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(情報掲載日:2017年7月10日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

今あらためて学ぶドラッカー

VOL.66


日々の仕事に追われていると、何のために働いているのか、企業の目的とは何なのかといった仕事の基本を見失ってしまうことがあります。そんな時に道しるべとなるのが、「経営学の父」「マネジメントの父」と呼ばれる経営学者ピーター・F・ドラッカーの言葉です。「企業の目的は利益追求ではなく、顧客を創造することである」と言ったドラッカーは、仕事や企業をどう捉え、どんなマネジメントを提唱したのか。あらためてドラッカーの言葉を学びます。

働くとは何か

●「経営学の父」「マネジメントの父」であるドラッカー

ピーター・F・ドラッカーは「経営学の父」「マネジメントの父」と呼ばれるオーストリア出身の経営学者で、マネジメントを体系化したことで知られ、「どうすれば機能する社会が形成されるか」が生涯の研究テーマでした。著作にはマネジメントを総合的に扱った『現代の経営』、事業戦略について述べた『創造する経営者』、経営者が取るべき行動について書いた『経営者の条件』、マネジメント論の集大成『マネジメント』などがあります。今なお多くの経営者やビジネスパーソンがその思考を学んでいます。


●人はなぜ働くのか

ドラッカーは人が働くことをどのように考えていたのでしょうか。ドラッカーは仕事における貢献を考えるヒントとして、次のエピソードを紹介しています。

私が13歳のとき、宗教の先生が、「何によって憶えられたいかね」と聞いた。誰も答えられなかった。
すると、「答えられると思って聞いたわけではない。でも50になっても答えられなければ、人生をムダに過ごしたことになるよ」といった。


今日でも私は、いつもこの問い、「何によって憶えられたいか」を自らに問いかけている。これは自己刷新を促す問いである。自分自身を若干違う人間として、しかしなりうる人間として見るよう仕向けてくれる問いである。

(P.F.ドラッカー『非営利組織の経営』ダイヤモンド社より抜粋)

例えば、「貧しい人のために行動した人として憶えられたい」という志を持てれば、働く姿勢も意欲も変わっていきます。「何によって憶えられたいか」という問いは日々、人に働くことの意義を問い、その人の人生によい変化をもたらすといえます。

また、ドラッカーは「働くことすなわち労働は人の活動である。人間の本性である。論理的ではない。力学である。」と示し、人が成果をあげるために知るべき5つの次元をあげています。そこには生理的な次元、心理的な次元、社会的な次元、経済的な次元、政治的な次元があり、これら個々の合理的な次元を満たしながら、成果をあげるために必要なものがマネジメントです。

人が成果をあげるために知るべき、働くことの5つの次元
人が成果をあげるために知るべき、働くことの5つの次元
(P.F.ドラッカー『マネジメント』ダイヤモンド社を参考に作成)


企業とは何か

●企業の目的は顧客の創造

ではドラッカーは企業をどのように捉えていたでしょうか。ドラッカーは、企業の目的は利益をあげることではなく、「顧客の創造である」と説いています。事業によって喜ぶ人をみつける、増やすということが目的になります。そのため最初に考えるべきは、顧客は誰であり、どこにいるのかということです。そしてドラッカーは、企業の事業を考えるうえでその意義を問う5つの質問を以下のように示しています。

ドラッカーの5つの質問

① 我々の使命は何か   ② 我々の顧客は誰か   ③ 顧客の価値は何か
④ 我々の成果は何か   ⑤ 我々の計画は何か

●企業が持つ基本的な2つの機能

では企業は、創造した顧客に対して価値のある事業を行うために、どのような機能を持つべきなのでしょうか。ドラッカーは企業には2つの機能があると言っています。1つ目は顧客を創造するために、顧客が今何を求めているかを知る「マーケティング」です。ドラッカーは、2001年に日本で発行された著書『マネジメント(エッセンシャル版)基本と原則』の中で「マーケティングは、今日あまりにも多くの企業で行われていない」と指摘しています。2つ目は顧客が今後何を求めるのかを探り、新たな商品やサービスを考える「イノベーション」です。ドラッカーは、イノベーションは顧客に新しい満足を生み出すことであり、それにより企業も常によりよくならなければならないと述べています。

企業が持つ2つの機能
企業が持つ2つの機能


●企業の社会的責任とは何か

では社会において企業はどのような存在なのか。ドラッカーは、企業は社会の一機関であり、社会に貢献してはじめて存在意義が生まれると語っています。企業の社会的な責任には、1.事業を通して社会問題の解決に貢献すること、2.自社の事業を原因とする悪影響を社会に及ぼさないことの二通りがあるとされています。したがって、企業には社会問題をビジネスチャンスと捉えて、自社を通してその問題を解決するという役目もあります。


マネジメントとは何か

●マネジメントの意識を持つこととは

ドラッカーはマネジメントをどのように捉えているでしょうか。ドラッカーは著書『マネジメント』の中で、3人の石工の話を紹介しています。仕事をしている3人の石工に「あなたは何のために仕事をしているのですか」と尋ねると、それぞれ次のように答えました。
一番目の石工は「生活のためです」、二番目の石工は「技術を磨くためです」、三番目の石工は「教会を建てるためです」。ドラッカーはこの中でマネジメントの意識があるのは三番目の石工だと述べています。この人は、組織の目的と目標を意識して仕事をしているということです。そして企業においては「教会を建てること=使命」となります。

