ある日、薬剤師の資格を持っていた30代の女性が、「調剤業務だけでなく、それ以外の可能性を知りたい」とテンプスタッフを訪れました。希望されたのは、未経験の製薬業界。そして、対応したのはコーディネーターの小林でした。

小林:薬剤師の資格を活かして、調剤薬局や病院以外で仕事ができないか、可能性を広げてみたいというご要望でした。

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研究開発事業本部 メディカルコーディネートセンター小林 明子

その女性の名前は大橋さんといいました。前職では思っていた仕事内容と違ったことや就業環境の問題もあり、次のお仕事探しには慎重になっているように見えました。さらに、大橋さんは不安も抱えていたようでした。

小林:大橋さんは「派遣だと、基本的には未経験は採ってもらえないんじゃないか」という不安もお持ちでしたね。

小林は、話を聞きながらも背中を押していこうと考えます。

小林:大橋さんは、ご自身で理解して、納得したうえでチャレンジしていきたいタイプだと思ったので、まずは「製薬業界でどのような職種があるのか」「職種ごとのキャリアの積み方」「キャリアチェンジを含め、どのようなキャリアパスが描けるのか」など、時間をかけて丁寧に説明させていだきました。

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小林の話を真剣なまなざしで聞き入る大橋さん。そして小林は、ある職種を提案しました。

小林:『学術』っていう、医薬品や医療に関する専門的な情報を収集したり提供したりするすごく難易度の高いお仕事です。薬剤師の資格を活かすことができて、なおかつ大橋さんの志向にもあっていると思い提案しました。そうしたところ、ご本人も「それ、やりたいです」って。

未経験ながらも、「大橋さんのスキルや志向性ならきっと学術で活躍できる」と感じていた小林は、すぐに挑戦の機会を作るために動き出します。

小林:企業側は経験者を求めていますけど、「未経験でも今までの経験やスキルからチャレンジできるのではないか」ということを、企業側にお送りしました。

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そうして「職場見学」を経て、その企業でのご就業が決まったのです。

小林:当初から慎重になっていた大橋さんでしたから、未経験の製薬会社での仕事が決まっても、初めは不安が大きかったみたいです。でも、すぐに職場でも欠かせない存在になったみたいで。

仕事をするうちに任される範囲も増えていった大橋さん。活躍の様子は、営業を通じて小林の耳にも届くようになっていました。


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それから、3年の月日が流れました。

小林:テンプスタッフから派遣スタッフの方に、自社の『専門職社員』になりませんか、と声を掛けることがあります。『専門職社員』というのは、派遣先で仕事をしながらも、所属としては「テンプスタッフの社員」という“社員型無期雇用”みたいな位置づけですね。

もちろん、派遣スタッフのなかには「派遣スタッフのままで仕事をし続けたい」という方も多くいます。そのため、断られることも少なくないお誘いなのです。

小林:3年間、製薬会社で活躍されていた大橋さんにも『専門職社員』になりませんか、と声を掛けることになりました。ただ、大橋さんは謙虚な性格でしたので、「自分が専門職社員だなんて、おこがましいです」って断られるんじゃないかなって……。

そんな不安をよそに、大橋さんは『専門職社員』へのお誘いを受けてくれることになったのです。


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そうして3年ぶりにお会いすることになった小林は、「なぜ『専門職社員』のお誘いを受けてくれたのか」という点について、大橋さんの胸の内を聞かせてもらうことになりました。

私は『専門職社員』には声が掛からないだろうと思っていたんです。でもお声掛けいただいて、皆さんすごく温和だし雰囲気もいいし「ありがたいなぁ」って。
この人たちに、少しでも恩返しできればなって思ってお受けしました。今はもう、感謝の気持ちでいっぱいなんです。……あ、なんかもう、泣きそう……。

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そう胸の内を語りながら、涙を拭う大橋さん。そして小林も、目を潤ませながらお礼の言葉を口にしたのです。

小林:こちらこそ、ありがとうございます。「未経験だけど活躍したい」という方がテンプスタッフを選んでくださっただけでなく、ご不安な気持ちを抱きながらも『今は現場ですごく活躍されている』というのが、私は本当に嬉しくて……。

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小林の後押しもあってテンプスタッフの『専門職社員』になった大橋さんは、3年前からは想像もできなかった素晴らしいキャリアを歩んでいくことになったのでした。

そんな小林に、「仕事で大切にしていること」は何なのか、聞いてみました。

小林:スタッフによって、優先すべき内容も、もちろん優先事項の比重も本当に様々なので、ただマニュアル通りの質疑応答をするのではなく、『相手を深く知る』ことですね。

お相手の気持ちや志向性、それに価値観とか、そういった部分はすごく大切にしながら寄り添っていかなきゃいけないと思っています。

深く理解して寄り添うことで少しずつ信頼関係が生まれてきて、何かあった時に1番に思い出してもらえたり、頼ってもらえたりする存在になりたいですね。

人生と切っても切り離せないのが“仕事”で、仕事は“人の人生を豊かにすること”だと思っています。少しでもスタッフの人生のお役に立てるよう、そして「出会えて良かった」と思っていただける存在を目指して、これからも頑張りたいです。

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