(情報掲載日:2019年3月11日)


働き方改革は、多様な働き方を実現することで働き手を確保することを一つの目標としています。その意味において、従業員個々の仕事や生活を支援する福利厚生の充実が、企業と従業員の双方を幸福にする施策となりつつあります。どのような福利厚生が企業と従業員を幸福にしていくのか。これからの方向性について考えます。

●主目的は仕事への意欲向上。「ファン・仕事環境」づくりにも意識

労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」(2018年7月)で、福利厚生制度・施策の目的をたずねたところ、「現在」の目的では「従業員の仕事に対する意欲の向上」(60.1%)がもっとも高く、次いで「従業員の定着」(58.8%)、「人材の確保」(52.6%)と続きます。「今後」については「企業への信頼感やロイヤリティの醸成」「従業員が仕事に専念できる環境づくり(生活の安定等)」が「現在」に比べ、5ポイント程度高くなっています。今後の福利厚生の目的としては、企業のファン・支援者づくり、および仕事環境づくりに、企業の意識が向きつつあることがわかります。

福利厚生制度・施策の目的(複数回答)

(労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」2018年7月より)

●「健康管理」「休暇制度」など、生活の充実を望む社員

企業が現在導入している施策では、「慶弔休暇制度」(90.7%)、「慶弔見舞金制度」(86.5%)、「病気休職制度」(62.1%)、「永年勤続表彰」(49.5%)、「人間ドック受診の補助」(44.6%)、「家賃補助や住宅手当の支給」(44.0%)、「社員旅行の実施、補助」(43.5%)、「労災補償給付の付加給付」(40.1%)、「病気休暇制度(有給休暇以外)」(40.1%)などとなっており、「休暇制度」「慶弔災害」「健康管理」に関連するものが上位に並んでいます。

会社の福利厚生制度に満足しているかどうかをたずねた質問では、「全体」「男性」「女性」のいずれも「どちらともいえない」が半数近くを占め、「満足」と「不満足」の割合はほぼ同じです。「満足」は4人に1人程度であり、まだ多くの人がこれからの制度の充実に期待するという段階にあるといえるでしょう。

会社の福利厚生制度に満足しているか

(労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」2018年7月より)

次に従業員が現状の制度の「ある・なし」に関わらず、自分にとって特に必要性が高いと思うものを聞いたところ、「人間ドック受診の補助」(21.8%)、「慶弔休暇制度」(20.0%)、「家賃補助や住宅手当の支給」(18.7%)、「病気休暇制度(有給休暇以外)」(18.5%)、「病気休職制度」(18.5%)などがあがっています。主に「健康管理」「休暇制度」に関連するものが目立っており、生活の充実に対する関心の高さがうかがえます。

従業員に聞いた「自分にとって特に必要性が高いと思う制度・施策」(10%以上、複数回答)
(労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」2018年7月より)

●役割が増え、存在感が増す福利厚生

福利厚生は、以前は従業員の経済的な支援が中心でしたが、近年は働き方改革や人材不足を背景に下記のようなトレンドが生まれています。働き方改革への対応、人材定着、人材確保、健康経営、企業ブランドのイメージアップ、イノベーション支援など、目的や役割が多方面に広がりつつあります。人材不足の側面においては「従業員をどれだけ大事にしているか」を福利厚生で競う時代ともなっています。

福利厚生制度・施策におけるトレンド

・結婚、出産、育児、介護などに対応した働き方への支援
・テレワークや副業・兼業など柔軟な働き方への支援
・従業員のキャリア自律を意識した教育面での支援
・勤務条件(勤務時間、勤務地など)の自由化への対応
・社内コミュニケーションの活性化
・イノベーティブな仕事環境の整備
・従業員の健康管理への支援
・人材確保・定着に向けた企業アピールを意識


このように福利厚生は、「従業員の都合にいかに応えられるか」「従業員の成長をいかに支援できるか」「組織をいかに活性化できるか」を実現するための施策となりつつあります。その意味においては、従業員と企業の思惑が重なりつつある状況だといえます。

●従業員の要望に応え、工夫しながら制度・施策を実現

では具体的に企業が実施する福利厚生制度・施策にはどのようなものがあるか。最近の特徴的な制度・施策を、「生活支援」「柔軟な働き方支援」「コミュニケーション支援」「キャリア自律支援」「健康支援」の分類でまとめたものが以下の表です。従業員の仕事の部分だけでなく、生活や健康に至るまで細部にわたり支援していることがわかります。

特徴的な福利厚生制度・施策


●今後の方向性のキーワードは「独自性」と「実践力」

福利厚生では、限られたコストと人員で効果的な制度・施策を打ち出すことが求められます。そのためには従業員に十分なヒアリングを行い、自社に合った独自性のある制度・施策を講じることが求められます。従業員からのリアルなニーズを反映させていくことは、企業らしさ、企業カルチャーづくりにつながり、他社との差別化ポイントとなります。特に最近は学生や転職者が口コミサイトなどで、希望する企業の仕事環境を調べるケースも増えており、印象的で納得感のある制度・施策は企業のイメージアップにつながります。独自性のある制度・施策を考え、工夫して実践していくことが求められます。

企業において従業員はヒューマンキャピタル(人的資本)とも呼ばれます。従業員に効率的に、仕事へのやる気を持って働いてもらうには、福利厚生制度・施策による環境づくりが有効です。従業員の望む幸福とは何かを常にヒアリングし、それに対し企業が提供できるもの、対応できるものはないかと考えて実践する。その姿勢を持ち続けることが、企業が従業員に提供できる最良の福利厚生といえるでしょう。

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