●マネジメントの役割とは

企業をはじめとするあらゆる組織が社会の機関であり、組織が存在するのは自らの機能によって社会、コミュニティ、個人のニーズを満たすためです。組織とは目的ではなく手段であり、ドラッカーは、マネジメントは「組織の中核の機関」であるとし、マネジメントの役割を以下のように定義しています。これらからわかることは、マネジメントは人を管理することが目的ではなく、あくまでも成果を出すための手段、手法であり、そのために人が何をすべきかが自然と判断できるような状態をつくり出すことが本来の目的といえます。

マネジメントの役割

① 自らの組織に特有の使命、それぞれの目的を果たすために存在する
② 仕事を通じて働く人たちを活かす
③ 自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献する

(P.F.ドラッカー『マネジメント』ダイヤモンド社を参考に作成)

●マネジャーの仕事とは

ドラッカーは具体的なマネジャーの仕事として、以下のようなものをあげています。このような活動を行い、組織が最大の成果をあげられるようにしたうえで、マネジャーが解決すべき2つの課題をあげています。1つ目は「投入した資源の総和よりも大きなものを生み出す生産体を創造する」(付加価値の創造)。2つ目は、「あらゆる決定と行動において、ただちに必要なものと、遠い将来に必要とされるものを調和させる」(現在と将来のバランスをとる)ことをあげています。


マネジャーの仕事
マネジャーの仕事
(P.F.ドラッカー『マネジメント』ダイヤモンド社を参考に作成)


また、ドラッカーは、マネジャーは人という特殊な資源を扱う立場にあり、そのうえで働く上司には特別の資質である「真摯さ(ひたむきで誠実なさま)」が要求されると言っています。そして、真摯さが欠如した行為として、以下のものをあげています。マネジャーに真摯さがあってこそ組織は成り立つのであり、人の弱さを問題にしたり、人を攻めることに重きを置いたりするマネジャーは、組織の精神を低下させると指摘しています。

真摯さが欠如した行為

① 強みよりも弱みに目を向けること。やがて組織の精神を低下させる。
② 何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つ。やがて組織全体を堕落させる。
③ 真摯さよりも、アタマのよさを重視する。そのような者は人として未熟である。
④ 部下に脅威を感じる。そのような者は人間として弱い。
⑤ 自らの仕事に高い基準を設定しない。そのような者はマネジメントと仕事に対するあなどりを生む。

(P.F.ドラッカー『マネジメント』ダイヤモンド社を参考に作成)

●チームマネジメントを行うには

チームマネジメントでは、ドラッカーは上司と部下の関係において、部下をパートナーと考えることの大切さを説いています。部下の強みを活かし、動機づけを行うことが重要と述べています。

チームマネジメントのポイント

① 人を正しく配置し、仕事を生産的にするとともに高い目標を持たせる。
② 担当者に、その仕事ぶりと結果に関するフィードバックを行う。
③ 仕事に必要な知識やフィードバックから判明した能力不足を補うための継続学習を支援する。
④ 仕事の分析や設計に部下を参画させる。
⑤ 事前承認によって使える経費の額など、部下の権限を明確にする。

(森岡謙仁『図解ドラッカー入門』中経出版を参考に作成)


人を率いるうえでいろいろな意思決定の場面に遭遇します。ドラッカーは成果をあげる意思決定を行ううえで必要となる5つのステップをあげています。そのヒントとなるのはムダな要素を極力省き、その本質において考えることです。

成果をあげる意思決定を行ううえで必要となる5つのステップ

① 「基本的な問題か、例外的な問題か」「何度も起こることか、個別に対処すべきか」を問う。
② 決定が満たすべき必要条件を明確にする。「その決定の目的は何か」「達成すべき最低限の目標は何か」「満足させるべき必要条件は何か」を明らかにする。
③ やがて妥協が必要になったときに間違った判断をしないために、決定において、何が正しいのかを考えておく。
④ 決定を行動に変える。最初の段階から行動への取り組みを組み込んでおく。
⑤ 決定の基礎となった仮定を現実に照らして、継続的に検証していくために、決定そのものの中にフィードバックを講じておく。

(P.F.ドラッカー『プロフェッショナルの条件』ダイヤモンド社を参考に作成)

ドラッカーの生涯の研究テーマは「どうすれば機能する社会が形成されるか」でした。ドラッカーは純粋に、企業も人もその機能が最大限に、合理的に発揮されるにはどんな条件が必要かと思考を巡らせました。目先のことに惑わされず、「究極の社会を見出す目標」に向けて活動する。ドラッカーの生きた時代に行われた数々の研究は、企業や人にとって今でも本質的な内容であり、自分の信念に従って考えを深めていったドラッカーの姿勢とともに、これからも私たちに大きな学びを与えてくれるはずです。

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