理系キャリアQ&A
SMOとは?主な業務も解説!
薬の開発の最終段階では、病院で医師が実際の患者さんに開発中の薬を投与して、効果や安全性を見る臨床試験(治験)が行われます。治験を行う医療機関に入り、治験が安全に、かつ期限通りに完了するようにサポートする企業のことをSMOと呼んでいます。
治験において医療機関をサポートするSMO
くすりの開発の最終段階として、ヒトへの影響を調べる治験(臨床試験)があります。動物実験だけでは、人間への効果や安全性(副作用の有無、適正な有効成分の量、投与期間など)が分からないためです。(臨床試験についてはコチラをご参照ください。)
治験は実際の患者さんを対象に行うため、患者さんの人権と安全が最優先に守らなければなりません。そのため、治験を実施するにあたっては、製薬会社はもちろん、治験を実施する医療機関(治験実施施設)にも、守るべき要件や手順が世界基準で定められています。これをGCPと呼びます。具体的には、治験事務局という治験専門の事務局の設置や、治験を評価する機関(治験審査委員会)の設置などが規定されています。また医療機関が作成・保管するべき書類や記録、データも非常に膨大です。診療だけでも多忙な医師が、GCPが求めている手順に則って患者さんに対応しつつ、膨大な文書を作成し、さらに治験期間中、数年にわたって保管・管理することは現実的には非常に難しく、誰かのサポートが絶対に必要です。そして、その役割を担うのがSMOなのです。
SMOの主な業務
SMOでは主に4つの業務を実施しています。1.治験開始までの医療機関のサポート、2.治験実施中の医療機関のサポート、3.IRB(治験審査委員会)の設立と運営のサポート、4.CRC(治験コーディネーター)の育成と医療機関への派遣です。
(1) 治験開始までのサポート
医療機関ごとにSOPと呼ばれる手順書を作成します。また、GCPに定められた書類の書式を整えたり、治験を実際に行う医師や、医師の補佐をする看護師・薬剤師といった治験に協力するスタッフへの説明やGCPの周知等を行います。
(2) 治験中のサポート
院内に治験事務局を立ち上げ運営します。治験に関わるあらゆる情報を集約し、進行状況を管理し、製薬会社との窓口となります。
(3) IRB(治験審査委員会)設立と運営
IRBは中立的な立場で治験の倫理性・安全性、科学的妥当性を審査する組織で、委員会は定期的に開催されます。
SMOはIRBの設立のサポートや、委員への会議招集、資料作成、議事録などの記録の作成を行います。
(4) CRC(治験コーディネーター)の育成と医療機関への派遣
医療機関の中で、医師をサポートし治験を円滑に進める要となるのが、治験コーディネーター(CRC:Clinical Research Coordinator)と呼ばれる専門職です。治験に参加可能な患者さんの選定や、治験薬についての説明の補助、来院日などのスケジュール管理、投与経過の記録の管理などを行います。医療機関に所属するCRCもいますが、専任のCRCを置けない小規模なクリニックや、マンパワーが不足している医療機関には、SMOから派遣されたCRCが現場に入り業務を行います。看護師や薬剤師等、医療の専門知識を持つ方が多く、患者さんをはじめ、医師や製薬会社の担当者と信頼関係を築きながら治験の成功に貢献しています。
サポート対象が異なるSMOとCRO
このように治験に深く関わっているSMOですが、よくCROと混同して認識されることがあります。お伝えしてきたように、SMOは治験を実施する医療機関をサポートします。CROはサポートする相手が製薬会社になります。そのため、治験への関わり方、そして業務自体も異ります。
CROについて詳しくは「CROとは?」を参照ください。
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