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(情報掲載日:2019年8月19日)


企業のダイバーシティや女性活躍の推進、コミュニケーションの促進において、「アンコンシャス・バイアス=無意識の偏見」の存在が注目されています。他者への無意識の偏見があると、そこに決めつけや思い込みが生まれ、人間関係を悪化させてしまいます。どうすればアンコンシャス・バイアスを克服できるのか、その方法について解説します。

●決めつけや思い込みが、組織や個人に問題をもたらす

アンコンシャス・バイアス(Unconscious Bias)とは、個人の過去の経験、取り巻く環境や性別、年齢、人種などを根拠として、個人が無意識に持ってしまう偏見や固定観念を指します。社員が「あの人は○○だから」「こうするのが普通だ」といった決めつけや思い込みをすることで、組織や個人に次のような問題を引き起こします。例えば、上司に決めつけや思い込みがあると、部下は上司の顔色をうかがいながらそれに応じた行動を取るようになります。その結果、退職者や休職者が増えたり、社員の成長機会が奪われるといった事態を招くこともあります。

アンコンシャス・バイアスが引き起こす問題

(守屋智敬『「アンコンシャス・バイアス」マネジメント 最高のリーダーは自分を信じない』かんき出版を参考に作成)

●埼玉県職員調査に見られた性差による役割分担意識

では実際の組織にどのようなアンコンシャス・バイアスがあるのでしょうか。2018年10月に埼玉県人事委員会が「埼玉県職員における『仕事に対する性差の影響について』 〜無意識の決めつけ・偏見の存在〜 に関する調査」(※1)を行っています。この調査の設計及び分析は、東洋大学理工学部准教授である小島貴子氏の助言を受け実施されました。質問に対する男女の肯定率をみると、差があるものは次のような質問でした。

仕事に対する質問における肯定率(「そう思う」「まあそう思う」と回答した割合)
(埼玉県人事委員会「埼玉県職員における『仕事に対する性差の影響について』 〜無意識の決めつけ・偏見の存在〜 に関する調査結果」2018年10月より ※1)

結果をみると、性差による役割分担の意識が見られ、実際の仕事面にも影響していることがわかります。データでは男女とも年代が上がるにつれて、性差による役割分担の意識への肯定率が上がる傾向がみられており、世代ごとに育った時代の影響があることもうかがえます。埼玉県庁では対策として、女性活躍に向けた女性職員を中心とした研修に加えて、県庁組織全体で性差による役割分担が論理的でないという意識を浸透させる活動を行っていくとしています。

近年、アンコンシャス・バイアスが起こる背景としては、男女格差、年代格差、ダイバーシティやグローバル化の推進、組織内にさまざまな働き方が混在する状態などの問題が指摘されており、それらが採用や評価、育成といったタレントマネジメントや個々の待遇に影響したり、ハラスメントの発生につながっています。

※1:埼玉県人事委員会「埼玉県職員における『仕事に対する性差の影響について』 〜無意識の決めつけ・偏見の存在〜 に関する調査結果」(2018年10月)
https://www.pref.saitama.lg.jp/e1901/jini-gaiyou/documents/houkoku20181017.pdf

●根底にあるのは自己防衛

こうしたアンコンシャス・バイアスは一体どこから生まれてくるのか。小島貴子氏はアンコンシャス・バイアスが生まれる背景をもとに、バイアスを5つに分類しています。これらのバイアスの根底にあるものは自己防衛の意識です。人は自分の優位性やコンフォートゾーン(自分が楽で安全な場)ができたときにそれを守ろうとします。そして、自分でも意識しないうちに偏見を持ち、それに対して「自分は無自覚な状態(あえて考えないようにする状態)であるほうがいい」と思うようになり、そうした意識が日常化していくのです。アンコンシャス・バイアスは無意識に生まれるものだからこそ問題は根深いといえます。

背景をもとにしたアンコンシャス・バイアスの種類

(日本の人事部「HRカンファレンス2019-春-」講演より参照)

●具体的に脳にはどのような傾向があるのか

人には200以上のアンコンシャス・バイアスが存在しているといわれています。それほど、人の脳には思い込みや決めつけの傾向が強く存在するということです。その中で、職場の人間関係や仕事に影響するアンコンシャス・バイアスを挙げると次のようなものがあります。企業や組織といった集団の中にいることにより、個人の自己防衛意識が強まり、さまざまなアンコンシャス・バイアスを生んでいます。

職場の人間関係や仕事に影響するアンコンシャス・バイアス
(守屋智敬『「アンコンシャス・バイアス」マネジメント 最高のリーダーは自分を信じない』かんき出版を参考に作成)

●アンコンシャス・バイアスに関する認知テストやアンケートの実施

アンコンシャス・バイアスを社員に気付かせるには、具体例が明示されている認知テストやアンケートを実施することが効果的です。認知テストやアンケートには専門の企業が提供するものがさまざまあります。具体例を示しながら、何がアンコンシャス・バイアスなのかを確認していく行為は、無意識の決めつけや偏見に気付くチェックリストとなります。また、埼玉県職員の調査例からわかるように、こうした調査によってアンコンシャス・バイアス傾向や度合いを知ることができ、克服の手立てを考える材料にもなります。

●社内研修、トレーニングの実施

ディスカッションやロールプレイングを通して、アンコンシャス・バイアスについて互いに話し合うことも効果があります。例えば、ロールプレイングでは「小さな子どもがいる女性社員に出張を命じる」といった事例を挙げて、それをどう感じたかを発表していきます。ディスカッションでは「自身を振り返り、アンコンシャス・バイアスだと思う行為を挙げていく」など、さまざまなシチュエーションに対し、普段どのようなアンコンシャス・バイアスが存在しているかを話し合います。個々がどう感じたかを話していくだけでも、職場のムードは変わっていきます。

●アンコンシャス・バイアスと思われる言葉を記録

仕事の中でアンコンシャス・バイアスに関わるような言葉があればメモしておき、定期的に話し合う場を設けることも効果的です。人はあらためて文字にして示されると、物事の重要さに気付きやすくなります。アンコンシャス・バイアスについて普段から気軽に話すことで共通言語化していくことができます。

アンコンシャス・バイアスは個人に生まれるものですが、そのバイアスが定着し、日常化してしまう大きな要因は組織にあります。一人の社員が「あの人は○○だから」「こうするのが普通だ」といった決めつけや思い込みを示し、他者も同様の行動を取っていると皆が当然のことと思うようになってしまいます。個人のアンコンシャス・バイアスが全体に影響してしまうだけに、職場のアンコンシャス・バイアスの克服には、互いがその存在に気付き、共通して取り組むべき問題であると認識する必要があるのです。

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