大学で研究に没頭していた宮﨑さんは、プライベートを大切にしたいと考えて就職時に「派遣社員」という働き方を選択されました。
お子さんが生まれてパパになった今もなお、派遣社員として外資系の製薬会社で働く宮﨑さん。
では、なぜ派遣社員という働き方を選び、どのようなプライベートを過ごしているのか。お話を伺いました。

派遣パパ:宮﨑(みやざき)さん派遣スタッフ(研究職の無期雇用派遣)として外資系の製薬会社に勤務。研究職として、特定の疾患に対して候補となるような薬の評価をしていく研究業務を担当している。
プライベートとの両立を図るため、僕は派遣を選んだ
派遣で働く前はどのようなお仕事をされていたんですか?
大学の博士課程において特別研究員として研究をしていたんですが、家庭や自身の健康を顧みずにいましたね。
仕事第一で奥様のことは考えてあげられなかった、ということですか。
はい、研究ばかりしていましたね。朝8時半には大学に行って、夜は0時とか日付が変わってから帰宅するというのが多くて……。妻からもチクチク言われていました。
奥様としては寂しいですよね。
大学での研究中は労働時間がきっちり決まっていなかったので、周りに引っ張られることも多くてなかなか定時で帰りにくい状況で……。体調を崩したこともあって、ボロボロでしたね。
それで働き方について考えたわけですか。
そうです。就職する際には「プライベートを大切にできるような仕事に就きたいな」と考えました。それで僕は『派遣』を選んで、今の職場を紹介いただいたんです。
外資系の製薬会社ですね。
ええ。それで、派遣で働きはじめた後に子どもが生まれることになって、いま思えば派遣を選んで本当に良かったなと。
かけがえのない、「愛おしくて大切な時間」
「派遣を選んだ後に子どもが生まれて良かった」というのは、子育てにも積極的に参加できるからですか?
その通りです。子どもが生まれて1ヵ月くらいは妻が出産の影響であまり動けなかったので、家事はもちろん買い出しなども僕が担当しました。子どものオムツ替えや寝かしつけもやっていましたね。子どもとの時間が決まって取れたので、毎日お風呂に入れたりご飯をあげたりできたのは良かったです。
それはいいですね。正社員だったら難しそうでしたか?
派遣先の社員の皆さんの働き方を見ていると、やっぱり定時では帰れないんですよ。外資系の製薬会社なので、20時とか22時から海外とオンラインでつないで会議、とか普通にあったりしますから。
外資系である以上、そういう面もありますよね。そうなるとなかなか家の時間は作れませんね……。
ええ、社員の皆さんも「うちは完全に妻がワンオペの状態になってるよ」と嘆いていました。仕方ないといえば仕方ないんですけど、僕みたいに“育児に参加したい”と考える人達は「ちょっとツライなあ」と仰っていますね。
育児に参加したかった宮﨑さんは、派遣で正解だったと。
はい。せっかく子どもと接する時間がとれる派遣という働き方を選んだわけですから、授乳以外はできるだけチャレンジしてやっていきたいと考えていました。
育児のほとんどは父親でもできますものね。
ただ、子どもと一緒に20時~21時には寝る生活になったので、夜にテレビを観たりすることが全くできないのは少しツラかったですね。
ツラいところもあれば楽しいところもある、という感じですか。
そうですね。最近は歩けるようになってきましたけど、目が離せなくなって大変です。子どもが危ない行動に出たときに目を離していて対応が遅れてしまうこともあって、すごく焦りました。
ドキッとする瞬間ですね。
まあ、そんな大変なこともありますが、それ以上に一緒に遊ぶのが楽しいです。日々の成長を見ているのは、かけがえのない愛おしくて大切な時間ですから。
子どもが泣いたらまず「仮説」を立ててみる
子育てを楽しんでいる様子が伝わってきます。「子育て」と「仕事」との相乗効果みたいなことってありますか?
業務の経験が育児に活かされることは多いですね。普段、実験業務を効率よく行うために「事前準備」と「イメージ」が大切だと考えているのですが、子育ても一緒です。何をすべきかを妻と事前に相談して、準備やイメージをしっかりしています。
そうすると子育ても効率よくできる、というわけですか。
ええ。研究や実験は、始める前にある程度の道筋を考えておくことで効率やスピードの向上が図れます。子育てでも、たとえば子どもが3時間ごとに寝たり起きたりするという周期があるのであれば、「起きている時に何ができて、寝ている時に何ができるのか」というのを事前に精査することで、やるべきことを効率よく片づけられます。
なるほど。研究職としての時間管理が育児にも活かせるということですね。
あとは「仮説を立てる」ということですね。研究ではよく仮説を立てていきますが、育児も同じです。たとえば睡眠時間に関して、生後2ヵ月ほどで夜は6~7時間ずっと寝れるようになりましたが、生後3ヵ月経つと2~3時間で起きてしまうようになりました。
ああ、夜中に泣いて起きてしまうことってありますよね。
これも、事前に勉強していたこともあって「この時期であれば、歯が生えてきたのではないか」と仮説を立てたことで、特に心配せずに済みました。
事前にインプットをしておくことで仮説を立てやすくなったわけですね。
はい。ただ、問題が起きるとすぐに「こうではないか?」と仮説を立てて考えてしまうのですが、妻からは「なんだか責められているみたいに聞こえる」と怒られてしまうこともありましたね。
たしかに、「すぐに仮説を立ててみる」って、ちょっと理系っぽいですよね(笑)
まあ、妻も理系だから受け入れてくれていますが、職業病みたいなものですね。
「働くパパ」なら、奥さんと向き合うことを大切にしよう
では、派遣に話を戻しましょう。先ほど「派遣で良かった」と伺いましたが、逆にデメリットは何かありますか?
そうですね。僕がいるような製薬業界での仕事の場合は、10年とか20年かけて薬を開発するんですよね。だから、「プロジェクトの行く末を見届けたい」と考える人からすると最後まで携わることができないので「達成感が小さい」と感じる人はいるかもしれません。
なるほど、確かに。
でも、専門職として考えたら3年くらいの周期で色んなところを回った方が、幅は広がってくるのかなと個人的には思いますね。
では、「派遣」に対してネガティブなイメージはあまりなかったですか?
まったくないですね。派遣先に恵まれている部分もあると思うんですけど、経験に応じて色々と任せていただいたり、学ぶ機会もいただいたりしているので、派遣という立場についてネガティブなイメージは全くないです。今の職場は持ち帰って仕事をすることもないので、プライベートと仕事の区切りもつきやすいですし。
では、同じような立場の「派遣で働くパパ」予備軍の人たちに何かアドバイスがあればお願いします。
そうですね、子どもが産まれたら周りの人と積極的にコミュニケーションをしたほうがいいと思います。仕事と子育てを両立しようと思ったら、「どちらも大切だ」とそれぞれに伝えるだけでも気が楽になって、それぞれが安心できますから。あと、奥さんには逆らわないことですね。
奥様と対立してしまうことが多いのでしょうか……?
いえ、そういうことではないです(笑) 出産をする女性は、男性からすると計り知れない大変さがあると思うので、奥さんと向き合うことを大切にしたほうがいいってことですね。
奥様に寄り添う気持ちが大切なんですね。
派遣先の社員の皆さんからも「子どもが産まれて3ヵ月は奥さんと向き合わないと一生恨まれるよ」ってアドバイスをいただきましたが、本当に妻が望むことに従いながら子育てに参加したほうがいいですね。実際、ストレスはないですし、子どものためにも良いのではないかと思います。