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(情報掲載日:2019年11月11日)


平成30年度の厚生労働省の調査によれば、民事上の個別労働紛争における「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は過去最高を記録。令和元年6月にはハラスメント防止対策の強化に向けた法律が公布されました。企業にはハラスメントの現状を知り、予防や解決の努力が求められます。ハラスメントの現状、および求められる対策について解説します。


ハラスメントとは相手に対して行ういじめや嫌がらせのことです。厚生労働省では職場におけるハラスメントの類型として、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメントを提示しています。

●パワーハラスメント

同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させる行為を指します。これまで法的な定義はありませんでしたが、令和元年6月に労働施策総合推進法が改正され、職場でのパワーハラスメントを防止するために企業に相談窓口の設置などの防止策が義務づけられました。

労働施策総合推進法第30条2

事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。


厚生労働省が発表した「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」※1では、ハラスメントになりうる行為として以下の例が紹介されています。職場での優位性と言うと、上司から部下へのいじめや嫌がらせを指す場合が多いですが、パワーハラスメントは先輩・後輩間や同僚間、部下から上司に対して行われる場合もあります。判断基準としては「職場の地位や優位性を利用しているか」「業務の適正な範囲を超えた指示や命令を行っているか」「相手に精神的苦痛を与えているか」「職場環境を害しているか」といった点が問われます。

職場におけるパワーハラスメントの例示

(厚生労働省「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」より作成 ※1)

●セクシャルハラスメント

職場において、意に反する性的な言動や接触が行われ、拒否したことで不利益を受けたり、職場の環境が不快なものとなることを指します。概念は男女雇用機会均等法11条1項に定められており、事業主は当該者の相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備などの措置を講じなければなりません。セクシャルハラスメントは起因によって対価型と環境型に分けられます。

男女雇用機会均等法11条1項

事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。


セクシャルハラスメントの類型

(厚生労働省「職場におけるハラスメント対策マニュアル」より作成 ※2)

●マタニティハラスメント

妊娠・出産・育児休業などを理由とする事業主からの不利益な取扱いを指します。マタニティハラスメントは男女雇用機会均等法や育児・介護休業法において禁止されており、事業主は、法律に基づき妊娠・出産、育児休業、介護休業等に関する上司・同僚からの職場でのハラスメントの防止措置を講じなければなりません。

男女雇用機会均等法第9条第3項(抄)

事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、その他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。


育児・介護休業法第10条

事業主は、労働者が育児休業の申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。


●ハラスメント防止対策の強化に向け法律改正

政府も企業に対しハラスメント防止対策の強化を推進しています。令和元年6月5日にハラスメント防止対策の強化を盛り込んだ「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」※3を公布。改正により企業に対しパワーハラスメント防止対策の雇用管理上の措置が義務化され、労働者がハラスメントを相談したことによる不利益な扱いが禁止されました。

ハラスメント防止対策の強化に関する改正の概要
◎施行期日:公布日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日。ただし、中小事業主は公布日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日までは努力義務。
(厚生労働省 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案の概要 ※3より)

※1:厚生労働省「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000025370-att/2r9852000002538h.pdf

※2:厚生労働省「職場におけるハラスメント対策マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000181888.pdf

※3:厚生労働省 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案の概要 https://www.mhlw.go.jp/content/000486033.pdf

●「いじめ・嫌がらせ」の相談件数が過去最高に

厚生労働省は平成24年3月に「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」をまとめ、企業に対しパワーハラスメントの認知を働きかけてきました。しかし、民事上の個別労働紛争における「いじめ・嫌がらせ」の相談件数はそれ以降も増え続け、平成30年度に過去最高を記録。同年度の助言・指導の申出件数、紛争調整委員会によるあっせんの申請件数でも「いじめ・嫌がらせ」が過去最高となりました。

民事上の個別労働紛争における「いじめ・嫌がらせ」の相談件数

(厚生労働省「平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況」より作成 ※4)

●ハラスメントが起きる職場の特徴とは

ハラスメントが発生している職場には、いくつかの共通した特徴が見られています。厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」※5によれば、パワーハラスメントに関する相談があった職場に当てはまる特徴では、「上司と部下のコミュニケーションが少ない職場」45.8%、「失敗が許されない・失敗への許容度が低い職場」22.0%、「残業が多い・休みが取りづらい職場」21.0%、「正社員や正社員以外(パート、派遣社員など)などさまざまな立場の職員が一緒に働いている職場」19.5%が上位となっています。社員間でのコミュニケーションが少ない、または不足しており、日々の仕事に余裕がなくなっている職場にハラスメントは起きやすいといえるでしょう。

パワーハラスメントに関する相談があった職場に当てはまる特徴(複数回答)


(厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」(平成28年度)より作成 ※5)

※4:厚生労働省「平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況」
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000521619.pdf

※5:厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」(平成28年度)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000165752.pdf

●企業における予防策の実施状況

企業はハラスメントに対して、さまざまな予防策を実施しています。厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」※5によれば、パワーハラスメントの予防に向けて実施している取組では「相談窓口を設置した」82.9%、「管理職を対象にパワーハラスメントについての講演や研修を実施した」63.4%、「就業規則などの社内規定に盛り込んだ」61.1%、「一般社員等を対象にパワーハラスメントについての講演や研修会を実施した」41.2%が上位となっています。

パワーハラスメントの予防に向けて実施している取組(複数回答)

(厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」(平成28年度)より作成 ※5)

●行うべきハラスメント対応策

ハラスメントに向けて企業が取るべき対応策には次のようなものがあります。ハラスメント排除を明確に示し、発生の予防に向けて相談の窓口を設置し、解決への対応、再発防止を図ります。

企業が行うべきハラスメント対応策



●未然に防ぐための攻めの対応策

申告を待つのではなく、ハラスメントを未然に防ぐために積極的な対応をしている企業もあります。具体例としては「四半期ごとにハラスメント容認の風土がないかを調査」「ハラスメントの目撃者には通報の義務」「部署ごとに行動指針リーダーを任命」などです。表面化しにくい内容であるだけに、企業がより積極的なヒアリングの姿勢を見せることが大切といえます。

ハラスメントは社員が一人で悩んでいても解決することはできません。企業は相談しやすい仕組みを設けて、発生を早期に把握する体制づくりが求められます。実例を経てどのケースが起こりやすいかを検証すれば、予防強化を図ることができます。自社にどんなハラスメントがあり、どのケースが問題化しやすいのか。自社の傾向を知ることが対策の第一歩になるといえるでしょう。

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