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(情報掲載日:2020年1月10日)


新年を迎え、2020年代に突入しました。2020年代はさまざまな人材問題が深刻化するといわれています。中小企業に時間外労働の上限規制が適用され、新たな職場体制を考える必要があります。人数の多い団塊ジュニア世代の社員は50代に入り、ポスト不足や人件費増加の問題が発生。IT分野ではIT人材の不足および高齢化の問題が本格化します。これらの問題の概要、そして企業に求められる心構えについて解説します。

●2020年4月より、中小企業にも時間外労働の上限規制


働き方改革関連法は2019年4月より順次施行されており、2020年4月には大企業に続いて中小企業にも時間外労働の上限規制が適用されます。企業で働く人の約7割が中小企業の従業員であり(※1)、大企業への適用以上に多くの人が今回この規制の対象となります(※2)。これにより企業においては時間外労働が制限される働き方が一般的になります。

大企業および中小企業で働く従業員数

(中小企業庁「2017年版中小企業白書 概要」より
※データ:総務省「平成26年経済センサス−基礎調査」再編加工 ※1)

時間外労働の上限規制

時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができなくなります。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも以下を守らなければなりません。
・時間外労働が年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月当たり80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度

(厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」を参考に作成 ※2)

これから中小企業に求められるのは正確な労働時間の把握です。いつ誰がどのくらい時間外労働の上限を超えているかを把握したうえで、削減への対策を講じなければなりません。時間外労働が発生する理由は人材不足と生産性の低さ、顧客からの多大な要求への対応などであり、社員の定着率・満足度の向上、生産性の向上、スキルアップ環境の整備、仕事の進め方の見直しなどが求められます。

●2021年に団塊ジュニア世代が50代に突入。ポスト不足と人件費増大が目前

多くの企業で社員全体に占める割合が大きい、バブル期入社組・団塊ジュニア世代(1971年〜1974年生まれ)と呼ばれる社員は、2021年には47歳〜50歳を迎えます。いよいよ賃金水準のピークとなる50代前半が目前に迫ることで、企業はポスト不足、賃金のピークに対する準備が必要になります。対策としては中長期的な視点を持って雇用・賃金体系を検討し、各年代が納得できる雇用・賃金体系の確立が不可決です。若手のモチベーションに配慮した処遇や配置、キャリア構築の支援なども求められます。

●2025年頃に団塊世代すべてが後期高齢者に。介護離職の増大への不安

団塊の世代(1947年〜1949年生まれ)は2025年頃までにすべてが後期高齢者(75歳以上)に達します。厚生労働省の推計(※3)によれば2025年には介護人材(介護施設や訪問介護で働く者)が37.7万人不足するといわれており、団塊ジュニア世代をはじめとする団塊世代の家族やその周辺に、介護離職の不安が増すことが予想されます。企業には社員の介護離職を防ぐ方策を整備することが求められます。気兼ねなく介護について話ができる職場環境をつくり、利用できる介護制度や措置を周知。いつでも介護制度が使えるよう利用のハードルを下げる環境づくりが必要です。

※1:中小企業庁「2017年版中小企業白書 概要」
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/PDF/h29_pdf_mokujityuuGaiyou.pdf

※2:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf

※3:厚生労働省「2025 年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12004000-Shakaiengokyoku-Shakai-Fukushikibanka/270624houdou.pdf_2.pdf


●2020年にIT人材の不足数は30万人に。技術者の高齢化も課題

経済産業省は、IT人材の不足は2018年で22万人、2020年には30万人に達すると試算しています(※4)。ここでのIT人材とは、平成 27 年国勢調査における IT に関する職業である「システムコンサルタント・設計者」「ソフトウェア作成者」「その他の情報処理・通信技術者」を指します。
IT人材の不足数に関する試算

※試算は需要の伸びが年平均2.7%程度、労働生産性が年0.7%上昇の中位シナリオの場合
(経済産業省「IT人材需給に関する調査(2019年3月)」より ※4)

IT人材の年齢構成は、1980年代は20〜30代が中心でしたが、2000年以降は40代以上が半数を占めるようになり、IT人材の高齢化も問題となっています。若い世代のエンジニア育成が進んでいないことも要因の一つです。背景にはエンジニアの新規求職者数の減少問題があります。エンジニアの新規求職者数(月間平均)は平成21年度と平成30年度を比べても大きく減っています(※5)。

