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(情報掲載日:2015年6月10日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

多様な価値観に応える「限定正社員」

VOL.41


限定正社員とは、仕事内容や勤務地、労働時間などが限定された正社員のことです。人材を囲い込みたい企業と、子育てや介護などを含めたワーク・ライフ・バランスの充実を図りたい労働者のニーズが合致し、近年、限定正社員制度は広がりつつあります。その反面、勤務地限定は企業側が人材を解雇しやすくなるとの指摘もあり、適正な運用についてさまざまな意見が出され、研究が行われています。

限定正社員が注目を集める背景

●限定正社員が注目される理由

限定正社員とは、いわゆる正社員と同様に無期労働契約でありながら、職種、勤務地、労働時間等が限定的な「多様な形態による正社員」を指します。正社員とは異なり、限定正社員は契約によって労働条件を限定することができます。限定正社員は安倍政権の経済政策“アベノミクス”の成長戦略の一つとなっており、企業は人材確保とより幅広い人材活用のため、社員は個々の事情を反映できる働き方として注目しています。

●限定正社員の種類

限定正社員には以下のような種類があります。



●限定正社員制度への期待

限定正社員は、今後進む少子高齢化に伴う労働人口の減少に向けて人材を囲い込みたい企業と、多様な働き方を望む働き手のニーズが合致し、広がりを見せています。


限定正社員制度への期待

今後は非正規社員から限定正社員への転換が進むことも予想されています。2013年の改正労働契約法により、勤続5年を超えた有期契約労働者の無期転換権が認められました。2018年には法の施行から5年目を迎え、限定正社員に移行するケースが増えると見られます。
また、2014年の毎月勤労統計調査(厚生労働省、※1)によれば、調査対象の事業所における一般労働者(パートタイム労働者以外の労働者)の残業時間は年173時間となっており、統計をさかのぼれる1993年以来、最長となっています。政府は限定正社員制度による残業時間の是正効果も期待しています。


●既存の限定正社員の活用実態

2012年に、政府が発足させた「多様な形態による正社員に関する研究会」が報告書を発表しています。企業アンケート(※2)によれば、限定正社員はこれまでにも存在しており、すでに活用している企業は約5割にも上ります。従業員数で見ると該当は32.9%で、従業員の約3分の1を占めています。内訳は職種限定85%、勤務地限定37%、労働時間限定14%で、業種を見るとサービス業42.7%、製造業17.7%、金融・保険業7.7%の順となっています。


厚生労働省 「多様な形態による正社員」に関する研究会報告書 企業アンケート調査結果概要をもとに作成

総務省の労働力調査(※3)によると、直近の正社員数は2014年12月以降、3カ月連続で前年同月を上回っています。2015年2月は58万人増の3277万人となり、比較可能な14年1月以降で最大の増加幅となりました。一方、2月の非正規労働者は15万人減の1974万人で、初めて減少しています。これらの要因の一つとして、限定正社員を新たに採用する企業数の増加があげられます。


※1:厚生労働省「毎月勤労統計調査」平成26年分結果確報 第5表 就業形態別月間労働時間及び出勤日数(一般労働者:調査産業計より)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/26/26r/26r.html

※2:厚生労働省 「多様な形態による正社員」に関する研究会報告書 企業アンケート調査結果概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000260c2-att/2r98520000026mhi.pdf

※3:総務省 「労働力調査」
http://www.stat.go.jp/data/roudou/

企業事例に見る限定正社員

●多くの企業が新たな限定正社員制度を導入

最近では、これまでパートやアルバイト、契約社員といった有期雇用が多かったサービス業や小売業、IT企業の大手企業を中心に、新たに限定正社員制度を導入する動きが目立っています。


企業事例

多くの非正規社員を抱える企業では、制度導入で正社員に移行することで、給与が上がり、保険料や退職金などの費用も必要となるため、2割程度の人件費アップが予想されています。しかし、人材が固定化されることで採用費や教育費が抑制されることになり、それによって補える費用部分もあると見られています。

