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OKRとは?KPIやMBOとの違いや導入するメリットを解説

公開日:2024.04.26

企業の課題

企業が高い目標を設定し、チームや社員一人ひとりがその目標を達成するために一丸となって生産性を向上させる管理手法を「OKR」といいます。OKRには留意点もあり、有効に導入できないとかえって社員のモチベーションに影響を及ぼすリスクも招きかねません。本記事では、OKRを導入するメリットや失敗を回避するためのポイントをわかりやすく解説します。また、類義語であるMBOやKPIとの違いも説明していますので、合わせてご確認ください。

OKRとは

「OKR(Objectives and Key Results)とは、組織が設定する「目標」と「主要結果指標」を結び付け、企業の方向性を明確にする目標管理方法のことを指します。

OKRの仕組み

OKRの基本

OKRは具体的に、「目標」と「主要結果指標」を設定し、進捗確認や評価をしながら達成や生産性アップを目指していきます。企業、部門チーム、個人の階層ごとにOKRを設定することで、企業全体で同じ課題に取り組むことができます。

Objectives(目標)

Objectivesは「目標」を意味し、OKRでは覚えやすく共有しやすい定性的な目標を指します。

Key Results(主要結果指標)

Key Resultsは「主要結果指標」を意味し、OKRでは数値化された定量的な指標を指します。
この二つの単語を組み合わせた言葉(Objectives and Key Results)を略して「OKR」と呼ばれています。

OKRの歴史

OKRは1970年代に多くの大手企業で導入され始めました。また、OKRには「自社目標の明確化が可能である」「目標設定時間の短縮ができる」「仕事の優先順位の明確化が可能になる」「エンゲージメントの向上が期待できる」という導入メリットがあり、それらは注目される要因の一つです。

OKRと類義語の違い

OKRの類義語として、「MBO」と「KPI」があります。目標管理や達成管理の指標であるMBOとKPIの特徴を、OKRとの違いと合わせて紹介していきます。

MBOとの違い

MBO(Management by Objectives)は、設定された目標に対する達成度を社員個人で管理する手法です。OKRは組織がより高い目標を達成するために用いられますが、MBOの主な目的は1年ごとの業績に基づいて社員を評価することです。また、MBOは社員の報酬を決定する際にも使われ、OKRよりも評価制度としての側面を持ちます。対して、OKRは報酬の決定に使われません。

OKRは最初から目標設定を高くしているため、60~70%程度の進捗率が期待されます。一方でMBOは報酬の決定に用いられるため100%の成果が理想とされています。

レビューサイクルはOKRが1ヶ月に一度もしくは四半期に一度の頻度で評価されるのに対し、MBOは半年ないし1年に一度の評価となります。つまり、OKRのほうが評価や軌道修正のサイクルが短くなる傾向にあります。

KPIとの違い

KPI(Key Performance Indicator)は、目標達成に至るまでのプロセスをチェックする途中指標です。KPIを設定することによって、目標達成までの業務プロセスが適切に実施されているかを可視化できます。一方のOKRは企業全体の方向性を明確にする手法で、目標達成までの途中指標を指すKPIとはそもそも役割が異なります。

OKRは企業全体を一つの単位とし、1ヶ月に一度もしくは四半期に一度の頻度で目標設定を見直し、60〜70%の達成率を目指します。一方のKPIはプロジェクト単位で設定されるため、レビューサイクルもプロジェクトによって変動します。また、達成することが主眼のため現実的な数値が設定されており、達成率100%が理想です。

規模 目的 定量的 / 定性的 評価サイクル 達成水準
OKR 企業全体 高めの目標を設定し、企業全体で目標を共有する。 定量的・定性的 1~3ヶ月 60〜70%
MBO 社員個人 1年の業績に基づいて社員を評価する 定量的・定性的 半年ないし1年に一度 70~100%
KPI プロジェクトごと 目標達成までのプロセスが適切に行われているのかをチェックする。 定量的 プロジェクトにより変動 70~100%

OKRを導入するメリット

OKRを導入する背景には、4つのメリットがあります。それぞれのメリットについて説明します。

自社目標の明確化が可能

OKRは企業全体の目標を設定するだけでなく、個人や部門チームレベルでも目標設定が可能です。企業としての目標と階層ごとの目標がリンクするので、企業が目指す方向を社員全員が共有できるようになります。企業のビジョンが社員に浸透することにより、社内に一体感が生まれやすくなります。

目標設定時間の短縮

OKRで設定する目標はシンプルかつ明確であるものが前提です。また、1~3ヶ月という短いサイクルで目標を分析し、主要な成果を定めるため、迅速かつ効果的に目標設定を行えるというメリットがあります。さらに、企業全体の方向性を定めた際、その意図や戦略は社内に伝達しやすくなります。

