研究職の人材派遣をする、テンプスタッフの研究開発本部。その新宿オフィスに所属する神宮は黙々と資料を作成していました。

神宮:スタッフの時給をアップしてもらうために、クライアント企業に交渉するんです。そのための資料を作っているところですね。

研究開発第一事業部
研究開発新宿オフィス
神宮 匠希

派遣の時給アップは、スタッフであれば誰もが望むことかも知れません。実際に神宮も、担当するスタッフからそのような声を聴いていました。

神宮:「今の時給のままずっと変わらないでしょうか?」といった質問はよくされています。ストレートに「もうちょっと時給上がらないですか?」と言われることもありますね。

神宮が所属する研究開発本部では、特に時給に関して前のめりになる背景があったようです。

神宮:今は世の中的にも物価上昇・賃金上昇の波が来ています。さらに人材不足でもありますので、事務職のスタッフでも時給は上昇する傾向にあるんですが、僕が担当する研究職であればなおさら上がらないといけないんです。

理系の研究職は、いわゆる「手に職がある」人。そういった方の時給が上がらなければ、人材の流出にまでつながってしまうといいます。

神宮:事務職と変わらない賃金だとすると、研究職のスタッフが「同じ金額なんだったら事務の仕事に移ったほうがラクだ」みたいなことになりかねないわけです。ですから、事務職でも研究職でもスタッフのスキルについて適切に評価しなきゃいけない。

そのためにも、クライアントへの値上げ交渉を繰り返しているのだといいます。

神宮:かなり資料は作り込みます。いまの市況感がどうなっていて、クライアントの請求単価がいくらで、市場との差がどうなっていて、事務との差がどうなっていて……、そういったことを色んな角度から客観的に見せます。そうして論理的に説明しながら、「ですから、上げさせてください」と交渉しています。

そのような交渉を、実は神宮は得意としていました。

神宮:テンプスタッフに来る前は、ソーラーパネルの会社で営業をしていました。一般住宅向けのソーラーパネルを戸建てに訪問して売っていたわけです。

300万から500万する商品だったため、いきなり売れることはありません。神宮はまず、「話を聞いてもらう」土台をつくる役割を担っていたようです。

神宮:ソーラーパネルの必要数は家の形によって変わりますので、シミュレーションを作る必要があります。そのためにも、まずは興味を持ってもらって、お家の図面をお預かりするというのが僕の役割でした。

とはいえ、当然ながら訪問販売は断られることも多いものですから、精神的なタフさが求められます。

神宮:訪問販売の営業は、どうしても離職率が高いですよね。僕も同期入社が8人いましたけど、最初の年で6人辞めてしまって……。「断られ続けるのがキツい」「向いてない」という人が多かったです。

そんななか、神宮は着々と図面の獲得数を増やしていったのです。

神宮:断られたとしても何がダメだったのかを振り返って、次の準備をしていきました。そうしたら、毎月コンスタントに10件から15件ぐらいは獲得できるようになりました。2年目にはサブマネージャーになって、4年目にはありがたいことに係長に抜擢されまして。

営業として成果を出し続けた神宮でしたが、一方で「物足りなさ」も感じていたようです。

神宮:僕の役割は最初の図面の獲得だけだったので、「人の役に立つ」という感覚が薄くて……。僕はもっと人の役に立って、それを実感できるような“達成感”を味わうことが好きなんですよね。

「営業としてのメンタルの強さ」と、「人の役に立つことを実感したい」という気持ちは、神宮が打ち込んでいたスポーツに関係するものでした。

神宮:中学・高校・大学とずっと卓球をやってきました。中学の時は関東大会にも出ましたし、高校は県大会のベスト8くらい。社会人になっても卓球は続けていて、この間も試合に出たばかりなんですよ。

「試合ではミスするとか上手くいかないことも多いので、メンタルの強さは卓球で鍛えられましたね」と神宮は笑いながら口にします。さらに、学生時代は「レッスンコーチ」としても活動していました。

神宮:中高生からシニアの方まで、卓球を教えていました。指導したことでどんどん上達していくのをみると、ものすごく嬉しいんですよね。

仕事においても、「もっと人の役に立つことを実感したい」と考えた神宮は、人材業界に照準を合わせてリサーチし、テンプスタッフに転職したのです。

神宮:いくつか内定はいただいたんですけど、実際に現場の先輩やマネージャーと面談した際に「この人たちと一緒に働きたい」と思えたのがテンプスタッフでした。

そうして理系のスタッフのために奔走する日々がはじまったのです。

神宮:日々スタッフのサポートをしていますけど、値上げ交渉については「スタッフの役に立つ」という意味でも力を入れています。しっかりと準備をして臨んでいくことで、クライアントにご理解いただくことも増えてきましたね。

値上げ交渉が無事に上手くいき、その結果をスタッフに伝えたときは喜びを感じるようです。

神宮:「時給が上がることになりましたよ」と伝えたら、「ありがとうございます!」って喜んでくれるのは嬉しいですね。まさに、自分の頑張りがスタッフにとって直接プラスになったわけですから。

そんな神宮に、「仕事で大切にしていること」は何なのか、聞いてみました。

神宮:まず一つ、「安心してもらえるように丁寧に対応すること」は大切にしています。

訪問営業をするとか仕事を取りに行くっていう面も大事ではあります。ただ大前提として、いま働いてくださっているスタッフの方や、いま取引があるクライアントがいてはじめて新たなお仕事を取りに行く時間や費用が生まれてくるものだと思うんです。

だからこそ、スタッフの方やクライアントには安心してもらえるように丁寧に細かく対応をする。

それともう一つは、やっぱり「準備」ですね。クライアントに提案をすると様々な質問をいただきますが、それに答えられなかったら「何しに来たの?」という話になります。

スタッフとの面談でも同じです。ですから、どういったことを聞かれるかを想定して、それに対する準備を怠らないというのは大切にしています。

卓球の試合も自信を持った状態で臨みたいので、今でも週に一度は練習を欠かさないようにしています。卓球も営業も、「準備」が結果に直結しますからね。