青森のショッピングセンターにある婦人服や紳士服などのアパレルショップで働いていた石川は、将来に不安を感じていました。
石川:販売の仕事は夜も遅かったので、30代までずっと続けるのは体力的にもきついかなと思っていました。それで、事務系の仕事ができるようになりたいなと。ただ、そのためには漠然と「Windowsのスキルを身につけないといけない」と思ったんです。

広域第三事業本部 CAD・Creative人事課石川 環
パソコンスクールに通い、ワードとエクセルの勉強をはじめた石川。しかし、スクールを卒業しようとする頃、転機が訪れました。
石川:パソコンスクールのスタッフの方から「石川さん、うちで働きませんか?」って声を掛けていただいて。それで、「覚えたことをすぐに忘れちゃうのももったいないから、講師としてやらせてもらえるならいいかな」と思って転職したんです。
そうしてパソコンスクールで働きはじめた石川。しかし、そのパソコンスクールではワードやエクセルだけでなく、CADも教えていたため、次第にCADの講師も任されるようになったのです。
石川:最初、覚えるまでは大変だったんですけど、ひと通り使えるようになると、「CADって楽しい」「私、向いてるかも」って思うようになりました。渡された図面や作図ルールに沿って、黙々と取り組むというのが苦じゃなくて。
地味にコツコツやることが得意だった石川は、CADの楽しさに没頭していきます。しかし、そこで浮かんできたのは、ある“負い目”でした。
石川:私はあくまでCADの試験対策を教えることしかできなくて…… 「仕事ではこういう風に使うんですよ」とか言えれば説得力はあるんですけど、現場での実務経験がなかったので負い目を感じるようになっていったんです。「質問をされてもフォローできないんじゃないか……」ってビクビクしていました。
さらに、勤めていたパソコンスクールが「キャリアスクール」へと業容を拡大し、「医療事務」や「簿記」も任されるようになってしまいます。CADの実務経験をつけたかった石川は、悩んだ末に結婚と同時に横浜へと引っ越すことにしたのです。
石川:派遣で働いてCADの実務経験を積もうと思いました。それで、横浜の派遣会社に登録に行ったら、大手ゼネコンの道路施工の現場事務所でお仕事をスタートさせてもらうことになって。プレハブの3階建てで、まさに『現場』という感じでしたけど、大手ゼネコンの仕事の仕方が見られたのは勉強になりましたね。
工事が終わると現場は解散になるため、2年も経たずに業務は終了。次に紹介されたのは、重工系企業でのお仕事でした。
石川:重工系企業の場合、CADを使う割合は低かったんですけど、それでも「まったく触れなくなるよりはいいかな」と思って、CAD+事務みたいな仕事をそこで3年やっていきました。
3年が経過すると、直接雇用に切り替わって継続し、部署再編によって雇用元も次々に変わるなどし、合計すると9年ほど重工会社で業務を経験した石川。安定した環境に落ち着きながらも、内心ではある“焦り”が生まれはじめていました。
石川:「現場で使う簡単な図面を書いてほしい」っていう依頼があったら書く程度だったので、正直なところスキルがあまり上がっている感じがしなかったんです。
40歳を前にして「CADで仕事を続けるにしても、もっとスキルがないと難しいだろう」と漠然と感じていた石川は「仕事の中でさらにスキルアップをしなければ」と考え、派遣会社を変えることにしたのです。
石川:今度はテンプスタッフの横浜オフィスに登録に行きました。そこで紹介していただいて決まったんですけど、最初に予定していた仕事が結局なくなってしまって……
毎日職場に行っても「好きなことをしてて良いよ」と言われて暇を持て余す日々。毎朝通勤してただ座っているだけの状況が続くなか、石川は「心が折れそうになった」といいます。
石川:さすがに次のことも考えたかったし、CADの経歴でブランクがつくのも心配だったから、担当の営業の方に「更新はここで一旦終了させてほしい」って伝えたんです。「私はCADの仕事がしたいので」って。
すると、担当営業は親身になって相談に乗ってくれたといいます。そこで「青森にいた時はインストラクトをしていた」という話をすると、これまでの“点”が“線”へとつながっていく話が出てきたのです。
石川:担当の営業がマネージャーさんだったんですが、ちょうど『設備系CADソフトの研修』を立ち上げようとしていたらしくて「インストラクターを探していた」っていうんです。それで「教える仕事をもう1回やってみませんか?」って声をかけてくださって。
その時にはまったく考えてもいなかったようですが、「そう声をかけてもらえるのもラッキーなのかな」と快諾した石川。
石川:設備は経験がなかったし、ソフトも触ったことないものだったので不安はあったんですけど、「ちゃんと研修も受けてもらって、業務の経験も積んでもらってから講師をやっていただくので大丈夫ですよ」って言われて。
そうして、まずは無期雇用社員として、パーソルテンプスタッフに入社。研修を受け、短期のプロジェクト業務も経験したうえで本社に戻ってきた石川。CAD講習にも参加し、研修資料の作成にも携わり、ついに講師としてデビューすることになったのです。
石川:まったく思っていなかった展開だったんですけどね。
石川は、インストラクター経験だけでなく、様々な現場での経験も有したうえで現在もCAD講習の講師を担当しています。
そんな石川に、「仕事で大切にしていること」は何なのか、聞いてみました。
石川:できるだけ、受講者の不安要素を取り除いてあげるっていうことですね。
私もそうでしたけど、CADをやっていると「今まで使ったことのないソフトを使う不安」だったり、「自分のスキルが仕事で使えるのかという不安」を抱えている人が多いんです。
だから、いろんな相談に乗ってあげたいですし、お仕事をスタートしてからも「何かご質問があったらメールくださいね」と伝えて、とにかく『しっかりフォローしてもらえる』ということは知ってほしいです。
自分も受講生と同じ立場で考えられるようになったので、「私にできることがあれば、何でもしてあげたいな」って思っています。