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(情報掲載日:2017年9月11日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

いま取り組むべき残業削減策

vol.68


現在政府が進める働き方改革において、長時間労働の是正がテーマのひとつとなっています。日本企業において残業の削減は長年の課題となっており、その根本的な解決を図るには企業に相当の覚悟と効果的な施策の導入が求められます。なぜ長時間労働が行われているのか、なぜ残業削減策は失敗するのか、また、残業削減策を成功させるポイントについて解説します。

なぜ長時間労働が行われているのか

●政府が進める働き方改革でも課題に

政府が2017年3月に発表した「働き方改革実行計画(概要)」(※1)によれば、日本は「欧州諸国と比較して労働時間が長く、この20年間フルタイム労働者の労働時間はほぼ横ばい」となっています。政府は仕事と子育てや介護を無理なく両立させるためには、長時間労働の是正が必要と考え、働き方改革のテーマのひとつにあげています。また、メンタルヘルスの改善や過労死の根絶に向けても長時間労働の是正は重要であり、これらは多くの企業で課題となっています。

データブック国際労働比較2017(※2)をみると、2015年における就業者の長時間労働の割合は米国16.4%、英国12.3%、ドイツ9.6%に対して日本は20.8%と高い比率を示しています。また、2014年における労働生産性水準は日本を100とした場合、米国155.0、英国119.2、ドイツ112.3、フランス127.4であり、もっとも低い水準です。残業削減および労働生産性の向上が急務となっており、現在、罰則付き時間外労働の上限規制や勤務間インターバル制度(1日の勤務終了後に一定の休息時間を確保する制度)などが検討されています。


●なぜ残業が発生し、削減が進まないのか

ではなぜ残業が発生してしまうのでしょうか。理由には市場や景気、顧客への対応などといった外部要因と、社内の体制などが原因となる内部要因が考えられます。外部要因としては「顧客や消費者の対応」「顧客による突発的な仕事の発生」「景気動向による仕事の繁閑の差」などがあげられます。内部要因は「仕事量に対する人員不足」「業務量の多さ」「業務内容と人員スキルのギャップ」などです。そして、これまで残業削減があまり進まなかった背景には、「働き方を変えたいという内的欲求がない」「働き方を変えるための具体的な策を持っていない」といった取り組みへの消極性があげられます。企業の意識としても業務が行えていれば、あえて積極的に変えようとしてこなかった面もあるでしょう。また残業削減に取り組んだとしても「全社的に足並みがそろわずに取り組みが続かない」といった現実もありました。日本企業には「長時間労働をする者が企業に貢献している」と考えるような風潮もあり、このような思考が積極的な改善を妨げてきた一面もあると考えられます。

※1:首相官邸 働き方改革実現会議「働き方改革実行計画(概要)」
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/20170328/05.pdf

※2:労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2017」
http://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2017/documents/Databook2017.pdf


なぜ残業削減策は失敗するのか

●残業削減策が失敗する理由

これまでも残業を減らす意識を持ち、多くの企業が残業削減に取り組んできましたが、「なかなかうまくいかない」という声も多くありました。残業削減策が失敗する要因の多くは残業を削減することで、これまでの仕事のバランスが崩れたり、別の問題が引き起こされるといったものです。残業削減策を成功させるにはただ残業を減らすのではなく、なぜ残業削減を行うのか、なぜ残業のない状態を継続させなければならないかを社員に納得させ、個々のモチベーションや職場のチームワークも同時に向上させる取り組みが必要となります。社員が残業削減策の必要性について納得し、その施策を実行することの大切さを理解することが重要です。


残業削減策が失敗する理由

・仕事ができる管理職や社員が残業削減に協力的でない
・やらされ感がまん延して、表面的な取り組みで終わってしまう
・持ち帰り残業が増えてしまい、コンプライアンスのリスクも増す
・早く帰っても飲み会や遊びが増えるだけで、ワーク・ライフ・バランスを取る本来の意義である
インプットの時間は増えず、仕事の質の向上につながらない
・自分だけ仕事を終えて早く帰る社員が増え、社内の協調性がなくなる
・対応が悪くなったなど、取引先からクレームが増える
・社内コミュニケーションの時間が減ることで、職場が殺伐としてしまう
・残業削減の強化月間が終わると即リバウンドし、もとに戻ってしまう

