これは、派遣社員である福田さんのお話です。
福田さんは、東大を卒業して就職後、海外での留学も経験されました。そして今は、テンプスタッフを通じて派遣社員としてお仕事をされています。
では、どうして福田さんが派遣社員を選んで働いているのか。なぜ海外留学をしたのか。そもそも、なぜ東大を選んだのか。色々と探っていきました。
福田さんは東大を卒業されているということですが、昔から東大を目指していたんですか?
いえいえ、目指していたわけではないですね。高校生ぐらいから建築とかデザインに興味があったので、「大学では建築を勉強したいな」とは思っていましたけど。
なぜ高校の時に「建築を勉強したい」と?
叔父が2人、インテリアデザイナーだったり、いとこも2人建築学科に行ってたりして周りに多くて。しかもそのうちの1人は東大の建築学科だったんです。
浪人して東大に。留年しながらも卒業。
周りからの影響があったんですね。
もともと、おじいちゃんが画家だったんですけど、家に遊びに行くと建築の本をよく見せられていたんです。それで、自然にデザインとかアートとか、そういうものが好きになっていたのかもしれないです。
なるほど。それで当たり前のように「建築が学べる大学に行きたい」と。
そうですね。ただ、いくつか受けたんですけど1年目は全滅で……。一浪して、ようやく東大に受かったんですよ。
そうなんですね。それで、東大で建築を学んで。
ええ。ただ東大だと建築学科に進むのは3年生になってからで。しかも2年が終わった時点で選考があって、その時の成績上位の人から選ばれていくんです。で、実はその時に点数が足りなくて……。
え、じゃあ……、留年?
そうです。1年、留年してから建築学科にようやく入れた感じです。
そうでしたか。それで2年間学んで、卒業後は何を?
卒業すると大学院に行く人も結構多いんですけど、自分は就職しましたね。いわゆる組織設計事務所に正社員として入社しました。そこが、ものすごい忙しくて。まさに「身を粉にして働く」って感じでした。
机の下には寝袋。プレゼンでは、社長の前で爆睡。
毎日、遅くまでって感じですか。
そうです。特に当時の設計業界とかって徹夜は当たり前で。週に何日も会社に泊まる、みたいな感じでしたね。自分も机の下に寝袋を置いてましたし。
会社に寝袋!
徹夜で仕事していて、社内のプレゼンで社長の前で寝たこともありますよ(笑)
社長の前で!
けど、社長も何も言わないんです。もう、みんな疲れきっていて。その時は確か2徹ぐらいしてたんですよね。もう完全に頭が回ってなくて、爆睡でした。
すごい環境でお仕事をされていたんですね……。
今じゃありえないですけどね。それで、4年ぐらい働いた頃に会社から「海外へ留学しないか」と言われまして。
おお、すごい。エリートコースじゃないですか。
ただ、会社としてはハーバード大学やコロンビア大学に行ってほしいわけですけど、実際はなかなか受からなくて……。ひとつだけ、カリフォルニアにある建築専門の学校に受かったんですけど。
いいじゃないですか。
でも、会社としては、「そこじゃダメだ」と。「行くなら辞めろ」と。
え!……。
自分としては受かったからには行きたくて。それなりにお金も貯まったし、30歳を前にした歳だったし、「行くなら今しかない」と思って、会社を辞めたんです。
海外留学で考えさせられた「働き方」
そうだったんですね。行ってみて、どうでした?
「働き方」について考えさせられましたね。インテリア会社でアルバイトもしていたんですけど、皆すごく自由に働いているんですよ。17時ぐらいには仕事を終えて、ディナーに出かけるとか楽しんでいて。
それ、もし仕事が終わらなかったらどうするんですか?
仕事が終わらなかったら、「依頼の仕方が悪いんだ」ぐらいのマインドでしたね。本当に全然違う働き方や考え方をしていて、「それでもちゃんとやれてる」っていうのを目の当たりにして考えさせられました。
なるほど。それで、日本に帰ってからは?
まずは働く必要があって、求職の手段のひとつとして派遣会社に登録をしました。それで、マンションの設計事務所を紹介されて働きましたね。あ、テンプスタッフじゃないんですけど……。
いえ、全然気になさらずに。それは何年くらい?
2年ぐらいいたんですけど、そのタイミングで改めて「何がやりたいか」って考えた時に、次はインテリアをやってみようと思って。それでインテリアの事務所に転職しました。
カリフォルニアでインテリアのアルバイトをされていましたもんね。
そうなんですよ。建築というと数年単位の仕事が多いんですけど、インテリアだとすごくペースが速いのが面白くて。2週間で設計して、工事に入ったら2カ月後にはもうデザインができてるみたいなスピード感で。
激務を経て、再び派遣社員へ
でもそうすると、結局は忙しいんじゃないですか?
