(情報掲載日:2019年1月9日)


働き方改革関連法が施行される2019年、仕事現場への注目度が増し、企業価値を生む「現場力」がより一層問われることになります。社員が「現場力」を発揮し、日々問題解決を行うことができれば、企業としての対応力、創造力の強化につながります。「現場力」とは何か、その力をいかに育成するかについて解説します。

●企業ビジョン、競争戦略を実現する場

現場力という言葉にはさまざまな捉え方がありますが、総じていえば「企業の経営戦略を実現し、企業価値を生み出す、すべての職場が持つ力」といった方向性になります。では企業における現場とはどのようなポジションなのか。現場力に詳しい経営コンサルタントの遠藤功氏は、企業のビジョンを受けた競争戦略を実践するオペレーションの場と述べています。そこでどのように企業価値を生み出すのかを考え、実践する力が現場力です。

企業における現場のポジション

(遠藤功『現場を鍛える 「強い現場」をつくる7つの条件』東洋経済新報社を参考に作成)

●近年は現場力が低下傾向に

それでは現場の概念、目的、役割は何か。遠藤氏は、現場の概念を過去から未来に向かって進行する中の「いま・ここ」であり、企業の未来を創造していく場所だと述べています。現場はいろいろな捉え方があっても、そのすべてが企業の未来に向けた備えだということです。そして現場の役割は「業務遂行」「人材育成」であり、未来に向けた可能性を育てつつ、現場で生まれるリスクを回避していく力が現場力といえます。しかし、近年は「人手不足の深刻化」「多忙による人材育成体制の弱体化」「ダイバーシティの進行などによるコミュニケーション不足」「業務のデジタル化による環境変化」などの理由で、企業の現場力が弱まっている現状があります。

現場とは何か

(遠藤功『現場論 「非凡な現場」をつくる論理と実践』東洋経済進報社を参考に作成)

●予測不可能、複雑だからこそ新たな価値が生まれる

では具体的に現場にはどのような性質があるのか。北海道大学大学院の小田博志教授は以下の5つの性質を示しています。特徴的なことは何が起こるのか予測不可能でありながら、対応の即興性が求められる点です。複雑な要因が絡む事態においても、その場で具体的な対応を取らなければならず、企業に求められる現場力とはそのような状況に対して、継続的に対応し続けられる力だといえます。

現場が持つ5つの性質
(小田博志『エスノグラフィー入門 <現場>を質的研究する』春秋社を参考に作成)

●現場力を形成する3つの能力

現場の業務には3つの特性があるといわれています。業務がどんどん増える「肥大化」、個人のやり方や経験則に固執してしまう「個別化」、革新や進化が生まれない「陳腐化」の3つです。現場力にはこれらを予防する能力である、「保つ能力」「よりよくする能力」「新しいものを生み出す能力」が求められます。

現場力を形成する3つの能力

(遠藤功『現場論 「非凡な現場」をつくる論理と実践』東洋経済進報社を参考に作成)

そのうえで強い現場をつくるためには「問題解決力」「組織力」「差別化」を備えることが重要になります。現場での気付きを自発的に問題化し、組織全体で解決に取り組むというスタイルを確立します。その活動の精度を他社以上に磨いていくことで、他社との差別化を図ることにつながります。

強い現場をつくるための条件

(遠藤功『現場力の教科書』光文社を参考に作成)

●デジタルの導入には「暗黙知データの資産化」で対応

デジタル技術が進化し、AIも開発されたことで、量的な人手不足および需要の高い人材の不足、働き方改革に対応するためのデジタルの導入が進んでいます。単純作業だけでなく、質の高い業務を実現してきた暗黙知やベテラン社員の職人技、経験値といったものもデジタル化・AI化の動きが見られています。暗黙知などのデータ化では、業務を体系化して分析し、共有すべき行動データや作業データなどを取得。それらのデータを資産化することで、人材不足に対抗するというものです。その動きと同時に、デジタル人材の確保や現場におけるデジタル教育も必要となります。

●現場を活性化させ、自由度を高める施策を打つ

ではどうすれば現場力が鍛えられるのか。手法には次のようなものがあります。現場を信頼して権限を委譲し、活動の自由度を高めながらいかに前向きな意識を醸成できるかがポイントです。組織としての現場力を一過性のものとせずに、「現場での気付き→問題の話し合い→改善活動→検証」といった好循環が自律的に生まれる仕組みをつくり、現場力を定着させる工夫が求められます。

現場力を鍛えるための具体的手法

現場はすべての企業に存在し、業務のデジタル化が進んでも決してなくなることはありません。現場には「可能性」と「リスク」が存在し、常に変化し続ける現状を捉えながら、前向きに可能性を追究しつつ、リスクを回避する活動が求められることになります。企業が存続する限り、現場が完成することはありません。明日の現場を考え続けることこそが、現場力を鍛える源泉になるといえるでしょう。

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