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(情報掲載日:2017年2月10日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

「働き方と人事業務」の未来を考える

vol.61


政府が進める「働き方改革」をはじめとした、企業における従業員の働き方に関する議論が活発になっています。人々の働き方が変わることで、人事業務はどのように変わるのか。企業にはどんな変革が求められるのか。これからの働き方の方向性と、その中で人事に求められる業務について考えます。

いま企業に求められる「働き方改革」

●政府による「働き方改革実現会議」

人事業務に大きな影響を与える「働き方改革」が政府主導で進められています。その具体策について議論する「働き方改革実現会議」は2016年9月に始まり、2017年3月までに取りまとめを行い、その後、関連する法律の改正案が順次国会に提出される予定です。「働き方改革実現会議」は安倍首相の私的諮問機関であり、首相、担当大臣を含む関係閣僚と有識者15人から構成されています。話し合われる議題は主に以下の9テーマです。


働き方改革実現会議の会議テーマ

・長時間労働の是正
・同一労働同一賃金の実現
・高齢者の就業促進
・賃金引き上げと労働生産性の向上
・雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成など
・女性の活躍やテレワーク・副業など、柔軟な働き方への環境整備
・働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備
・病気の治療、子育て・介護と仕事の両立
・外国人材の受け入れ


与党である自民党は、働き方改革を十分に検討すべき重要案件と考えており、「働き方改革に関する特命委員会」を設置しています。特命委員会は、自民党の政策部会である自由民主党政務調査会の中にあり、政調会長が特に推進したいと考える政策に関して設置されるものです。2016年12月に「働き方改革に関する特命委員会 中間報告」(※1)をまとめ、2017年2月には政府に最終的な提言を示す予定です。今後はここでまとめられた提言もひとつの参考としながら、「働き方改革実現会議」で取りまとめが行われます。それを元に国会で法律改正の話し合いが行われる予定です。


働き方改革関連法案の審議までの流れ
働き方改革関連法案の審議までの流れ


「働き方改革に関する特命委員会」がまとめた中間報告では、「長時間労働の是正」と「女性の活躍やテレワーク・副業など、柔軟な働き方への環境整備」について、次のように示されています。

長時間労働の是正

・労働基準法を改正し、36協定によっても超えることのできない罰則付きの時間外労働の限度を設ける。
・勤務間インターバルについては、当面は、これを導入する中小企業への助成金の創設や好事例の周知を通じて、労使の自主的な取組を推進することにより、将来的に規制導入を進めていくための環境を整えていく。

(「働き方改革に関する特命委員会 中間報告」※1より抜粋)


テレワークや副業・兼業の推進

・ガイドラインの制定も含めて、多様な政策手段について検討する。
・適切な形でのテレワークの導入や、長時間労働を招かない副業・兼業の推進などのため、労働時間管理の在り方を整理する必要がある。

(「働き方改革に関する特命委員会 中間報告」※1を参考に作成)


女性の活躍

・復職制度(再雇用制度)を持つ企業の情報公開を行う(ハローワークの求人票に復職制度の有無を記載するなど、離職者の復職制度がある企業を見える化する)。
・育児休業期間の延長を行う(育児休業期間を子どもが2歳になるまでに延長できるよう法案成立を目指す)。

(「働き方改革に関する特命委員会 中間報告」※1を参考に作成)

長時間労働の是正では、労働基準法の改正に触れ、36協定(時間外労働に関する労使協定)によっても超えられない限度を設けることを明記しています。勤務間インターバル(退社してから翌日に出社するまで一定の休息時間を設ける規制。例:休息時間が11時間の場合、24時に退社した翌日は11時以降からの勤務となる)については、将来的な導入を見据えた表現となっています。

また、テレワークや副業・兼業の推進では、長時間労働を招かない適切な制度導入のため、労働時間管理のあり方を整理することにも触れています。今後、企業は厳格な労働時間管理を行い、限度を超えない労働時間管理を行うことが求められます。女性の活躍では復職制度の充実が求められており、それを支援する周辺制度の整備を含め、企業のバックアップが求められています。

※1:「働き方改革に関する特命委員会 中間報告」
https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/133869_1.pdf


