大阪に本社を構えるパーソルエクセルアソシエイツ。パティスリー部門において事業部長を担当している谷井は、もともと子どもの頃からお菓子作りが好きだったといいます。

谷井:小学生の頃からバレンタインデーにはお菓子を作って、みんなに配ったりしていましたね。

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パーソルエクセルアソシエイツ パティスリー事業部 谷井 香織

家があまり裕福ではなかったこともあり、早くから「手に職をつけたい」と考えていた谷井は、パティシエを目指して製菓の専門学校へ通います。

谷井:“製菓衛生師”の資格を取って専門学校を卒業した後は、大阪を中心にレストランやケーキ屋などで働きました。

専門学校で「いろんな店を見て経験した方がいい」と教わった谷井は、その教えの通り、技術を吸収しながらいくつもの店舗で経験を積んでいったのです。

谷井:途中、チーズ作りがしたくて北海道の牧場まで行って雇ってもらったこともありました。やっぱり、北海道はいい素材が多いんですよね。おかげで、半年で8kgも太ってしまいましたけど(笑)

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6年が過ぎ、パティシエとしての技術を高めていった谷井でしたが、同時に続けていくことの難しさも感じていました。

谷井:パティシエの世界は、独立される方も多いですが仕事がそもそも過酷なんですよ。朝早くから夜遅くまで動き回りますし、小麦粉の重い袋を運んだりもしますし。

「このままの働き方でいいのか」と迷っていたある日、勤めていたケーキ屋で衝撃的な経験をすることになったのです。

谷井:夜に急にスタッフ全員が呼び出されまして、「今日で倒産します」と。採算が合わなくなったようなんですけど、「店舗を経営するって難しいんやな……」と感じた出来事でした。

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この時期に結婚と出産を経験していた谷井は、パティシエを続けることをいったん諦め、料理教室や飲食店で働くことを選択しました。

谷井:子どもを育てながら料理関係の仕事をしていたんですが、子どもが5歳になった時に、異変に気付きまして。

なんとなく「他の子と違う」と感じてはいた谷井でしたが、病院で調べたところ障害があることが発覚

谷井:めちゃくちゃ驚きましたね。特定の運動ができなかったり、規則正しいものを見続けたり、何かを綺麗に整列させたり、そんな感じなんですけども。

昨今では子どもの障害について社会的な認知も高まっていますが、谷井は将来を不安視していました。

谷井:この子が育った時に、働くところがなくて苦労してしまうんじゃないかと心配でした。それで、調べていったら「障害のある人には特例子会社という道があるんや」って知ったんです。

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そして、関西圏で唯一となるパーソルグループの特例子会社「パーソルエクセルアソシエイツ」に縁あって入社することになった谷井。

谷井:障害のことを勉強している最中でしたし、自分が持っている知識や経験も生かせそうでしたし、私にとってはピッタリの会社かなと。

グループ会社内でも人気のクッキーなどを作る、パティスリー事業部の『ぺあ工房』。当初はクッキーとパンの製造指導者を担当したのです。


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谷井:入社してから半年経った頃に、上司が退職することになり「次のリーダーをやってくれませんか」と依頼されました。それからもう9年が経ちますが、仕事はまったく飽きないですね。

日々、技術の指導だけでなくメンバーの困りごとや相談に乗っている谷井。内容も人それぞれであり、それが苦労というより「新鮮でやりがいがある」と語ります。そして、やりがいを感じていることの1つに「商品の開発」がありました。

谷井:昔から「障害者雇用のクッキー」ってあって、私も買ってましたけど「社会貢献だし買おうか」みたいな感じで手に取っていました。でも、パティシエの立場で見ると「もっと美味しくできるんじゃないか」「もっとかわいくできるんじゃないか」と思っていて。

「障害者雇用のクッキー」を手に取りながら、谷井はパティシエとしての使命のようなものを感じていたのです。

谷井:いざ自分がそれを作る側にまわった時に、社会貢献だけを理由に買っていただくのは私は嫌だなって。商品としても勝負ができるもの、評価されるものを作りたいと思って、試行錯誤を続けていきました。

口どけの良い最高級のチョコレートを使った商品や、クッキーの余った生地を無駄なく使ったSDGsなクランチチョコ、見た目やパッケージにもこだわった商品を作るなど、価値の高い商品を次から次へと開発していった谷井。

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谷井:障害者の作ったクッキーだから買ってもらうんじゃなくて、「美味しいお菓子を買ったら、それを作っている会社がたまたま障害者を雇用していた」という感じにしたいんです。

そう語るものの、実現させるためには多くの苦労があったようです。

谷井:いかに質の高い商品を開発しても、それをメンバーのみんなに作ってもらえなければいけません。でも、チョコの上に乗せるドライフルーツもはじめは乗せ方がバラバラで。

障害がある方の場合、自由にやってもらうとバラバラになってしまいます。しかし、あらかじめ決められたことはキッチリ守るという特性があり、それを谷井は理解していました。

谷井:ですから、完成形の配置を毎回見てもらいながら作業してもらうようにしました。他にも、この箱にリボンを付ける際にも文字が読める向きでラッピングをしてもらう必要があるんですけど。

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谷井:このリボンを付ける際にもあらかじめかなり練習をしてもらいましたし、完成形を見てもらいながら作業をしてもらっています。みんな一生懸命に練習して、早く綺麗にできるようになりましたね。


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自分自身も障害児の子育てを経験してきた谷井は、パティスリー事業部のメンバーに対して自分の子どもと同じような思いを持っていました。

谷井:やっぱりメンバーを自立させたい気持ちは強いですね。障害児を育てる場合、「親亡き後問題」というのがあるんです。親がいなくなった後に、皆が安心して暮らしていけるのか。そう考えた時に、やっぱり自分から「困ってます」とか、「助けてください」とかを言える人になってないと、大変なことになるわけです。

単に仕事を教えるだけでなく、将来も1人で生きていけるよう“意思表示”がしっかりできる人間に育てていると語る谷井。そして、それだけではありませんでした。

谷井:それと、自立するためにもお金を稼がないといけません。そのためには、一方的に受け取るばかりじゃなくて、何らかの価値を返さないといけない。そのためにも、「プロになってもらいたい」という気持ちでいろんなことを教えています。

そんな谷井に、「仕事で大切にしていること」は何なのか、聞いてみました。

谷井:お菓子って1日にそんなにたくさん食べるものじゃないですが、その中でうちの商品を手に取ってもらうというのは「すごくありがたいことやな」と。その気持ちは常に忘れないようにしています。

そして、選んでもらったからには、本当に心の底から「美味しいな」って思って食べてもらいたい。お菓子って人を笑顔にする力があると思うんですよね。仕事で少しイライラしてても、うちのお菓子を食べて少しでも気分が安らいでくれたら、それだけで嬉しいです。

実際に派遣スタッフの方からも「営業の方からいただきましたけど美味しかったです。自分でも買いたいです!」とか「パッケージがすごくオシャレですね」と褒めていただくことも増えました。

そういったお声をいただいたらメンバーみんなに共有して、一緒になって喜んでいます。これからも、そうやって多くの人を笑顔にしていきたいですね。

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