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(情報掲載日:2012年8月20日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

非常時における労務対策をどのように立てるか

VOL.7


近年、自然災害が多発し、企業活動に大きな影響を与えています。このような災害が起きた状況下で、企業はどのように対応していけばいいのでしょうか。非常時における労務対策について、ご紹介します。



非常時における労務対策

(1)災害発生前に対応しておくべき事項

大きな災害が発生した際、事前にその準備ができているかどうかで、その後の対応や復旧の早さが大きく違ってきます。災害発生前に最低限対応しておくべき事項には、以下のような内容が考えられます。

①非常時の対応マニュアル・行動規準の作成
②避難するための誘導路の整備
③対応マニュアル・行動規準や正しい知識を身に付けるための研修・訓練の実施
④従業員の身の安全を守るための事前準備
⑤「緊急連絡網」(緊急時の勤務体系、緊急避難所、従業員の氏名・住所・連絡方法・出社手段等)の配布と関係者との共有
⑥「非常用の持ち出し袋」(飲料水、緊急ホイッスル、ペンライト、ヘルメット等)の用意
⑦「帰宅地図」(帰宅経路、緊急避難所等を記した地図)の作成、事前のシミュレーションの実施
⑧非常時に災害対策本部が行う対応事項、責任者・担当者の決定
⑨非常時の勤務体系の検討
・時間外労働、休日出勤など通常勤務と異なるケースへの対応の検討
・柔軟な勤務体系の用意(在宅勤務、時差出勤、フレックスタイムの導入等)

上記内容について、いくつか留意しなければならない点があります。
まず、災害時に人命を守るための研修や訓練に対して、参加意欲の低い従業員が少なくありません。災害に対する意識を高め、迅速な行動を促すためにも、緊急時にどのような対応が必要とされているのか、備えを怠ったらどんなことになるのかを理解できる研修・訓練を行うようにしましょう。
また、災害時には、従業員との連絡がスムーズに取れるかどうかがポイントとなります。いざという時に誰が警告を出すのか、災害時に誰の指示を仰ぐのかといった指揮系統を全員に認知させることが大切です。スムーズに連絡を取るためには、情報は常に最新の状態にしておくことも必要です。従業員の氏名、部署、電話番号、連絡方法や非常時における災害対策組織、避難所などは、変更があった段階で更新・共有するようにしましょう。

(2)災害時における対応

災害が発生した際、最低限対応すべき事項は以下のような内容です。

①災害対策本部の設置、事前に決定した担当者が不在の場合の代替者の決定
②従業員への対応
・安否の確認、救出救助の実施
・必要物資の配布
・帰宅困難者への対応(宿泊施設、仮眠所の割り当て等)
③自社の被災状況の確認(自社関連の施設・設備、電気・水道・ガス等のライフライン、情報インフラ等)と復旧要員の手配・確保
④取引先や顧客の被災状況の確認
⑤ステークホルダーに対する自社の被災状況の説明

(3)業務再開における対応

業務再開に向けては、以下のような対応が必要となります。

①業務再開に際して、検討すべき事項と優先順位の決定
・建物・設備の使用可否の判断
②労働力の調整
・勤務可能な従業員の受け入れ拠点の確保
・不足した労働力への対応(配置転換、外部労働力活用等)
③従業員の確保とケア
・長期休業者、メンタルヘルスに対するケア
④環境の整備
・作業スペース、作業用具の確保
・勤務環境の整備(飲料水の確保、ごみ処理機能等)



非常時における労務対策「Q&A」

災害時に発生しうる労務対策に関する疑問について、その考え方や対処方法をご紹介します。

Q1:災害発生時、時間外労働や休日出勤を命じることができるのでしょうか。また、36協定を超えての時間外・休日労働は可能でしょうか。

A1: 非常災害時には、36協定の協定内容を超えて、または36協定を結んでいない場合でも、事後「非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働許可申請書届」を労働基準監督署に提出して許可を得れば、時間外労働・休日労働を命じることができます。いずれの場合も、時間外労働、休日労働に対する割増賃金の支払いが必要となります。


