これは、テンプスタッフを通じて派遣社員となり、その後テンプスタッフの社員登用試験を受けて社員として働く小林さんのお話です。

小林さんは現在、名古屋にある大手百貨店のレジ業務に関して現場の管理者として働いています。

しかし小林さんには、現在に至るまで大変な過去があったといいます。どのような過去だったのか、詳しく聞いていきました。

小林さん、過去に大変な思いをしたと聞きましたが、高校時代とかの話ですか?

いえ、高校時代は3年間ずっと楽しかったです。家政科に行っていて、食料品とファッションデザインをやっておりまして。

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大学を中退し、3年間の引きこもり生活へ

それはなんだか楽しそうですね。

ファッションショーをやったり、リーダーになって立食パーティーを運営したり、仲間と協力してすごく楽しんでいました。ただ、大学に入ってから……

大学に入ってからが大変でしたか。

高校で燃え尽きたところもあったのかもしれませんけど、友達がなかなかできなくて孤独を感じるようになってしまって。何がしたいのかも分からなくなったうえに、相談する相手もいなくて……

だんだんと塞ぎこんでしまった感じでしょうか……。

ええ。性格的に負けず嫌いなところがあって、人に頼るのが苦手だし自分の中に溜め込んでしまうんですよね。それで、ある日突然、学校に行こうとしても玄関のドアを開けることができなくなりまして。

え……。

ものすごく人が苦手になりまして、交通機関に乗ることはおろか、外に出ることができなくなっていました。ある時には名古屋駅の人ごみの中で、母親と「もう無理!」と号泣してしまったこともあったほどで。

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そうでしたか。

それで、大学は半年で中退して。そこから3年間は引きこもりを続けていましたね。看護師をしている妹や家族からは「社会に不適合で、もうこのままダメになっていくんじゃないだろうか……」って思われていたはずです。

ご家族も心配されていたんですね。

派遣で百貨店の仕事に応募

ただ、救いだったのは「家を出ろ!」とか「何とかしなさい!」とは言われずに、「まあ、休憩したらいいんじゃない」という感じでそっとしておいてくれて。でも、それが自分としては逆に「いや、このままじゃダメだろう」と思わされていましたけど。

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それで、どうなるんですか?

3年が過ぎたある日、いとこが亡くなったんです。そのお葬式で、いとこの友人と知り合って自分の状況を話したら、「子育て支援のNPOをやっているから仕事をしない?」と誘われまして。

子育て支援、ですか。

資格を持った方が在籍している託児所で、子どもの遊び相手をするお仕事です。それで働かせていただいたら、子ども達と触れ合うことで徐々に回復していきまして。

ああ、子どもって純粋な存在ですもんね。

ええ、それでだんだんと「人と接していくのは、やっぱり楽しいな」という気持ちになっていったんです。4年くらいそこで仕事をしたら、「だいぶ普通に戻ってきたかな」って自分でも感じられるようになりました。

おお、そこからじゃあまた別の仕事へ。

また友人の紹介で花屋で働いたり、派遣に登録してペットショップで働いたりしました。

子ども・花・ペットと、癒される仕事ばかりな感じがしますね。

ホントですね(笑)まあ、たまたまのご縁だったんですけどね。それで、「販売職ってやったことがないけれど、1回やってみようかな」と思い立って、派遣で百貨店のレジスタッフのお仕事があったので応募してみました。

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お客様から「お前、“できない”って言っただろ!」

それでテンプスタッフから百貨店のレジへ。でも、人と接するのは大丈夫でしたか?

いえ、入った時は接客というよりも「裏レジ」と呼ばれている、接客がほとんどないようなイベント催事のレジでした。その時にプロジェクトリーダーの方の仕事ぶりを見て衝撃を受けまして。

どういった衝撃でしょう?

その方は私より三つ年下なんですけど、ものすごく仕事ができる方で。その方を見ていたら、「レジの仕事ってすごい!私もやりたい。続けてみたい」って思うようになったんです。

先輩の仕事ぶりを見て続けたくなったわけですか。

ただ、そう簡単ではありませんでした。レジってすごく複雑なので、ミスもたくさんしてしまって……。ある時には、お客様から強くお叱りを受けまして。

え、どんなミスですか?

お酒売り場でレジに入っていた時に、お客様から示されたお会計方法が機械で出てこないので「このお支払いはできないです」とお伝えしたんです。ただ、あとから聞いたところ「できる方法」でして。

なるほど。

それで、お客様からは「お前、“できない”って言っただろ!」と思いっきり怒られたんです。当時のサブリーダーからも「しっかり覚えないとお客様にご迷惑をおかけするから、すべての会計方法を覚えたほうがいいよ」って言われました。

わああ。大変でしたね。……メンタル的に大丈夫でしたか?

