正社員として働いていた山本さんは、2人目の出産を機に働き方を大きく変えようとしました。正社員として10年近く勤めた会社を辞め、専業主婦になろうと考えたのです。
しかし、そんな考えの山本さんに対して、周囲の反応は予期せぬものばかりだったといいます。
なぜ山本さんは専業主婦になろうと考えたのか、そして、最終的にどのような働き方になっていったのか。お話を伺いました。

派遣ママ:山本(やまもと)さん派遣スタッフとしてパーソルグループの会社に勤務。営業サポートやコンテンツ運営など様々な業務を担当している。

白か、黒か。正社員か、専業主婦か。

以前は、どのようなお仕事をされていたんでしょうか。

以前は化粧品や健康食品を扱う会社で正社員として働いていました。入社当時は商品開発に携わったりもしましたが、メインは紙媒体の制作などの広報的な仕事です。

制作系のお仕事はとても忙しいイメージがありますが。

ええ、外部との調整も多く、多忙な日々を過ごしていました。途中で1人目が生まれて育休も取らせていただきましたけど、その会社には10年近く所属していました。

なぜ辞めることになったのでしょうか?

とにかく忙しすぎて心身ともに疲れ果てていたので、まず辞めて「専業主婦になろう」と思ったんですよ。

転職とかではなくて専業主婦ですか?

ええ、ちょうど2人目が生まれて子育てが大変になるという時期で。それと同時に、長男が小学校に入るタイミングでもあったのですが、「学童保育」に預けることには少し抵抗がありました。私自身が家にいつも親がいたからかもしれません。

完全に家庭の方に比重を置きたい、という感じですか。

そうです。私の性格が「白か黒か」みたいなハッキリした性格なので。やるならキッチリやらないと気が済まない。だから、正社員で続けるのが難しいならすっぱり辞めて専業主婦になって、子育てに専念したいなと思って。

会社の皆さんの反応はどうでしたか?

簡単には辞めさせていただけなかったですね。「もし違う仕事につくのであればうちの会社にいてほしい」とか、「何か課題があるのであれば解決するから」と言ってくださったのですが、もう完全に専業主婦になるつもりだったので「いえ、もう辞めます」と。

本当にハッキリされているんですね。旦那様は専業主婦に賛成でしたか?

いえ、反対されました。「そんな風に言ってくれる会社はないよ?それでも辞めるの?」って。仕事を続けて欲しいタイプの人だったので、説得するのが大変でしたね。

それでもなんとか説得したんですね。

ええ、本当にもう仕事と子育ての両立に疲れていたので。よく、「家庭では母親は笑っていたほうがいい」って言うじゃないですか。本当にそうだなって思いました。全然笑えてなかったので。

お子様はどんな反応でしたか?

それが、長男に「仕事を辞めるからずっと家にいるようになるよ」って言ったら、「なんで?」って言われたんですよ。

え?
 

正社員は難しい、でも専業主婦も違う。そして見つけた「派遣」。

「なんで働かないの?」って。ずっと私が働いているのが当たり前だから、逆に家にいることが不思議で仕方なかったみたいで、「なんで?」ってすごく言われました。びっくりしましたね。

そうではなかった、と。

「学童も行かないで、おうちに帰って来れるようになるんだよ」とも言ったのですが、「僕、学童行きたいよ」って言われたんですよ。

あら、そういう感覚だったんですね。

息子の「学童に行きたい」という気持ちを知り、そんななか、有給消化に入って自分の時間ができるようになった時、「あれっ」と思ったんです。「動き回っているほうが自分には合ってるんじゃないのかな」って。

なんか違うぞ、と。

はい。これまでずっと日々忙しく、朝から晩まで座る時間もないほど動いてきて、辞めるまでも色々と考えて決断して辞めたはずなんですけども……。いざ辞めてみたら、なんだかズレを感じて。これからずっと子ども2人と過ごすのもいいけど、「もしかしたら逆にしんどいのかもしれない」と思うようになりました。

社会との関わりがなくなってしまうことへの焦りですかね。

それもありますが、いろんなことを考えましたね。子育てをしながら、正社員の生活を続けていく自信もなかったので「後悔はないんだよな……」って思ったり。でも「働いてないっていうのもなんだかな……」って思ったり。でも「ガッツリ働くのは自信ないな」って思ったり、「でもブランクはないほうがいいよな」とも思ったり。

気持ちが行ったり来たりしてる感じですね。

そうです。そんななかで最終的には「よし、新しいステージで今の自分に合ったできる範囲のことをやろう」という思いに至りました。

自分のペースで働きながらも、子育てもしっかりやろう、と。

はい。ある程度は家庭のほうに比重を置きながらも、在宅の仕事があればいいなと思って。

在宅のお仕事を探しはじめたわけですか。

ええ。そのなかで、時間や就業場所、仕事内容など、色々な働き方を選べる「派遣」という選択肢も含めて探していきました。

任された仕事を自分で組み立てられるので、やりやすい

そこで「テンプスタッフ」で登録いただいたのはなぜですか?

前職で、職場に女性が多くて、テンプスタッフの派遣スタッフの方も結構いらっしゃったんです。皆さん長期的にテンプスタッフを介して働かれていて、色々と話を聞いていたら「寄り添ってもらえる」とか「働きやすい」という面が感じられたので、私も自然とテンプスタッフを選んでいました。

すぐに今のお仕事は決まりましたか?

