「テンプは私のことを分かってくれない」
女性の派遣スタッフの方にそう言われた本橋は、なんとかしたい気持ちでいっぱいでした。

本橋:もともと足が不自由なスタッフの方で、在宅勤務をしたいという希望があったのですが、当時の担当が「それはできません」と突っぱねてしまったような形でスタッフの方に伝わってしまっていたのです。

研究開発事業本部 メディカルコーディネートセンター本橋 美那

本橋:スタッフの方にお話を伺うと、足が不自由とはいえご通勤は通常通りできるということでしたので、通勤ルートを一緒に考えることにしました。一番ラクなルートといいますか、階段が少ないルートだったりエレベーターがあるところを一緒に地図で見ながら調べたりして、「このルートであればこの企業でも大丈夫ですね」といったやり取りを重ねていきました。駅ナカの地図をあんなにじっくり見たのは初めてでしたね。

しかし、条件に見合った仕事の紹介がなかなかできず、3カ月経っても派遣先が決まりません。本橋は、戸惑っていました。

本橋:普段よりも時間が掛かってしまい、なかなか結果が出ないという状況が続きました。ここまでお待たせすることが私の中では初めてだったので、壁にぶつかった気分でしたね。「どうしたらこの方のお仕事を決められるのか」と、すごく自分の中でも考えました。

そんななかで本橋は、派遣スタッフの方に寄り添うようにきめ細やかな対応を心掛けていました。

本橋:週に少なくとも2回、多い時で毎日、お電話でもメールでもやり取りをさせていただきました。いろんなお話をしながらも、この方の一番負担にならないような仕事をみつけてあげたいなという思いが強くなっていきました。はじめは「こちらから頑張って紹介をしなきゃ」という姿勢ではありましたが、途中からもう『二人三脚』といいますか、一緒になって「何の仕事が良いのか」とか「どうしたら仕事が決まるか」を考えていきました。

本橋がひたむきにフォローする行動に、派遣スタッフの心も徐々に変化していきました。

本橋:何社目かのご紹介をするときに、貴重な職種ではあったのですが時間給が下がってしまうお仕事がありました。「時間給が下がってしまうのですが、どうでしょうか……」と聞きましたところ、スタッフのほうから「時間給うんぬんではなく、本橋さんの担当してくれる企業さんなら、私は行きますよ」といってくださったんです。「もう全部、本橋さんに任せます。進めてください」と。その時にすごく「信頼してくださっている」ということを強く感じて、嬉しくなりました。

そして2021年4月のある日、派遣スタッフの方に会社にお越しいただく機会があり、本橋は初めて顔を合わせることになりました。

派遣スタッフ:こんにちは。

本橋:はじめまして。

派遣スタッフ:やっとお会いできましたね。

電話やメールでは何度もやり取りしながらも、直接会うのは初めての二人。しかしそこには、初めてを感じさせない関係性がありました。

派遣スタッフ:電話すると、いつも元気に対応してくださるから、仕事がなかなか決まらなくても精神的に落ち着きました。それはすごくありがたかったです。

二人で話しながら、数々の記憶が走馬灯のように思い出されていくようでした。

派遣スタッフ:だから、何かあったら、いつも電話しちゃうんです。いつも一番に「本橋さんいませんか?」って。

本橋:どうしよう、感動しちゃった……。嬉しいです……、本当に。

本橋の目から、次々と涙がこぼれ落ちていきました。

派遣スタッフ:そんな、泣かないでください。

派遣スタッフに寄り添いたいという本橋の気持ちが、しっかり伝わっていたことがわかった瞬間でした。

本橋が仕事で何を意識しているのか、聞いてみました。

本橋:相手が何を求めているのかな、何をしたら嬉しいのかな、ということを想像しながら常に行動しています。このお仕事で大切なのは「相手の人生に寄り添うこと」ですけれど、その根本にあるのは『いかに相手のことを想像しながら相手のことを想ってお仕事ができるか』だと思っているので。

現在、この派遣スタッフの方は就業先で正社員として働いています。こんな嬉しい言葉もいただいたようです。

本橋:「もしかしたら派遣の募集が出るかもしれません。その時は、絶対にテンプさんを推薦させていただきますね」と仰ってくださいました。嬉しいですね。