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複雑な支払い方法のあるレジを“攻略”

それが、負けず嫌いな性格がまた出てきて、「よし、誰よりもレジを覚えてやろう」って思いましたね。

おお。負けず嫌いが良い方向に作用しましたね。

そうなんです。そこから、レジの操作マニュアルを自分で全部つくってしまおうと思って。もともとマニュアルはありましたけど、自分用に。

レジの操作マニュアルを自分用に?

そう。百貨店のレジって、すごく複雑なんですよ。お支払い方法も現金だけでなくバーコード決済や交通系など色々あるうえ、商品券や株主カードもありますし。それに、独自の「友の会カード」みたいなものもあって。

ああ、種類が多いんですね。

それらの組み合わせで「使える/使えない」も変わってきますし、ポイントが「付く/付かない」も変わってくるわけです。

うわあ、ややこしい。大変ですね。

でも、私はそんなレジを攻略するのが好きで熱中していきました。もともと、子どもの頃は“ゲームの攻略”をするのが好きだったんですよ。

へえ。どんなゲームですか?

『ドラゴンクエスト』とか『無双シリーズ』みたいなRPGですね。どう攻略していくかを考えながらプレイするのが好きだったので、レジの支払い方法を覚えていくのも楽しみながらできました。

なるほど。

そうして覚えていったら、プロジェクトリーダーから「このレジってどうするんだっけ?」と聞かれるようにもなりましたし、百貨店の社員さんからも「そのマニュアル見せてください」って言われるようになったんです。

すごい!

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接客を磨き、成長を続けた

みんなが欲しがる“攻略本”ができたわけですね。

そうなんです。でも、百貨店の場合はレジを攻略するだけじゃなくて、やっぱり接客も大事なわけです。

ああ、百貨店というと少し高級感もありますもんね。

私が教わったのは、「現場に出たら女優になれ」ということです。

女優!?

常に笑顔で元気よく対応して、お客様の「お買い物体験」に花を添えるわけです。笑顔もお給料のうちですからね。「いらっしゃいませ」という声の出し方も、笑顔で「笑声(えごえ)」を出しなさいって学びました。

「笑声(えごえ)」ですか。すごいプロ意識ですね。さすが百貨店。

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そうして接客にも力を入れていたら、新人研修も担当させていただくようになりました。それから、フォロースタッフも担当して。

フォロースタッフというのは?

お客様とトラブルがあった時にすぐにフォローに入っていく担当者です。

わあ。どんどん成長されていったんですね。

いえ、私は本当に人に恵まれたんだと思います。周りのメンバーも良い人ばかりですし、テンプスタッフの営業の方にもよくしていただいて。長く働けているのも本当に皆さんのおかげで。

今はどんな業務を担当されているんですか?

テンプスタッフの社員登用試験を受け、プロジェクトリーダーとして百貨店のレジ業務の現場管理者をやっています。特に目玉としては毎年1月中旬からはじまるバレンタインの催事ですね。

ああ、バレンタインの時期は百貨店ってにぎわいますよね。

「人が嫌い」だった女性が、表彰されるまでに

ええ、特に私のいる百貨店では日本最大規模ともいわれているので、レジの台数もものすごく多いんです。ワンフロアで90台以上のレジがあって、そのうちの30台を担当していました。

さ、30台のレジを!

管理したスタッフでいうと150名ほどですね。シフト作成をしたり毎日のローテーションを組んだり、スタッフのフォローもしました。レジ操作が分からなかったら電話で操作を伝えていくんです。

150名も管理しているなんて……。

今年はインフルエンザが蔓延して毎日のように欠勤が出てしまったので、ピークの時には私も現場に出て、レジを打ちながら他のスタッフに電話で指示をしたりもしていました。

もはや『ラスボス』ですね。さぞかし大変だったのでは。

いえ、大変だとはまったく思っていなくて。「電話しながらもレジもちゃんと対応できて接客もできてる!私すごい!」って自己肯定感を上げられるようになりました。

おお、まさに天職なんですね。

そうですね。レジは大好きです。結果的に百貨店の皆さまの売上にも貢献できて、表彰状をいただくこともできまして。

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うわあ。接客業で表彰されるなんて、外に出られなかった頃には想像がつかなかったんじゃないですか?

確かにそうですね(笑)親からも言われます。「あなた、あんなに人が嫌いだったのに、どうしたの?」みたいな感じで(笑)派遣を活用してレジの仕事に出会えたのが本当に良かったです。

いやあ、ご自身の居場所を見つけていったご様子に、なんだか勇気をもらいました。小林さんの今後の活躍も期待していますね。ありがとうございました!

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