エンジニアの新規求職者数(月間平均、全国)

(厚生労働省「職業安定業務統計」「労働市場分析レポート 第61号」より作成 ※5)

新規求職者数が減った理由としては労働時間が長いイメージがあることが挙げられます。厚生労働省「平成29年度働き方改革ハンドブック情報通信業(情報サービス業編)」によれば、情報サービス産業は他の業種と比べて、年間総実労働時間が長く、週の労働時間が60時間以上の雇用者の割合が高い産業となっています(※6)。そのため、企業ではテレワークなどの柔軟な勤務形態の導入や外国人人材の積極的な活用など、従業員の定着を図ったり、新たな労働力を加える工夫が求められています。

「2025年の崖」が迫る。最大12兆円の経済損失の可能性

経済産業省「DXレポート」(※7)では、ITシステムにおける「2025年の崖」が危惧されています。2025年には21年以上稼働するレガシーシステム(古いシステム)がシステム全体の6割を占めると予測され、約8割の企業がレガシーシステムを抱えています。これによる経済損失(データ損失やシステムダウンなどのトラブルによる損失)は2025年以降、年間で最大12兆円(現在の約3倍)と推定されています。背景にあるのは、古いシステムを知る技術者の退職やサポート終了などによるリスクの高まりです。現状においてIT人材が不足する中、レガシーシステムの保守・運用にIT人材が割かれており、人材資源の浪費につながっています。企業では早期にシステムのチェックを行い、必要があればシステムの再構築に着手すべきです。

東京オリンピック・パラリンピックに向けたAI開発が盛んに。新たな職種も生まれる

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、AIなどの人工知能の開発や導入に向けたさまざまな試みが進められています。AIによる混雑緩和システム、競技の採点、案内ロボット、無人のロボットタクシー、警備ロボット、AI搭載の監視カメラ、監視ドローンなど、多くの仕事でAIが活用されつつあります。こうしたAIの進化により仕事の内容が変わったり、新たに生まれる職種もありそうです。例えば、製造現場ではAIに仕事を教える職種が必要になります。単純作業やデータを扱う仕事はAIが行っても、そのデータや結果をアウトプットする仕事は必要です。AIの活用の仕方を考えるデータサイエンティスト、AIエンジニア、AIプランナーといった新しい職種も生まれます。どんなにAIが進歩してもAIを活用するのは人です。新たなスキル習得など個々のスキル向上を目指していくことが重要になるでしょう。

※4:経済産業省「IT人材需給に関する調査」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/gaiyou.pdf

※5:厚生労働省「職業安定業務統計」「労働市場分析レポート 第61号」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/114-1b.html
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000110648.pdf

※6:厚生労働省「平成29年度 働き方改革ハンドブック情報通信業(情報サービス業編)」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/it/pdf/background.pdf

※7:経済産業省「DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf

●「人材は有限」と認識し、未来のリスクを想定して活動すべき

労働力人口の減少、働き方改革の推進が進む中、企業は限られた労働力で事業を行っていかなければなりません。十分な労働力を確保しつづけるには、外部からの採用はもちろん、既存の社員が長く働ける環境を整備する必要があります。そのうえで、将来を見据え起こりうることを予測して、今何が不足しているかを把握する。人材確保については、こうした慎重さがより求められるでしょう。

企業に求められる人材活用の視点

・慣習にとらわれず、社会の変化をよく見て迅速に対応できる組織づくり
・評価を明確にし、企業に貢献する社員が満足して働ける公正な制度の確立
・テレワークなど柔軟な勤務形態を導入し、社員の負荷を減らすことに配慮した長期雇用
・多くの人数が退職となる団塊ジュニア世代以降を見据えた社員の育成
・多様なキャリア構築を支援し、「この会社で働くこと」への魅力づくり
・将来において自律的な成長が期待できる若手人材の確保
・外国人人材の積極活用による、社内のグローバル化
・AI導入の促進、テクノロジー人材の活用による業務効率化

2020年代は人材面からいえば変化の激しい、厳しい時代になります。予測できる多くの問題に対し、企業は対策を後回しにせずに手を打てるかどうかが問われるでしょう。企業は現状の人員に対し、長く最大限に活躍してもらえる環境を整え、同時に自社に合う新たな人材を探していくことが求められます。

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