Q2:災害時における復旧作業は業務命令になるのでしょうか。また、従業員が個々の判断で指示に従わず自主避難した場合、それは罰則対象となるのでしょうか。

A2: 一般的に、災害時における対応業務を指示した場合は業務命令となります。そして、従業員には労働契約の主旨と内容に従った労働を誠実に遂行する義務があります(労働契約法第7条)。しかし、生命や身体の危険を伴う場合については契約の合理的限界を越えていると判断され、命令に従わなくても罰則対象にはなりません。
労働安全衛生法第25条では、労働災害発生の急迫した危険がある時には、「事業者は直ちに作業を中止し、従業員を作業場から退避させる等必要な措置を講じなければならない」としています。


Q3:災害時、帰宅困難者を会社で待機させた場合、残業代は必要となるのでしょうか。

A3: 労働時間とは、従業員が会社の指揮命令下に置かれている時間をいいます。災害時、帰宅困難が見込まれる従業員が会社に待機している間に、電話対応等が義務付けられている場合には会社の指揮命令下にあると考えられ、会社側には残業代としての時間外割増賃金の支払い義務が生じます。
一方、業務や電話対応などが義務付けられていなければ指揮命令下にある(労働時間)といえず、残業代の支払い義務は生じません。


Q4:緊急事態に備えて、休日に自宅待機を命じました。このような場合、賃金を支払う必要はあるのでしょうか。

A4: 自宅待機の場合、テレビを見たり、食事や入浴をするなど、行動が自由です。そのため、一般的に、会社の指揮命令下にあるとは言えません。このような見方から、労働時間として取り扱う必要はなく、賃金の支払い義務は生じません。ただし、本来の休日とは異なる取扱であり、自宅待機命令を受けた従業員が不公平感を持つケースもあるため、手当てとして一定の金額を支払うなどの検討も必要になります。
自宅待機中に業務連絡等が頻繁に入るような状況にあれば、労働時間と判断され、賃金支払い義務が生じる可能性もあります。この場合、週40時間を超えていれば時間外割増賃金が、その日が法定休日であれば休日割増賃金が必要となります。


Q5:工場や店舗・事務所などが倒壊して営業不可能となり従業員を休ませた場合、賃金を支払う必要はあるのでしょうか。

A5: 労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」として、「休業手当」の支払いを求めています。
ただし、不可抗力による場合は会社の責めに帰すべき事由による休業とはなりません。不可抗力に当たるかどうかは、以下の要件を満たすものでなければならないと解されています。

①その原因が事業の外部より発生した事故であること
②事業主が通常に経営者としての最大限の注意を尽くしても、なお避けることのできない事故であること

災害等で工場・店舗・事務所が倒壊し、営業不可能となったような場合は不可抗力に該当すると考えられ、休業手当を支払う必要はありません。


Q6:災害時に職場で被災し負傷したような場合、業務災害の扱いとなるのでしょうか。

A6: 自然災害による事故が業務災害と認められるのは、作業方法、作業環境、事業場施設の状況等からみて危険環境下にある場合です。地震などによる災害の業務災害に対する考え方としては、「災害 により、業務遂行中に建物の倒壊等により被災した場合にあっては、作業方法や作業環境、事業場施設の状況などの危険環境下の業務に伴う危険が現実化したものと認められれば、業務災害となる」との事務連絡(※1)が出されています。

※1厚生労働省労働基準局補償課長 事務連絡第4号 平成7年1月30日
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000014tr1-img/2r98520000015j3l.pdf

