「社員の方から指示がもらえません」
新家が担当していた40代の女性スタッフは、新たな街づくりを担当するマネジメント会社が派遣先でした。派遣先の社員の方も全てが手探りの仕事であったため、女性スタッフからも不安の声が絶えませんでした。
新しいプロジェクトでしたので、スタッフの方が自分で考えて動かなくてはいけませんでした。また、対住民の対応になってくるので、その場で答えなくてはいけないプレッシャーもあり難しい業務だったと思います。社員の方から指示がもらえない、社員の方が判断してくれない、といった相談をスタッフの方から非常に多くいただきました。

第一営業本部 八王子オフィス新家 祐司
新しく出来上がっていく街の『住民対応のコンシェルジュ』として働くスタッフ。指示がもらえず相談もできずにいたスタッフに、新家はとことん寄り添うことにしました。
正直なところ、まずは話を聞くしかできないなと思いましたので、ひたすら話を聞いていました。呼ばれたタイミングでちょっと時間をつくって訪問するということを繰り返していて、多い時では毎週のように足を運んでいた時期もありましたね。悶々としている様子でしたから、「吐き出す場を作る」ということが大切だろうと考えていました。
しかし、事態は思っていた以上に深刻でした。吐き出す場を作るだけでは解決しなくなっていたのです。新家はスタッフからの話を聞くだけにとどまらず、派遣先の企業にも改善提案を打ち出すことにしました。
クライアント企業への伝え方は注意しました。「スタッフがこう言っていた」というのではなくて、「スタッフと話していて私個人として感じたことなので間違っているかもしれないけれども、ちょっと気を付けていただけないでしょうか」と、主観で感じたことであるという点を強調して伝えるようにしました。
それから、相談をもらったら、できる限りその日のうちに時間を作るようにして訪問しました。たとえそれが就業時間後になってしまったとしても、です。その人のために自分は何ができるのか、どこまで尽くすことができるのか、というのを常に考えていましたので、すぐに対応することが大事だろうと思いました。
そんな新家の地道な行動が、スタッフの心にゆとりをもたらしたのでしょうか。新家はある時、スタッフの変化を肌で感じるようになりました。
ある時に伺ったら、スタッフの方がコーヒーを出してくれるようになりました。それも最初は普通のコーヒーだったんですが、何度か行くとカフェインレスのコーヒーに変わって、「カフェインレスのほうが身体に良いですよね」というように、ちょっとした雑談もするようになったんです。
徐々にスタッフから不安の声や相談の声も減っていきました。やがて新家は、配置転換で担当から外れることになってしまいました。
新家が担当を外れて2年後、久しぶりにそのスタッフから連絡が届きました。
そのメールには、次のようなことが書かれていました。
新家さんには沢山お話を聞いてもらいました。当時はご迷惑をお掛けして申し訳ありません。ただ、あの頃に親身にお話を聞いてくださったからこそ、あの時期を乗り越えることができたと思います。本当にありがとうございました。
正社員に切り替わるにあたり新家さんにお礼をしたいと思い、メールをお送りしました。
そう、その女性は業務での頑張りが認められ、正社員になることになったのです。
メールもそうですが、そこで社員になってくれたというのがすごく嬉しかったですね。本当に何もないプレハブの状態からプロジェクトを見ていたので、街がどんどん立派になっていく中で、スタッフの方はそこで引き続き頑張ってくれているんだ、というのがたまらなく嬉しかったです。「あのとき、時間を作って良かったな」と強く思いました。
そんな新家が「仕事で何を意識しているのか」を聞いてみました。
「相思相愛」であることが大事だと思います。一方的に想うだけではもちろん駄目ですし、想われていても応えることができなかったらそれは相思相愛ではないですよね。
お互いに思っていることをしっかりと伝え合うということが大事なのかなと考えています。