仕事の優先順位の明確化が可能

OKRでは会社全体の目標に対し、部門チームや個人一人ひとりの目標を段階的に落とし込んでいきます。つまり、個人レベルの仕事が企業全体の目標に直結し、どんな行動をすれば目標を達成できるか考えることを可能にします。その結果、仕事の優先順位がつけやすくなり、重要な業務から取り組めるようになります。

エンゲージメントの向上

OKRによって、企業の目標を全体で共有することができます。目標達成に向けて一人ひとりが取り組むべき業務も明確になり、「自分のはたらきが求められている」という実感が得られやすくなります。自分の仕事が企業の目標達成にどんな意義があるか感じやすくなれば、社員のエンゲージメントの向上につながるでしょう。

OKRを導入する際の留意点

OKRを導入する際にはメリットだけでなく留意点を把握しておくことも大切です。ここではOKRの留意点について具体的に解説します。

定着や運用に手間や時間を要する

OKRは、挑戦的な目標を設定して60~70%の達成率を期待する手法です。100%の達成率を目指す従来の管理手法から大きく変更するため、仕組みの説明など導入にはかなりの時間を割く必要があります。また、短いサイクルで定期的な進捗確認や評価が必要となるため、運用には手間がかかることにも留意が必要です。

社員のモチベーションが低下する可能性がある

60~70%の達成率で成功という高い目標を設定するため、100%の達成率を目指す従来の手法に慣れている社員にとっては「目標達成の難易度が高すぎる」とストレスを感じ、意欲に影響を及ぼす可能性があります。OKRを導入する際は60~70%の達成率でよいこと、高い目標に一丸となって取り組む挑戦的な姿勢に価値があることを伝え、モチベーションの低下を防ぎましょう。

OKR導入から運用までの流れ

ここからは、OKRの導入から運用までの手順をご紹介します。一連の流れを理解することで、よりよい目標を立てられる可能性が高まります。

企業OKRを設定する

最初に企業のOKRを設定します。基本的には一企業につき一つのOKRがよいとされています。ただし、一つの企業で異なる性質の複数の事業を行っている場合は、事業ごとにOKRを設定するのもよいでしょう。

企業OKRは組織の全体像を示す必要があるため、経営陣からのトップダウンで設定するのではなく、社員の意見やアイデアを取り入れたボトムアップで設定しましょう。その方が誰もが納得でき、企業全体のモチベーションアップにつながるので効果的です。

部門やチームOKRを設定する

最初に決定した企業OKRに基づいて、次に部門やチームOKRを設定します。この際、組織全体の目標を達成するために企業OKRと連動したOKRにすることがポイントです。それと共に、チームメンバーが納得できるOKRでなければなりません。企業OKRと同じく、個人の意見やアイデアを取り込むボトムアップ形式で設定すると、社員の納得感を高めることができます。

個人OKRを設定する

企業OKR、チーム(部署)OKRを踏まえて、最後に個人OKRを設定します。企業全体のOKRを念頭に置くことで、組織全体の一貫性を保つことができます。上長や他のメンバーと相談しながら、お互いに納得したOKRを設定することが重要です。

定期的に進捗確認を行う

定期的にミーティングを開き、OKRの進捗を定期的に確認します。必要に応じて調整を行うことで、達成率がアップします。また、OKRの中間地点では全体的な「中間レビュー」も行います。この時点で進捗に遅れがあれば改善点を議論し、もし軌道修正が必要ならば目標を変更することも可能です。状況に応じ、臨機応変に対応します。

OKR期間終了時に採点を行う

OKRの期間終了後、最終的な結果を評価します。目標達成の度合いを数値化し、このスコアが60〜70%程度であれば成功と評価されます。達成度が低過ぎた場合は原因を分析します。設定した目標が高過ぎた可能性もあるので、同じ目標を続けるか別の目標に切り替えるか、今後に向けて策を練ります。達成度が高過ぎた場合、次回はもう少し高い目標を設定することも検討します。

次期OKRの設定をする

最終レビューをもとに、次期OKRの設定をします。当期OKRの目標が未達だった場合、要因を分析した上でより精度の高いOKRを設定することが求められます。次期OKRの設定をする際は、企業OKRの設定から始め、段階的に個人OKRの設定まで落とし込んでいきます。

OKRを導入して社員のエンゲージメントの向上を図る

OKRを導入すれば、企業全体の目標を個人レベルまで共有することが可能となります。目標達成のために社員がそれぞれの役割を果たし、組織として同じ方向を向いてはたらくことができます。その結果、日々の業務が効率化できたり、モチベーションやエンゲージメントを高めやすくなったりもするでしょう。

また、OKRの類義語としてMBOとKPIがあります。目標に対する成果をもとに判断し、人事評価にも活用できるのがMBO、現状の業務プロセスのチェックと改善に重きを置くKPIです。これらの指標とOKRは目的や評価サイクル、達成水準など、さまざまな点で違いがあります。それぞれを理解した上で、自社の目的や課題に合わせて導入を検討してみてください。

OKRと比較されやすいコンピテンシーについては、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>コンピテンシー評価とは?4つのメリットと留意点を解説

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