(情報掲載日:2019年2月12日)


現状を変えていくには固定観念や思い込みを打ち破らなくてはなりません。そのためには自分への質問で現状を問い直す「キラー・クエスチョン」の手法が有効です。「顧客は誰か」「自分たちは何を売っているのか」「組織はどう機能しているか」などの質問で自身を問い直し、イノベーションを起こして現状を打破する手法を学びます。

●質問が固定観念や思い込みを打ち破る

キラー・クエスチョンとは、一般に相手の本音を引き出すポイントとなる質問、物事の核心を突く質問といったものを指します。パソコンメーカーの最高技術責任者であったフィル・マッキニー氏は、著書『キラー・クエスチョン』の中で、固定観念や思い込みを打ち破り、最良のアイデアや気付きを得るイノベーションを起こす手法として、質問を活用することの大切さを述べています。

また、「イノベーションのジレンマ」を提唱した米国のハーバードビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授も、イノベーターに重要な資質として質問力を挙げています。イノベーションのジレンマとは、業界でトップになった企業が既存の商品・サービスの改良ばかりに気を取られ、顧客が抱く新たなニーズに気付けずに失敗するという現象のことです。自らに質問を行うことが創造的な洞察につながると指摘しています。

●なぜ自分に質問することが有効なのか

なぜ自分への質問がイノベーションに有効なのか。その前提にあるのは自分たちのことはあまり見えていないという事実です。人や組織は過去の成功体験から、何らかの固定観念や思い込みを持つことがあります。質問という作業には「考え始める契機をつくる」「気付かなかったことに気付かせる」「現時点で必要となる答えをスムーズに導ける」といった効果があります。そのため、質問によって現状を打破することができるのです。次の質問を自分に投げかけてみてください。

自身の仕事(職場)の状況について確認する質問

・自分の仕事(職場)は今のやり方でなくてはいけないのか?
・なぜ、そのように思うのか?
・自分はどのような可能性を排除しているか?
・なぜ、その可能性はすぐに実現できないのか?
・その可能性を実現できないと考える本当の理由は何か?


自分の中に何か気付きがなかったでしょうか。あらためて自身に問いを立ててみると、「当たり前」「常識」としてしまっている固定観念や思い込みの存在に気付きます。そして「なぜそのように信じているのか」「これからも同じ手法が本当に通用していくのか」と考えを進めることが、イノベーションにつながっていきます。

●質問のカテゴリーは「顧客」「提供価値」「実行の手法」

マッキニー氏は、自分たちの仕事を確認するキラー・クエスチョンは「顧客」「提供価値」「実行の手法」の3つのカテゴリーに分けられると述べています。要するに「自分たちはどんな顧客を相手にし、それに対して何を提供し、どのように事業を実行しているか」を考えることが重要なのです。下表はカテゴリーとその質問例です。こうした質問に対する答えは、実際に自社の現場に足を運び、仕事の様子を観察し、現場のメンバーに直接たずねることによって明らかとなっていきます。

キラー・クエスチョンのカテゴリーと質問例

(フィル・マッキニー『キラー・クエスチョン 常識の壁を超え、イノベーションを生み出す質問のシステム』CCCメディアハウスを参考に作成)

●これからの商品やサービスをつくる質問とは

キラー・クエスチョンの思考は、これからの商品やサービスをつくることにも役立ちます。以下は、売れる商品・サービスをつくるための質問の流れです。世の中の「困った」を明らかにし、それをなくしたい人はどんな人で、なくすにはどうすればいいかといった質問に対し、アイデアや場面、対象などを考え、議論しながら形にしていきます。

これから売れる商品・サービスをつくるための質問の流れ

1.世の中にはどんな「困った」があるか?
2.そのなかで自社が役に立てそうな「困った」は何か?
3.なぜ、そこに「困った」が生まれているのか?
4.目の前に困っている人がいたら、その人はどうなったら最高だと感じるか?
5.その人にどんな商品やサービスを提供すれば喜ばれるか?
6.顧客は既存の商品やサービスにどんな不満を感じているか?
7.どうすれば顧客の不満が解消され、もっと喜ばれるのか?
8.どうすれば、それらの活動を実現できるのか?


(河田真誠『革新的な会社の質問力』日経BPを参考に作成)

●「今」や「少しだけ」を考えるとよい質問が生まれる

どのような質問が役に立つ質問になるのか。脳科学者の茂木健一郎氏がよい質問につながるキーワードを挙げています。具体策を考えるときには「今」で考え、目的を考えることで方向を定めて、問いを立てて試行することを奨めています。また、難しい課題でも「少しだけ」とアタマに付けることで、少しの可能性を基に考え始めることができるようになります。

よい質問を生むためのキーワード

(茂木健一郎『最高の結果を引き出す質問力:その問い方が、脳を変える!』河出書房新社を参考に作成)

●他にもある、質問の幅を広げるコツ

同じような切り口、同じような質問ばかりでは期待する成果は得られません。質問をよりよい結果につなげるには、十分な情報を得て、場面に合った視点で質問を考える必要があります。自身の質問の幅を広げるには試行錯誤も必要です。以下のコツを実践するなど、日々思考の幅を広げる訓練を行うことが求められます。

質問の幅を広げるコツ

・質問の視点を変えてみる(例えば、失敗原因を追究するときは「どのあたりからうまくいかなくなったか」、途中に違和感があったときは「なぜそこで止められなかったのか」など)。
・「それはなぜか」と繰り返し、原因を深掘りしてみる。
・普段と違うスタンスで考えるために、欠点ばかりを指摘してみる。
・複数の人が集まって話し合い、判断や決定を下す「会議」を、一人で行う「ひとり会議」で実践してみる(自分で質問を考え、それに答えることを繰り返しながら考えをまとめていく)。
・普段どれくらい見えているのかを自覚するため、ひたすら現場を観察してみる。

会議の場などでは、人は他人に対して質問することばかりを考えてしまう傾向にあります。キラー・クエスチョンのスキルを身に付けることは、自身を問いの対象にし、より厳しく問う姿勢を持つことにつながっていきます。現状を打破するカギは「自分や自社」の中にあります。質問をしていくことで、いかに自身の本音や職場の真の姿を明らかにできるのか。自らをさらけだすことにイノベーションのヒントがあります。

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