(小室淑恵『女性活躍 最強の戦略』日経BP社を参考に作成)

●削減した残業代を人に投資する新たな動き

最近では削減した残業代を再度人に投資するといった、社員に残業削減への新たなモチベーションを設ける企業が増えています。削減された残業代を企業の利益とするだけでなく、社員のやる気、健康管理、インプットなどにつなげる動きがみられます。企業は削減された残業代の使い道について、人への投資や働く環境づくりに活用すると伝えることで、社員の仕事へのやる気を高める狙いがあると思われます。



削減した残業代の投資例
削減した残業代の投資例


残業削減策を成功させるポイントとは

●残業削減策を成功させる4つのポイント

では残業削減で成功させるためには何がポイントとなるのか。重視すべきは「トップの決意」「残業への価値観の共有」「終わり時間の徹底」「退社時間の管理」の4点です。日本企業がこれまで残業をなくせなかった背景には、「残業は仕方がない」といった残業を許す意識があったことが影響していたと考えられます。このような状況を変えるには「残業はできる限りないようにしよう」といった意識を社内に醸成しなければなりません。トップが残業削減を決意したことを示し、社員に対し「今後はより高い労働生産性を目指す」と宣言することが重要になります。


残業削減策を成功させるための4つのポイント 残業削減策を成功させるための4つのポイント

●残業削減運動の推進

実際に残業削減を社内で推進する場合には、専門の組織をつくり、企業として残業削減に取り組むトライアル期間を決めて行う手法が有効です。残業を生み出す課題を抽出し、その課題をPDCAで解決します。トライアルで発生する成功例や失敗例を共有しながら、全員が一丸となれるように進めることがポイントとなります。



残業削減運動の流れ 残業削減運動の流れ
(株式会社名南経営コンサルティング『生産性が高い「残業ゼロ職場」のつくり方』日本実業出版社を参考に作成)

●企業の具体的な取り組み事例

では具体的に企業ではどのような施策を行っているのか。残業削減に向けて取られる施策例および残業削減への独自の工夫を行った企業事例には下の表のようなものがあります。

残業削減に向けた施策例

・残業事前申請・許可制の徹底
・会議の規模縮小、短時間化、回数削減
・企画書・報告書の作成簡略化、迅速化
・残業削減・生産性アップが評価される制度への見直し
・ノー残業デーの実施、徹底
・強制消灯、パソコンの使用制限など退社をうながす施策の実施
・入室管理の徹底による勤務時間の把握
・IT環境の改善による効率化
・特定の個人や部署に集中する業務割当の平準化
・業務の繁閑に応じた営業時間や休業日の設定 など



残業削減に向けた企業事例 残業削減に向けた企業事例

また、残業削減策の実施時に問題となるのが、企業が把握しない形での残業や仕事の持ち帰りなどの「隠れ残業」です。企業はできる限り残業の実態を把握し、隠れ残業を行わないようにさせる必要があります。チームごとに定期的にミーティングで隠れ残業がないかをチェックしたり、隠れ残業をしているようなメンバーがいれば上司がヒアリングをするなど、細やかな監視体制が求められます。ある企業では、残業の申告時間とタイムカードに15〜30分以上の差があると、所属長のパソコンに通知が届き、当該社員への直接のヒアリングを行っているところもあります。

現在進められている働き方改革で、今後企業に向けた何らかの残業削減の規定がつくられる可能性は高いと考えられます。ではどうすれば残業削減が実現できるのか。残業が発生する原因は企業ごとに違います。企業にとってもっとも削減効果の高い策を考えられるのはその企業のトップを含めた社員たちです。ただ残業削減はすぐに成果を出すことが難しいテーマですから、どうすれば自社の社員たちの残業削減が確実に行えるのかについて、早期にこの問題に着手し、話し合いを始めることが求められています。

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