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(情報掲載日:2019年5月10日)


厚生労働省の調査によると、管理職への昇進について半数以上の人が「昇進したいと思わない」と回答しており、将来のなり手不足が危惧されています。どうすれば社員に管理職になりたいと思ってもらえるのか。また、管理職に適した人を育成できるのか。これから管理職の候補人材を確保していくための手法について考えます。

●「責任の重さ」「業務量の多さ」が大きな障害に

厚生労働省が、働き方の多様化に応じた人材育成の在り方についてまとめた「平成30年版 労働経済の分析」で、管理職への昇進についての調査結果が紹介されています。役職に就いていない社員に昇進への考えについて聞いたところ、「管理職に昇進したいと思わない」と回答した人は61.1%。およそ3人のうち2人は管理職になりたくないと答えています。昇進を望まない理由(複数回答)について聞いたところ、半数を超えた項目は「責任が重くなる」「業務量が増え、長時間労働になる」「現在の職務内容で働き続けたい」「部下を管理・指導できる自信がない」でした。「責任が重くなる」「現在の職務内容で働き続けたい」など働き方に対する個人の意思に基づく理由のほか、「部下を管理・指導できる自信がない」といった雇用管理や能力開発に関連する難しさが挙げられています。

これらの背景にあると考えられるのが、若手が少なくなり、組織がフラット化している企業における人員構成の変化です。管理職昇進に向けたプレ・マネジメント経験が積みにくく、管理職になるための支援が行いにくくなっています。加えて近年は、専門職志向やワークライフバランスの重視といった志向の変化も見られ、管理職という仕事の魅力が薄れている現状があります。

管理職への昇進の希望

(厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析−働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について− 第U部第3章第3節」より ※1)

管理職への昇進を望まない理由(複数回答)

(厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析−働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について− 第U部第3章第3節」より ※1)

●管理職になるメリットは、個人としての幅広い成長

では管理職になることで得られるものとは何か。管理職となって、個人としての成長が望める点は、自身の次のステップを考えるうえで有効といえます。このような点をいかに理解させるかが、管理職人材の育成では重要になります。管理職になるメリットには次のようなものがあります。

管理職になることのメリット

・給与がアップする
・権限が大きくなり、自由裁量の余地が増える
・チームや部下の成長により、モチベーションが感じられる
・仕事に対する目線が高くなり、これまで見えなかった企業や仕事の全容が見える
・社員としてステップアップとなり、自身の社会的価値も上がる
・役職が付くことで社会的信用が得られる



●業務は高度化しながら、対応できる人材は不足

企業が管理職の登用・育成に当たり、感じている課題は何か。上位は「管理職候補者の能力・資質にムラがある」49.1%、「内部人材の多様化が進み、管理職に求められるマネジメント能力の水準が高まった結果、管理職の業務負担が増えている」46.9%、「管理職に就くことを希望しない若年者が増えている」38.7%となっています。求められるマネジメント能力は高度化しながら、管理職候補者に能力・資質のムラがあり、人材不足により、なり手が少ないことがうかがえます。

企業が管理職の登用・育成に当たって感じている課題

(厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析−働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について− 第U部第3章第3節」より ※1)

●絶対数が少ない中、先細りになりつつある候補者育成

では、企業はどのように管理職人材の育成を行っているのか。調査によれば上位は「特別なプロジェクトや中枢部門への配置など重要な仕事の経験を積ませる」58.2%、「選抜型研修に優先的に参加させる」56.7%、「多様な経験を積ませるための優先的な配置転換」52.5%、「経営実務に関する知識を積極的に習得させる」46.4%となっています。選んだ候補者に対し、優先的に指定した経験を積ませる手法が多いといえますが、そのやり方に固執していては数的・質的に追い付かなくなっていく危険性があります。

企業が実施している管理職の育成方法

(厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析−働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について− 第U部第3章第3節」より ※1)

※1:厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析−働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について− 第U部第3章第3節」
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/18/dl/18-1-2-3_03.pdf

(参考:労働政策研究・研修機構「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査(正社員調査票)」2018 年
https://www.jil.go.jp/institute/research/2018/documents/184.pdf)

では社員に「管理職になりたい」と思わせるにはどうすればよいか。そのためにはこれまでの登用・育成法を見直し、「管理職のよさを再認識してもらう」「管理職の仕事のイメージを変えてもらう」、また、「管理職の業務を削減する」ことが求められるでしょう。

●仕事体験により管理職のよさを理解。同時に適性を確認

立教大学経営学部教授の中原淳氏が、管理職に対し「実際に管理職になってみてどう思ったか」という調査を行っています。「管理職になってよかった」と感じている人は約7割。昇進を望んでいなかった人でも約6割が「よかった」と答えています。これは管理職になると自身の裁量が増すことにより、「管理職も悪くない」という思いに変わったと推測されます。そこで管理職の仕事のしやすさや面白さを理解してもらうために、社員が管理職の業務を実際に体験するトライアルの機会を設ける施策が有効と考えられます。加えて、管理職候補は誰でもいいというわけではなく、誰が適任かを見極める必要があります。この点においても事前にトライアルを行うことは、本人の管理職への適性もみることができるため、適任者を選ぶ施策としても有効です。

●管理職の業務を削減し、忙しいイメージを変える

管理職における「忙しさのイメージ」が、なり手不足の要因のひとつとなっています。実際、多くの管理職は日々業務に追われており、そのイメージを変えるためには具体的に業務の削減を図るしか方法はありません。現在進められている働き方改革の施策と同時に、管理職の業務の見直しを行うとよいでしょう。軽減策としては「補佐役を設ける」「業務の断捨離を行う」「担当替えを行う」といった施策が考えられます。

管理職の忙しさを軽減する施策


●企業に合う新たなチームスタイルや管理職の役割を考える

社員にこれから管理職になりたいと思ってもらうには、管理職がこれまでのようにメンバーの業務の進捗管理とチームの目標管理を行うだけでなく、新しいチームスタイルを創造したり、これまでにない役割を持つといった新たな魅力付けを行うことも大切になります。例えば、チームスタイルでは、階層化されていないフラットな組織形態の企業も現れており、そこでの管理職の役割は上に立つというよりも、チームの意見のまとめ役、調整役といった位置付けとなっています。

近年はビジネス課題や顧客ニーズが多様化し、仕事の手法にも変化が求められており、多くの職場でイノベーションが求められています。管理職は今まで以上に権限委譲を推し進め、メンバーの役割や力量に応じた働きかけを行うことが必要になります。また、IT業界など、これまで以上に専門性が高まることが見込まれる企業では、管理職自らもより深い専門性を持つことが求められていきます。今後は、企業ごとに独自の新しい形の管理職像を創造していくことが求められるでしょう。

●施策例:企業ごとに管理職の登用・育成の方法を工夫

管理職に「なりたい人、適した人」を生み出すために、企業はさまざまな施策を工夫し、実践しています。中でも多様な働き方への対応など、複雑な現状にいかに対応できる管理職を生み出すのかを、各社模索しています。

管理職の登用・育成に関する施策例

ここまで見てきたように、管理職の仕事をメンバー管理や目標管理といった固定的な役割と考えていると、魅力も見えず、なり手も増えていきません。管理職の仕事が魅力的に思えるためには、企業の状況に合った施策を考えられるだけの柔軟性が必要です。どうすれば自社の管理職がより魅力的になるのか。皆で考えていくことが求められています。

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