これは、テンプスタッフを通じて派遣社員として働いていた馬場さんのお話です。

名古屋で生まれ育った馬場さんは、派遣や正社員として様々な仕事を経験してきましたが、現在は福岡で直接雇用として事務のお仕事をされています。

馬場さんがどのようにして派遣から直接雇用に転換したのか、じっくりと探っていきました。

馬場さんは名古屋出身ということですが、新卒ではどんな会社に?

建築資材の商社で事務の仕事に就きました。もともと父がお寿司屋さんをやっていて、そこにお客さんとして来ていた人たちの会社だったんです。


20代、カナダに2度の渡航

なるほど。その会社にはどのくらいお勤めだったんでしょうか。

6年弱ですね。カナダに1年間の語学留学をするために辞めました。短大の時にショートステイしてすごく良かったので、またカナダに行きたいなと思ってて。


いいですね。1年後に帰ってきてからはどうしたんですか?

「ウーマンスタッフ」という会社に登録して、派遣で働きました。のちのピープルスタッフで、今のパーソルテンプスタッフですよね。

わあ、随分と前にご利用いただいたんですね。でもなぜ派遣だったんでしょうか。

またカナダに行きたかったんですよ。なので、短期の派遣で働いてお金を貯めて、29歳の時にワーキングホリデーで行きました。

なるほど。ワーホリは30歳までですもんね。さぞ楽しかったのでは?

それが、母が病気になってしまって、父から「もう帰ってきなさい」と言われたんです。それで急遽、日本に戻りました。

そ、そうでしたか。それは大変。



後悔を感じるほどつらかった、母の死

戻ってきてから児童英会話の講師をしていたんですけど、資料を作る必要もあって割と時間を拘束されてしまって。

夜も遅くなってしまったんですね。

ええ。そうしているうちに、母がもう長くないということで講師を辞めて、その直後、私が31歳の時に母が他界して……、すごくつらかったです。母とは仲が良かったんですけど、私はずっと自分の好きなことばかりやっていたので、あんまり会話をしてなかったことに気づいて。


少し後悔も。

そうですね。「もう会話もできないんだ」と思ったら、どんどん落ち込んでいきました。

そうなりますよね……。

父のお店もうまくいかず、店を畳んで。毎月の食費も切り詰めているような状況になってしまって。

生活が厳しかった、と。

ええ。一方で30代ともなると周りはどんどん結婚したり、友達の子どもが大きくなっているのを見たりして、「私は何をしているんだろう」って思うことも増えて。

ちょうどライフイベントに違いが出てくる年代ですよね、30代って。



30代で未婚のまま、リーマンショックで派遣契約終了

それで私はその時、正社員として保険代理店に勤めていたんですけど、ノルマとか研修とかが厳しくて、「自分には無理だ」と思って結局1年で辞めて。それで、テンプスタッフではないんですけど、別の派遣に切り替えたんです。でも……

でも?

そこでリーマンショックが来て、突然切られてしまったんですよね。それで慌てて転職をしようとしたんですけど、どの会社も書類の段階で落とされてしまって。


ああ、大変な時期でしたもんね……。

立ち直れなくなりました。仕事もないし、結婚もしていないし、「私なんて誰からも必要とされていないんじゃないか」って本気で思いましたね。

それで、どうしたんですか?

それで、精神的に追い詰められていたんですが、ある時「このままでは駄目だ」とハッとなってハローワークに行って仕事を探したら、自動車系の下請け会社で働けることになったんです。社長秘書という立場で。


逆境に涙する毎日。乗り越えるきっかけになった出会い

それは良かったですね。

いやあ、そこがまたつらくて。小さい会社だからか社長がワンマンでとにかく理不尽な要求が多かったんです。人を呼ぶ時は「おい!」なんですよ。「おい、お茶!」とか。

え……。

そんな感じで呼ばれるので慌てて早歩きで社長室に行くと、その会社に古くからいるお姉様に「うるさい!走らないで!」とか怒られるんです。

か、過酷な環境ですね……。

そんな環境だったので、毎日家に帰っては泣いてましたね。ただひとつ救いがあって。

おお、救いとは?


派遣で切られた時の会社で、ある男性と知り合っていて、ちょうどその方と結婚したばかりだったんです。30代最後の年でした。

なんと!

その夫に愚痴を聞いてもらって、「もう辞めていいよ」って言ってもらえて。それで、1年くらいで辞めたんです。

そうでしたか。



逆境を踏ん張り、福岡でテンプスタッフへ

それからしばらくは短期の派遣で働いていたんですけど、夫に転勤の話が出て、福岡に行くことになりました。福岡には夫の家族がいたんですけど、「お義父さんも連れてきなさい」って言ってくれて。

それでみんなで福岡へ。

そうです。そこからずっとテンプスタッフにお世話になって、派遣で働いていきました。福岡に来てから4社目として県の外郭団体に派遣されたんですが、そこでは5年ほどお世話になりましたね。

そんなに長く。いずれ正社員になろう、とかは?

いえ、もうアラフィフになって正社員はまったく考えてなくて。「次は派遣でどこに行こうかな」ぐらいの気持ちでした。それで、「派遣をいくつかやって、終わったら後はパートで人生を終える感じかな」って考えていたんですけど……

どうしたんでしょう。

営業の方から「次は派遣じゃなくて紹介予定派遣はいかがですか?」というお話をいただいたんです。

直接雇用になることを前提とした派遣ですね。



派遣から直雇用へ。今までで一番楽しい

ええ。「一般社団法人の事務職」というお話しだったので迷いました。そこで改めて「自分は何がしたいのかな?」って考え直したんです。そうしたら、事務の仕事がやっぱり好きで。

営業や講師も経験されたけど、やっぱり事務が。

事務なんて代わりが利く仕事だと思ってたんですけど、そんな中でも『自分にしかできないこと』っていうのは20代の頃から意識していたんです。ちょっとした気遣いとか、工夫とか。そこだけは人には負けない自負があって。

それは素晴らしいですね。

今まで県のお仕事をしていた経験も生かせそうでしたし、「できるのであれば正社員で最後までやりたいな」と思ったので、この話を受けてみようと。

やってみて、どうでしたか?

最初の派遣期間がものすごく楽しかったんですよ。一緒に働く人もすごく良い方で。もう、すぐに「ここで正社員になりたい」と思いました。

そんなに楽しいお仕事なんですね。それで、正社員に。

はい。今までで一番楽しいかもしれません。「これが人生で最後の転職だな」って自分では考えていたので、最後の最後で良い出会いを見つけてくださったのは本当にありがたいなと。

良い出会いに貢献できたみたいで嬉しいです。

こちらこそ、仕事で自分が誰かに必要とされて、誰かの役に立って、「ありがとう」って笑顔になってもらえるのが嬉しいです。

馬場さんの今後の活躍も期待していますね。ありがとうございました!