予測される「働き方の未来」

●2035年に予測される働き方とは

日本では、グローバル化や少子高齢化の急速な進行、IoT(Internet of Things: さまざまなモノに通信機能を持たせ、インターネットを介して情報を活用するしくみ)やAI(人工知能)等の技術革新の進展により、産業構造・就業構造や経済社会システムの大きな変化が予想される中で、個人の価値観の多様化が進んでいます。こうした中、すべての人が能力を最大限に発揮し誰もが活躍できる社会を実現し、個人の豊かさや幸せを向上させる必要があります。また同時に、生産性・企業価値の向上を通じた持続的で豊かな経済成長を可能とすることが期待されています。

そのためには、将来を見据え、一人ひとりの事情に応じた多様な働き方が可能となるような社会への変革を目指し、これまでの延長線上にない検討が必要です。そこで厚生労働省は、2016年1月〜7月に12回にわたり有識者を集め「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」懇談会を開きました。話し合われた内容は「働き方の未来2035」(※2)という報告書にまとめられています。

これまで人の働き方は主に企業側が決定し、その多くは時間や空間にしばられる働き方となっていました。報告書では2035年に予測される働き方として、AIを中心とした技術革新によって、時間や空間にしばられない働き方が可能となるとしています。そして企業も、人を抱え込んでビジネスを行う組織というポジションから、ミッションや目的が明確なプロジェクトが集まっている場へとその意味を変えていきます。人々は個人ごとに働くスタイルを選択し、業務のために個人が集まる場として企業が存在する時代になると予測しています。

今後、企業経営者には、企業の個性を磨き、魅力を高め、働く人から選ばれる企業を目指すことが求められるようになるでしょう。その意味では、働く人が企業という存在の価値を決めていくという構図が、今後はより多く見られると思われます。


2035 年に予測される働き方
2035 年に予測される働き方
(厚生労働省「働き方の未来2035」※2を参考に作成)

※2:厚生労働省「働き方の未来2035」
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000133449.pdf


これからの人事に求められる業務

●これから人事に求められる4つの役割

これからの人事には、従業員の働きやすさを確保しながら、個々の自由な働き方を創造し、それと同時に企業としての経営戦略を支えていくという「戦略的な人事」が求められます。変化の激しい経営状況に素早い打ち手を講じるためには、人事はこれまで以上に経営に近いポジションにいなければなりません。また、状況の変化を察知して、素早く対応していく力も必要になります。

著書『MBAの人材戦略』で知られる、米国ミシガン大学教授のデイビッド・ウルリッチ氏は、これからの人事が果たすべき役割として、以下の4つを定義しています。
1.戦略のパートナー(Strategic Partner)
2.変革のエージェント(Change Agent)
3.人材管理のエキスパート(Administrative Expert)
4.従業員のチャンピオン(Employee Champion)


これからの人事に求められる4つの役割
これからの人事に求められる4つの役割


人事は今後、「戦略のパートナー」として経営の声を聞き、「従業員のチャンピオン」として従業員の声を聞きながら、「人材管理のエキスパート」として人事業務を効率化し、「変革のエージェント」になって変革の先頭に立っていかなければなりません。



●求められるサーバントリーダーとしての人事

ウルリッチ氏は人事が業務を進めるうえで大事な視点として、「人事の活動は“何をするのか、できるか(Doable)”ではなく、“どういう価値や結果がもたらされるのか(Deliverable)”で考えなくてはならない」と語っています。人事は常に「誰に、何をもたらすことができるか」という観点で業務を考えるべきであるという考え方です。このような考え方を表す概念には、米国の元AT&Tマネジメント研究センター長であるロバート・グリーンリーフ氏が提唱した「サーバントリーダーシップ」があります。これは、まず相手を支援してから、相手を導くというリーダーシップです。人事はまず従業員に奉仕して信頼を得て、その信頼によって従業員が主体的に動くように導いていかなければなりません。

また、人の働き方が多様化するなかで、企業は人がそこで「働きたい」と思える場としての魅力を保持していく必要があります。その点においては、人事には企業の魅力となりうる経営理念や人材に対する考え方といった組織文化的な価値を守っていく役割も求められています。今後の人事は、「いかに魅力的な組織をつくっていくか」という役割の比重が上がっていくことになるでしょう。

政府の「働き方改革」が進めば、企業の人事は従業員が柔軟に働き方を選べるよう、制度や就業規程の見直し・変更に柔軟に対応していかなくてはなりません。今後、人事は個人の意向に気を配りながら、企業という集団のまとまりをつくるという難しい作業を任されることになるでしょう。それらをクリアするには、人事が前述の「4つの役割」を果たす機能を持ち、そのうえで「従業員を支えていく」という強い意志を持つことが求められます。

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