これは、派遣社員である大井さんのお話です。
「派遣社員として働いていたが、直雇用に切り替わることになった」という大井さんに取材を依頼したのですが、いきなり驚くべき話を聞かされました。「わたし、元・テンプスタッフの社員なんですよね」と言うのです。
なぜ、元・テンプスタッフの社員である大井さんが派遣社員として働いていたのか、その理由について探っていきました。
ホテルのフロントから事務。そして企業の受付へ
大井さんは元・テンプスタッフ社員だということですが……
そうなんです。もう20年前ですけどね。
なぜ今、派遣社員として働かれているのか気になります。順を追ってキャリアをお伺いしてもいいですか?
はい。キャリアの1番最初はホテルですね。20歳の時から4年間、大手ホテルでフロントなどを担当していました。
4年で辞められたわけですね。
ええ、勤務時間がバラバラで大変な割に給料がすごく安くて(笑) それで「事務とかどうかな」と思って。大手建設会社に転職しました。
その建設会社で事務をやったわけですね。
正社員で事務として働きました。その後に結婚して、結婚を機に働き方を変えようと思って派遣社員になりました。
その派遣はテンプスタッフで登録して?
そうです。それで、コンサルティング会社の受付をやっていました。そこで担当いただいたスタッフフォローの方と話しているうちに「スタッフフォローって楽しそうだな」と思って。そうしたら「大井さんは向いていると思う」とも言われて、俄然やりたくなったんですよ。
それでテンプスタッフに入社したい、と。
ええ。応募をして、新宿の本社へ面接に行って合格し、渋谷オフィスに配属になりました。それでスタッフフォローをやらせていただいたんです。
そうだったんですね。
テンプスタッフの社員を辞め、コンビニでパートも
仕事は思っていた以上に楽しかったんですが、ちょうどその時期に妊娠しまして、スパッと辞めてしまいました。後先のことも考えず(笑)
決断が早いですね。そこからは子育てに専念されたわけですか。
そうですね。子どもを2人授かりましたので。でも、下の子が3歳になった時から、昼過ぎくらいまでのパートとして近所のコンビニで働きはじめました。
コンビニでパートですか。それはまたなぜ?
上の子の通学路にちょうどそのコンビニがあったからですね(笑)
え?
募集しているかどうかなんて見ずに「すいません、ここで働かせてください」って飛び込んだんです(笑) 働きながら子どもを見守ることもできるし、子どもに働いている姿を見せるのもいいなと思ったんですよ。
へえ、面白い考え方ですね。フルタイムで働こうとは思わなかったですか。
そこはちょっとこだわりがあったんですけど、子どもが小さい時は「お帰り」って言ってあげる時間をしっかり取りたかったんですよね。
なるほど、そういうことですか。その後もずっとコンビニですか?
いえ、お料理を作るのが好きなので“ライブキッチン”のある飲食店で働いたり、アパレルも好きだからセレクトショップで働いたり。やってみたいと思った仕事をやっていきましたね。働く時間も、子どもの成長に合わせて段々と長くなっていきました。
なぜ元・テンプスタッフ社員が派遣登録をしたのか
お子さんに合わせて仕事を決めているわけではないんですね。
そうですね。もちろん子どものためという部分もありますけど、やっぱり私の好奇心が強いので「楽しそう」とか「やってみたい」って気持ちがまず先に行っちゃうんですよね。それで、子どもも大きくなってきた頃に「もっと長い時間で働きたいな」「いろんな仕事から選びたいな」と思って派遣登録をしました。
なるほど。それで派遣登録を。でも下世話な話かもしれませんが、以前にテンプスタッフの社員だったら、その時の繋がりを頼って何らかの力を借りようと思わなかったんでしょうか?
それはないですね。
あ、今はもうテンプスタッフの社員と繋がりがないとか……?
いえ、今でも当時のメンバーとは年に何度か会っています。私なんて20年前に中途で入って1年半くらいしかいなかったんですけど、すごく仕事が楽しくて充実していて、チームの結束も強かったですね。
だったら、なおさら頼ろうとかは……
いえいえ、昔一緒に働いた仲間は、あくまで今は飲み仲間なんです。だから、自分のためにお願いごとをするのは違うなと思ったんですよ。ちゃんと自分の力で行こうと思って。
なるほど。
みんないい人だから、お願いしたら多分助けてくれると思うんですよ。だから、逆にその良心を利用するようなことはしたくなかったんですよね。
「働き方が変化すると、人生を楽しめる」
それで、再登録に行ったわけですか。
そうです。東京駅の八重洲にあるオフィスに行って、ブランクも空いちゃったのでスキルチェックもちゃんとやりました。
そうして派遣社員として働きだした、と。
ええ。とある電力系の会社に行って、半年で切れる契約だったんですけど、そこで「設計をやらないか」って言われたんです。設計なんてやったこともないし、普通はできないじゃないですか。でも、いざ勉強しはじめてみたら面白いんですよね。それで、正社員になりたいって希望を出しました。
正社員になりたくなるほど仕事が楽しかったんですか。
まあ、アラフィフでもありますし、将来的なことを考えたって部分もありますけども。
それにしても、ホテルのフロントからはじまって、テンプスタッフの社員も経験し、コンビニのパートも経験し、派遣で働いて再び正社員へ……、ってすごく働き方が変化してますよね。
そうですね。いろんなところで働くほうが『一期一会』の出会いがあっていろんな方と関われるから人生を楽しめる気がしますよね。仕事に応じていろんなことを勉強できますし。もちろん、一つの仕事を長く続けられる方も「すごいなあ」って尊敬しますけど、私はこっちのほうが向いてるかなって。
働くことをすごく楽しんでいる感じが伝わってきます。そういう「この瞬間を楽しもう」みたいな感覚って昔からなんですか?
ああ、それでいうと子どもが生まれてからかも知れません。実は、長男が産まれたばかりの時に、心臓に大きな病気があることが発覚して。2月に生まれて3月には手術をしたんですが、お医者さんからも「この手術を逃したら命が危ないですよ」って言われてしまったんです。
え……
「派遣という働き方があって本当に良かった」
心臓を止めて行う手術だったんですけど、無事に成功して今はすごく元気で。
ああ、それはよかったです。
だから、子育てや仕事や人間関係で色々と不満が出たりすることもありますけど、息子の胸にある大きな傷跡を見ると「まあ、命があって生きているならいいよね」って思えるようになりましたね。
なるほど、それで仕事も人生も楽しんでいる感じがにじみ出ているのかも知れませんね。お子さんとの関係はどうですか?
その長男はもう20歳ですけど、今でもハグするぐらい仲良しではありますよ。
今でもハグ! すごいですね。やっぱり小さい頃から「お帰り」って言ってあげてたのが良かったんですかね。
どうなんですかね。子育てとか自分の興味に合わせて働き方を変えてきましたけど、その変化が私たちにとっては良かったんでしょうね。だから私は「派遣」という働き方があって本当に良かったなと思って。
派遣で働きはじめて、直雇用に変わったということですが、一緒に働いていたテンプスタッフの仲間は驚いたんじゃないんですか?
いえいえ。派遣で働いていることも直雇用になったことも、テンプスタッフの仲間には言ってないですね。
え!?
やっぱり、そこは違うんですよ。今はもう飲み仲間なのでね(笑)
じゃあ、この記事を読んだらビックリでしょうね(笑) 大井さんの今後の活躍も、ぜひ期待しています。ありがとうございました!