いえ、最初の2社はダメでした。3社目で決まったのがパーソルグループの会社で、今お世話になっています。

お仕事の内容はどういったものでしょうか。

営業さんのサポートや、コンテンツの運営などをやらせていただいています。

すぐに慣れましたか?

いえいえ。10年いた古巣から新しい環境に移るというのは結構大変でした。経験を活かせる業務内容ではありましたけど、勤めたことがない業界だったので、皆さんの思考に関して「そういう考え方をして進めていくのか」ということが多くて前職と大きなギャップがありました。

会社の文化が違う感じですかね。

そうですね。自分の中で「あ、こういうことか」と消化していくのが大変でした。

文化もかなり自由で、社員の方たちはフレックスでやっているので、自分でスケジュールを組んで自ら動いていますね。「指示待ち」みたいな人は誰もいないです。

そうすると、派遣スタッフの方もそういうタイプが向いている感じですか。

そうかもしれません。私は前職でも自分で判断してスケジュール組んで回していくっていう感じの働き方だったので、この職場にきて「これまでと同じように任された仕事を自分で組み立ててやればいいのか」という感じで、すごくやりやすいなと思いました。

「朝から洗濯機が回せる」のは本当にありがたい

お仕事をしながら子育てをする中で、1日のスケジュールはどういった感じなんですか?

まず朝は6時に起きて。

はやいですね!

いえいえ、前の会社で1人目が生まれた時は5時に起きてました。家に帰ってきてからスーパーに行く時間もなかったので、朝のうちに夜の食事の支度もしてから子どもを起こすみたいな感じで。

なるほど、忙しかったからすべて前倒しでやっていたんですね。

そう、まず土日には1週間分の食材を買いだめして作りおきをしてましたからね。でも今は余裕ができました。6時に起きてから6時半に子どもたちを起こして8時半までに送り出してます。それで、始業開始は10時からなので、そこまでの時間で家事ができるんですよ。

朝のその時間に家事ができるのは大きいですよね。

そうなんです! そこがすごい良くて! 朝から洗濯機が回せるんですよ! 9時からやってるスーパーがあればお買い物も行けるんです!

すごく声が大きくなりましたね(笑)

失礼しました(笑) いや、本当にすごくありがたくて。1日が効率よく回るようになりました。

終業は17時くらいですか。

ええ、17時に終わって息子を学童に迎えに行ってから娘を迎えに行って、17時40分ぐらいに家に帰ってくるっていう感じですね。あと、これまでは休日に習い事をしていましたが、平日にも習い事も入れられるようになりました。

お母さんの生活が充実して、お子さん達にもそれが伝播している感じがします。

本当にそうですね。子どもも習い事が平日に分散されたことで、休日、自由に使える時間が増えたので充実しています。

働くことになって旦那様の反応はどうでしたか?

また働くって言ったときは、すごく嬉しそうでしたね(笑) 「働いてくれるならありがたい」って。まあ、私より8つも年上ですし、子どももまだ小さいというのもあり、色々と将来のことを考えて不安だったんだと思います。

自分にとって“心地いい場所”が「ここだ」と見つかった

働き方を変えたことで、旦那様も安心されて、子育てもしっかりできるようになって、というのがすごく伝わってきます。

私の性格が「白か黒か」みたいな性格だっていうのは先ほど言った通りですが、それによって今まで家族を含め周りを苦しめてきたんだと思います。私の「100%やらなきゃ」という姿勢によって、自分自身も苦しくなっていましたし。

今までは「100か0か」みたいな感じだったのが、「80と20」とか「70と30」みたいなバランスを見つけた感じですかね。

まさにそうですね。10年やってきた正社員を辞めたタイミングで色々と考えることができました。そこで、派遣も視野に入れて探してみたところ「ああ、ここだ」という感じで見つけられたのかな、と。在宅で働けることによって、時間にも少し余裕ができて子どもと向き合う時間もできたし、本当に自分にとって心地いい場所が見つかった感じです。

山本さんの居場所が見つかったようで良かったです。昔の山本さんのように働き方で悩んでいる方にアドバイスするとしたら何と言いますか?

そうですね。まずは「働かない」という選択肢よりも、「働く」という選択肢を取ったほうが、自分の子どもだけじゃなくて、自分の将来を考えた時にベストではないかなと言いたいです。

自分の子どもだけじゃなくて、自分の将来を考える。

はい。昔、働くママの上司に「働くことをやめない方がいいよ」って言われたことが胸に残っているんです。自分の将来のキャリアや、いずれ子離れした時のことを考えると、働ける環境があるっていうのはすごくありがたいことだよって。働くことで広がっていくこともあるから、働いていた方がいいよって言われて。

なるほど。

ただ、私みたいに正社員として働き続けようとするとしんどくなってしまうこともあると思うんですけど、いまは「派遣」も含めて多様な働き方ができますからね。自分に合ったものを探してみて、ベストのところでキャリアを続けていけたらいいんじゃないかなと思います。

「白か黒か」ではない場所を見つけてみる、ということですね。山本さん、ありがとうございました!