このように災害時に職場で被災し負傷した場合、危険環境下の業務に伴う危険が現実化したものとして、業務災害となります。


Q7:災害の影響により従業員に在宅勤務を命ずる場合、どのような点に留意したらいいのでしょうか。

A7: 在宅勤務を導入する場合、以下のような点について明確にしておくことが大切です。

①在宅勤務の対象者の条件
在宅でも可能な業務、非常時でも止めてはならない業務、といった観点から対象業務を選定することが重要です。
②在宅勤務の期間、頻度
期間については、在宅勤務導入の目的、対象者によります。危機対応ということであれば、その状態が継続している期間が適当と思われます。頻度については、全面的に在宅勤務とするのか、あるいは「週2日」など部分在宅にするのかを決めます。これも、業務の実態に合わせて決めていきます。
③情報セキュリティのリスクヘッジ
社内のシステムにアクセスするためのアカウントについては、管理方法を明確に定め、厳格に管理していくことが必要です。その上で、どのような情報であれば持ち出していいのか、また、どんな方法(ツール)であれば持ち出していいのかなど、リスクヘッジの観点から情報セキュリティについてのルールを定めておきましょう。
④機器の貸与、経費負担の所在
情報セキュリティの関係から、パソコンなどの機器類については会社貸与がいいでしょう。通信費を会社負担とするか、個人負担とするかは就業規則に定めている場合はそれに則って決めます。本人負担とすることも可能ですが、災害時での緊急対応という点から考えて、会社負担とすることが望ましいと思われます。いずれにしても定めがない場合は、就業規則に定めることが必要です。
⑤労働時間管理
労働時間管理については、通常の労働時間管理を行う場合、始業・終業の時刻、休憩時間を正確に申告してもらう必要があります。在宅勤務の場合、従業員の時間外労働や休日労働のコントロールが難しくなります。その点からも、時間管理に関して留意する点を事前にレクチャーしておくことが望まれます。
⑥業務指示の方法
事前に、自宅で行う業務内容と業務成果、業務進捗の報告方法などを明確にしておきます。そして業務指示については、始業時にメール・電話で確認を行うようにしましょう。なお、細かな指示が必要な場合には、状況に応じてメールや電話のほか、テレビ会議やWeb会議の活用を検討するとよいでしょう。
⑦人事評価
使用者の直接の管理下にないため、在宅勤務中の評価をどのように行うか、きちんとルールを定めて不公平のない運用を行うことが求められます。評価を行う際にも、本人と上司とでプロセスや達成度を確認する機会を設けることが望ましいでしょう。


Q8:災害時における従業員のメンタルヘルス対策や、被災により長期休業しなければならなくなった者への対応をどのように行えばいいのでしょうか。

A8: 従業員に対するメンタルヘルス対策の考え方ですが、ショックを受けた従業員を被災前の通常の心理状態へと回復させることを第一に置きます。そのためにも会社は、従業員がショックを受けた後の心理的な状態について、専門的な医療機関へと紹介する必要があるのかどうかの知識及び判断が必要となります。そこで判断を誤ると、抑うつ状態が悪化したり、生命の存続に関わる事態が起きるケースもあるからです。ショックを受けた従業員の心の悩みや抑うつ状態は長期化することが少なくありません。状況によっては長期的なフォローが必要となる場合もあることでしょう。
このような事態を防ぐためにも被災後は、職場全体でメンタルヘルスに関する教育研修を行い、管理職や被災者を含めた従業員のメンタルヘルスへの理解を深めていくことが大切です。さらに、深刻な状態の従業員に対しては話を聞く機会を設け、体調や心情を把握するとともに、カウンセリングや精神科医を紹介するなど、必要なサポートを行う体制を構築していく必要があります。

被災による長期休業者への対応については、こまめに連絡を取り合い、会社のサポート体制などについて必要な情報を提供し、休職期間中の扱いや復職後の対応などについて会社との認識に違いが起きないよう、丁寧なコミュニケーションを取っておくことが大切です。
また、非常事態の場合、通常の状態に戻る前は欠勤・休職扱いにならないと解されるため、通常の状態に戻った日を定めて、欠勤や休職の起算日を定めることが必要です。しかしながら、大きな災害があったような場合、被害に遭った従業員とそうでない従業員のギャップがあって、いつの時点をもって平常に戻ったかの判断が難しいでしょう。例えば、勤務時間が通常の所定時間に戻った時を一つの区切りとするのもひとつの方法です。
もし休職期間が満了しても職場に復帰できない場合は、休職期間を延長するか、または退職するかなどを、慎重に検討していくことが求められます。


Q9:災害により、4月1日の入社予定日に新入社員を受け入れることが難しくなりました。入社日を延期するか、自宅待機をさせたいと考えていますが、こうした対応は可能でしょうか。

A9: 可能ではありますが、採用内定の際に定められていた入社自体を延期する措置(入社日の延期)を行う場合は、内定者に対する十分な説明と同意が必要です。これらを行わないまま入社日の延期をすることはできません。また、入社日を変更した場合でも、内定者の不利益をできるだけ回避するため、延期期間はできるだけ短くすることが望まれています。

また、予定通り入社させた上で実際には就業をさせないで自宅待機にすることは可能です。但し、工場・店舗・事務所が倒壊し、営業不可能となっていない限り、休業手当を支払わなければなりません。

東日本大震災後の対応においても、平成23年3月22日に厚生労働大臣・文部科学大臣の連名で、主要経済団体、求人情報事業所団体に対して、「採用内定を得ている被災地の新卒者等が、可能な限り入社できるように、また、可能な限り予定していた期日に入社できるよう最大限努力すること」等について要請しています。

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