制度活用で企業が留意すべきポイント

●限定正社員の活用に当たっての留意事項

このように多くの企業で採用されている限定正社員制度ですが、限定正社員を選んだ社員が不利にならないように運営するには課題もあり、導入に際しては留意が必要なポイントがあります。厚生労働省の「多様な形態による正社員」に関する研究会報告書概要(※4)には、いくつかの留意事項が記載されています。


主な留意事項
厚生労働省 「多様な形態による正社員」に関する研究会報告書概要をもとに作成

●活用度を上げるためには「自由度の高い転換」が必要

限定正社員制度を定着させ、また最大限の効果を得るには、正社員と限定正社員の間で相互に転換しやすい柔軟な仕組みが必要だと考えられます。それによって特定の正社員区分への固定化が防止され、また、正社員として子育てしながら働き続ける等、ワーク・ライフ・バランスの観点を最大限活かすことができるようになります。


●処遇や能力開発に求められる「合理的な処遇水準」

「多様な形態による正社員」に関する研究会報告書の企業アンケート調査で、現在の雇用区分から転換せずに昇進できる管理的ポジションの上限を聞いています。正社員では「上限なし」が7 割を超えますが、限定正社員では「上限あり」が48.6%と約半数の企業は上限を設けています。
また、教育訓練の主な方針について聞いたところ、正社員では過半数が「長期的な視点から、計画的に幅広い能力を習得させる(54.6%)」とする一方で、限定正社員では「業務の必要に応じてその都度、能力を習得させる(38.6%)」が最も多くなっています。
昇進・昇格、能力開発その他の処遇水準については、労使間の協議などを踏まえて、多様な形態による正社員の働き方に応じて考え、正社員との均等・均衡を考慮することが望ましいと思われます。差を設ける場合でも、双方の労働者が納得できる合理的な水準となるよう工夫することが求められます。また、制度そのものについても硬直的な運用にならないように配慮し、臨機応変に中身を見直すことが求められます。


●解雇については、より慎重なルール化と事前説明が必要

限定正社員制度において、労働者がもっとも不安に思うのは解雇についての問題でしょう。限定された働き方の需要がなくなったときに雇用が保たれるのか。特に勤務地限定正社員の場合、事業所閉鎖時に解雇されやすくなるのではとの不安があります。この点について、「多様な形態による正社員」に関する研究会報告書では、以下のような段階的な対応を図る企業事例について紹介しています。


事例に見る事業所閉鎖時の段階的対応
厚生労働省 「多様な形態による正社員」に関する研究会報告書(※5)をもとに作成

政府は解雇の問題について、法的な拘束力を持たないガイドラインに留めるのか、限定正社員の解雇ルールを立法化するのか、現在検討中です。解雇が認められるような法的拘束力のある仕組みが整備されれば、雇用の保障が失われる可能性もあります。労働契約法16条には「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められており、当然、限定正社員もこの規定の適用を受けています。解雇の問題については、今後の動向が注目されます。

労働問題の多くは労使の思い違いによります。限定正社員制度を広く活用するには、解雇等に関する取り決めを事前にしっかりと行い、「思い違い」がないように運用することが大切です。そのためには雇用契約書や就業規則にはっきりと明記し、さらに人材採用時にもしっかりと説明し、理解を得たうえで採用することを徹底すべきです。法整備も必要なことですが、企業は法に委ねるばかりでなく、労使間における相互理解を深めていくことが大切です。

限定正社員は企業と労働者双方のニーズから生まれたものと言えますが、今はまだ過渡期であり、制度内容やケース対応については双方で思案されている状況にあります。雇用制度は、その制度を従業員が受け入れ、存分に活用し企業の業績に貢献するといった正の循環が生まれない限り、浸透することはありません。限定正社員制度についても今後活発な意見交換が行われ、ベストな形で活用されることが望まれています。


※4:厚生労働省 「多様な形態による正社員」に関する研究会報告書概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000260c2-att/2r985200000269ak.pdf

※5:厚生労働省 「多様な形態による正社員」に関する研究会報告書
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000260c2-att/2r98520000026mgh.pdf

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