職者を支援する職種に就きたいと思うようになりました。
そうしてテンプスタッフに入った室井でしたが、思い描いていたような仕事はできていかなかったようです。
室井:今は違いますが、当時は「入社したらまず営業に配属される」という時代でした。もともと私の性格自体が営業には合わないと思っていたし、どうしても企業とスタッフの間に立つので企業側の意向も考えないといけなくて。
求職者を支援したいという思いが強かった室井からすると、営業の仕事はバランスを求められていたのです。
室井:自分なりに苦労しながらも何年か続けていたんですが、なかなか結果が出なくて……。
室井:それで社内の“キャリアサポート制度”というのを利用して面談した時に、担当者に向かって思わず「私は向いてないんです」って言いながら、「私なんて」って姉と同じ言葉を口にしてしまったんです。
しかし、キャリアサポートの担当者は室井の強みを引き出し、自らのモチベーションが何なのかを言語化してくれたのです。そして、室井は方向転換を明確に決意することに。
室井:すぐにマネージャーに相談して、「やっぱり私は、派遣社員の方に近い仕事がしたいです」と伝えました。
そうして念願のキャリアアドバイザーになった室井ですが、現在は日々スタッフからの様々な相談に乗っています。
室井:「このままずっと働き続けたいけど、50代になって何歳まで働けるのか不安です」とか、切実な相談を受けています。「派遣社員として働き続けるために何が必要か」とか、「取っておくべき資格はあるか」とか、本当にたくさん。
その人の置かれた環境や状況によっても回答は異なるため、室井はとにかくじっくりと話を聞くのだと言います。
室井:色んな方のケースを見てきましたので、「こんな方もいらっしゃいましたよ」とか「同じ状況で上手くいった方は、こんなことをしていましたよ」とか、多角的にお伝えしています。面談が終わった後には派遣社員の方が一歩を踏み出せるようにしたいと思っているんです。

今でこそキャリアアドバイザーとして活躍している室井ですが、なったばかりの頃に担当した派遣社員の方が「今も忘れられない」といいます。
室井:50代の女性の方でした。ご家庭の事情もあって、自身で稼がなきゃいけないということで希望の条件を伺っていたんですが、高い時給の結構難しい条件だったんです。
それでも必死に探して条件に合う仕事を見つけ出し、それに決まったのですが……
室井:結果的に短期で終わってしまいました。結局、条件ばかりを優先してしまって、その方のキャリアに合っているとか、彼女の強みが生かせるかとか、そこまで考えられていなかったんです。
派遣社員の方は短期で終わってしまったことに責任を感じてしまい、「室井さんに迷惑ばかり掛けて……こんな私ですみません」「私なんて、厄介者なんですよ」と口にしたのです。
室井:そこで、姉のこととか私自身の営業時代のことを思い出して「こんなの嫌だ!」「こんなことを言わせちゃいけない!」って強く感じたんです。
室井はその派遣社員とじっくり話し合い、条件だけでなく、その方のキャリアや強みについて考えたうえで「別の仕事にしたほうがいいのでは」と考えたのです。
室井:総合的に中長期で考えた時に、多少時給が下がってもやりがいを感じる仕事で長く安定して働けるのであれば、そっちの方がいいよね?という結論に至り、その方も納得して挑戦することになりました。
結果的に、長く働ける別の仕事に決定。その仕事に就業することが決まった時のことは今でも鮮明に覚えているようです。
室井:決まったと伝えられたので「よかったですね」と言ったら、めちゃくちゃ喜びながら感謝されたんです。それがもう忘れられないですね。本当に嬉しかったですし、なんて素敵な職業なんだろう、と思いました。
その派遣社員の方は、今も活躍されているとのことです。

そんな室井は、今の仕事に強い使命を持っていました。
室井:派遣社員ってどうしてもデメリットが注目されがちなんです。
確かに、「同じ派遣先で働ける期間が決まっている」とか「裁量の大きい仕事をする機会が少ない」とか、デメリットを挙げられることは多くあります。
室井:でも、キャリアアドバイザーが支援することによって、その人の強みを見つけて、適材適所の仕事がどんなものかを一緒に考えられる。そして、その方のライフステージにあわせてキャリアに伴走することができる。そうすれば、派遣社員のデメリットを少しでも払しょくできるんじゃないか、と思っているんです。
それは、自分自身や室井のお姉さんも的確な支援を受け、適材適所で働けるようになったからこそ実感しているのかもしれません。
そんな室井に、「仕事で大切にしていること」は何なのか、聞いてみました。
室井:派遣社員の方に対して、「お相手の心に常に誠実で真摯に寄り添い続けること」を大切にしたいと思っています。
姉のこともあったので、私は生きづらさとか漠然と不安を感じている人に、「ありのままの自分」で「自分の強みを理解」して「自分を大切に」して楽しく仕事して生きてほしいっていう強い思いがあります。
ですから、相手の「価値観」や「やりがい」や「モチベーションに感じること」などを常にちゃんと捉えていく、ということを面談の中でも一番大切にしています。派遣社員の方が何歳まででも働けるように、これからもサポートし続けていきたいです。
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