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(情報掲載日:2015年11月10日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

人と人の“間”を活性化する「組織開発」

VOL.46


組織開発は、「人と人」「人と組織」「組織と組織」といった関係性に注目し、変革に取り組むアプローチです。関係性がよくなることで、自発的に組織の問題解決に取り組んだり、効率的な組織活動を提案するといった風土を生み、組織としての健全性や目標に到達する力を高めることができます。大手企業でも実践するところが増えている組織開発の概要と取り組み例についてご紹介します。

なぜ組織開発が必要とされるのか

大企業の平均寿命は40年足らずしかなく、ほとんどの企業では「大企業病」ともいうべき、組織におけるコミュニケーションの障害が起こっています。マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院の上級講師であるピーター・M・センゲ氏は著書『学習する組織』で、大企業の多くで組織に「学習障害」が起きていると語っています。

経営に失敗する企業では、その企業が苦境にある証拠が事前に数多く見られ、マネジャーには気付いている人がいたとしても、その多くは見過ごされています。そのとき組織全体で「差し迫った脅威を認識できなくなっている」、「その脅威の意味合いを理解できなくなっている」、「別の方法を考えられなくなっている」状態になっていると指摘しています。企業が組織として事実に学ぼうとしない学習障害が起こる理由としては、下表のようなものがあります。

これらの障害は大企業だけでなく、中小企業であっても、仕事や組織における慣れの中で起こる可能性が十分にあるものばかりです。表にあるような場面では、そのほとんどで組織におけるコミュニケーション不足が影響しており、企業にはこのような状況から少しでも遠ざかる努力が求められています。その有力な解決策となるものが組織開発です。

企業に学習障害が起こる背景
(ピーター・M・センゲ『学習する組織』英治出版を参考に作成)

●組織開発とは何か

組織開発とは、人そのものではなく人と人の間に焦点を当て、組織の活性化を図るアプローチです。組織におけるマネジメントの課題にはハードとソフト、2つの種類があります。ハード面は「目的や戦略」「組織構造」「業務の手順や技術」「制度」。ソフト面は「その人の特性の開発」「関係性の開発」です。組織開発では組織のハード面だけでなく、人や関係性という組織のソフト面に注力して変革に取り組んでいきます。

日本企業はバブル崩壊後以降、成果主義での報酬制度や年功でない実力主義の役職配置など、組織のハード面に対する変革を行ってきました。しかし、外科手術的なハード面の施策だけでは、組織活性化や社員のモチベーション維持といった目的の達成が困難となり、企業の体質改善といったソフト面の施策が求められるようになってきています。特に最近の日本企業は、「ストレスが多く、活き活き働けない職場」「利益偏重の企業方針」「個業化が進む仕事」「ダイバーシティなど多様性への対応」といった課題を抱えており、その解決策として組織開発の手法に注目が集まっています。


組織開発における働きかけの手法

●組織開発における働きかけの種類

組織に起きる問題は、「戦略面」「技術・構造面」「人材マネジメント面」「ヒューマンプロセス面」と主に4つに分けられ、組織開発の手法もこの4つに分類できます。南山大学教授で組織開発に詳しい中村和彦氏は、著書『入門 組織開発』で研究者であるカミングス&ウォーリーが表した「組織に起きる4つの諸問題」と働きかけの例について語っています。これらを見ると、企業が直面している多くの問題に対し、組織開発の手法からアプローチできることがわかります。

組織における4つの諸問題と組織開発の働きかけ例
(中村和彦『入門 組織開発』光文社を参考に作成)

●人の感情をいかに動かし、行動を変えるか

組織開発は、相手があり、互いに改善への認識を持って、互いに影響し合いながら行うものですから、その解決は簡単ではありません。すべての課題において、人の感情を動かし、行動を変え、それを組織内に広げることが求められます。麻野耕司著『すべての組織は変えられる』では、心理学者クルト・レヴィンの態度の変容の3ステップが紹介されています。人の感情を動かし行動を変えるには、相手を理解することで心を溶かし、共感を引き出すことで、課題に対する双方にとっての解決策を導き出し、仕組み化する必要があります。人には「それまでのやり方を変えたくない」という現状維持を望む気持ちが存在するため、一度心を溶く必要があるのです。この3ステップは組織開発において広く活用できる方法といえます。

感情を動かし仕組み化する3ステップ
(麻野耕司『すべての組織は変えられる』PHP研究所より作成)


具体例にみる組織開発

●「対立解決」における組織開発セッション

さまざまな問題に対し組織開発の手法が用いられますが、ここではわかりやすい例として、部門間の対立を解決するセッションを紹介します。
以下はバーク著『組織開発教科書』に紹介されている手法で、5つのステップを3時間から半日をかけて行うものです。互いに本音を言い合って相互不信を解き、共感を引き出し、その解決策を全員で考え仕組み化します。ここには感情を動かして仕組み化に至る前述の3ステップが盛り込まれています。

事例:多くのアルバイトが働く居酒屋のホールとキッチンにおける改善セッション
(中村和彦『入門 組織開発』光文社より作成)

●組織開発の専門部署による現場介入

あるITサービス会社では、不活性な部署に人事を介入させて、活性化する試みを行っています。適切なタイミングで現場に介入するために、社外の人事サービスは利用せずに、社内に組織開発の専門部署を立ち上げました。人事のメンバーは最低限の介入型の組織開発スキルを学び、問題を抱えている部署に介入し、問題解決のための話し合いに参加します。そこでは問題が悪化しないように配慮しながら、改善への舵取りを行います。この試みが社内で評判となり、各部署からの依頼が増えているということです。

●辞めそうな人をフォローし、組織を活性化

また別のITサービス会社では、経営理念を軸に組織活性化を実現した例があります。人事が社員に「経営理念が実践できているか」についてアンケートを取ったところ、「セカンドチャンスを与える」ができていないとの声が多く寄せられました。実は新規事業の部署が失敗すると、そこのメンバーが大量に退職していたのです。そこで人事は、撤退可能性の高い部署があれば、その部署のメンバーに月1回面談するようにし、退職を思い留まらせる説得を始めました。思い留まった社員が異動となった後も、面談を続けてフォロー。そのうち、異動先で活躍する社員が出始め、そのことを社内で広報しました。結果、社員は「セカンドチャンスを与える」という実例を知るようになり、組織が活性化したということです。

組織開発は、人の「よりよい環境で働きたい」という思いを活かして組織を変える手法ともいえます。よりよい施策を行うには、普段から社員の声を拾い上げて、社員の変化に目を配る必要があります。そして、施策を実践する担当者には「どんな組織も変えられる」といった前向きな姿勢が求められます。

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