忙しかったですね。日本で活動しているフランス人の建築家の方がやっているインテリア事務所で、4人くらいの小さな事務所なんですけど、当時は休みという休みがしばらく無かったりして。
うわあ……。
もう、仕事というよりは『修行』っていう感じでしたね。独立するまでのスキルを身につけるための修行。ワークライフバランスなんてボロボロなんですけど、でも楽しかったんですよ。例えば展示会に家具の試作品を作って、イギリスまで持っていくとか。
確かに楽しそうですけど、体力的には大変そうですよね。
そう、年齢的にも「いつまで続けられるのか分からないな」みたいなのもあって、4年ぐらい働いて辞めるっていうことにはなりました。
それでも4年やられたんですね。
ええ。それで、辞めた直後に「仕事はしないとな」っていうことで、また次の仕事を色々と探しました。派遣会社にもテンプスタッフを含めて何社か登録したら、すぐにテンプスタッフから連絡が来て。
テンプスタッフを通じて派遣社員として働いた、と。
そうですね。
東大を卒業して、海外留学も経て、派遣社員として働くということについて周りから何か言われます?
時々言われることもあります。「東大なのに派遣?」「なんで?」って。でも、自分の中では東大ってもう20年以上も昔の話なんですよ。東大卒というだけで「すごい」って見られる部分がありますけど、自分からするとあんまり関係なくて。
経歴よりも、“今”が大事
まあ、東大って番組名や書籍名に使われるぐらいキャッチーですからね。
「すごい、頑張られたんですね」とかっていう目で見られるんですけど……。まあそう言っていただくのはありがたいけど、別に昔の話なんだよなあ、って気はしています。
それよりも今が大事だ、と。
そう、大学に行って設計事務所入って、独立してっていうのが建築学科の学生としての王道ルートみたいな感じですけど、一度そこから少し外れてみると、本当にいろんな働き方があるのを知って。「自分で快適な道を選べばいいんだな」って。
快適な働き方を自分で選ぶ。いいですね。今の『派遣』という道はどうですか?
最初は、仕事としての『やりがい』の部分とかっていうのが少し物足りないというか、今までの自分の仕事の感じからすると「もっと負荷かけてもいいんじゃない?」と思うことはありました。
これまでのハードさに比べたら、そう感じますよね。
ええ。でも、派遣社員の5年目くらいで『技術社員』っていうポジションがスタートして、声をかけていただいて。それで、テンプスタッフの技術社員登用で技術者派遣(常用型派遣)という働き方になったんですよ。
なるほど、技術者派遣に。
一般派遣と同様に就業先で働くっていうのが時間的には9割。だから、普段は就業先の設計業務をしているんですけど、それとは別で派遣社員のサポートとか、講師のような仕事もしていまして。
同じような派遣社員を後ろから支える、と。
そうです。そこに対して、やりがいをすごく感じているんです。自分自身が今まで派遣社員として働いてきた経験もあるなかで、「もっとこうすればいいんじゃないか」って思うことが色々あったんです。それを実際に他の派遣社員へ還元できる立場になったので。
何を言われても、結局のところ働くのは自分
今までの経験をフルに活かせる、というわけですね。技術社員としては、どのくらいやられているんですか?
技術社員になって5年ですね。だから、派遣社員として働きはじめてからもう、気がつけば10年ですね。
10年。今までのスパンで考えると1番長いですよね。
そうなんです。正直、今の働き方が「ちょうどいい」んですよね。
すごく忙しいことも経験して、物足りなさも感じて、今がちょうどいい。
そう、友達と会ったり、勉強したり、いろんなことをする時間はありつつ、仕事は仕事でしっかりしたことができる。それこそ「ワークライフバランス」が今までの中で1番取れているっていうのが大きいです。
まさに最初に海外で見た理想の働き方ですよね。
ああ、確かにそうですね。
さっき言っていたように、東大とか王道ルートとか関係なく『快適な働き方』を自分で選んで見つけた、というわけですね。
そうですね。「東大なのに」とか「なんで派遣に」とか、人から色々言われてきましたけど、結局のところ働くのは自分ですからね。
確かに。
人に何を言われようが、自分の居心地のいい場所を探し出せばいいんだと思うんです。
周りが決めることじゃない、と。
そうそう。派遣が嫌ならとっくに辞めてるわけですから。派遣っていう仕事のやり方が、色々と経験したなかで結論として「1番ちょうどいい」から今ここにいるわけです。
そうですか。ちょうどいい場所が見つかって良かったですよね。
ええ、今の状態にはすごく満足をしていますし、このままずっといくだろうなと思っています。これからも技術社員という働き方で他の派遣社員をサポートしていきたいですね。