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(情報掲載日:2015年5月11日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

「ストレスチェック義務化」に備える

VOL.40


2014年6月に公布された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」により、企業にストレスチェックと面接指導の実施を義務付ける制度が創設されました。2015年12月からは、従業員数50人以上の事業場で、従業員のストレスチェックが義務化されます。心のケアが初めて制度化されることになり、企業の人事部門には制度をスムーズに根付かせること、またストレスチェックを従業員ケアに最大限活かすことが期待されています。

ストレスチェック義務化の背景と概要

●ストレスチェック義務化の背景

近年、メンタルヘルスの不調を訴える人が増えています。精神障害による労災請求件数(※1)は、2013年に過去最多を記録しました。5年前の2008年と比較すると、1.5倍を超える増加となっています。また、年間自殺者数も2014年は2万5374人(速報値)(※2)と依然として高水準となっています。厚生労働省「人口動態調査」(2013年)(※3)によれば、20歳〜39歳の働き盛り世代の死因1位は自殺となっています。


厚生労働省「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」をもとに作成

労働安全衛生法では、これまで月の時間外・休日労働時間の長さによって面談指導を行うなどの規定はありましたが、メンタルヘルス不調についての規定はありませんでした。今後は労働の時間といった「量」だけでなく、メンタルヘルス不調の要因になり得る傾向といった「質」に関わる管理も必要になります。この「質」については、取り組みが遅れている企業が多く、総合的なメンタルヘルス対策の促進のための施策が必要とされていました。以上のような背景から、ストレスチェックが義務化されることになりました。


●ストレスチェックの概要

今回導入されるストレスチェック制度では、定期的に労働者のストレス状況について検査を行い、結果を本人に通知して改善を促します。また、早期にメンタルヘルス不調を発見し、医師による面接指導につなげ、未然にメンタルヘルス不調を防ぎます。ただし、労働者にストレスチェックを受ける義務は課されていません。


ストレスチェックの詳細
厚生労働省「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳」改正労働安全衛生法のポイント(メンタルヘルス関連のみ)をもとに作成

●ストレスチェック実施の流れ

ストレスチェックの流れ(※4)は以下のようになります。チェック結果は労働者本人に通知され、結果から労働者本人が自身の状態に気付いてケアの必要があると思えば、@労働者が面接を事業者(企業等)に申出→A事業者から医師に面接実施を依頼→B医師が労働者に面接指導→C指導後に事業者は医師から意見聴取→D必要があれば就業上の措置が実施されます。高ストレスと判定された労働者でなくとも面接指導を依頼することは可能であり、また、この時点でも労働者が同意しなければストレスチェック結果が事業者に通知されることはありません。


ストレスチェック制度の流れ
厚生労働省「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳」改正労働安全衛生法のポイント(メンタルヘルス関連のみ)より


●労働者に対する不利益取扱いの防止

ストレスチェック制度の実施により、労働者が不利益な取扱いを受けることがないよう、企業は以下のことに配慮する必要があります。不利益な取扱いの例としては、解雇、降格、減給、昇進・昇格での不当評価、不当な配置転換などがあげられます。今後、労使や専門家の意見を聞きながら検討が進められ、不適当と考えられる事例を指針等で示すことが予定されています。


労働者への不利益取扱いの詳細
厚生労働省「事業者ならびに産業保健スタッフの皆様へ」資料をもとに作成(※5)


●ストレスチェックの調査票

ストレスチェックは従業員が回答した「調査票」をもとに行われます。ストレスチェックの調査票には、「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3領域が含められる予定です。どのような調査票を採用するかは事業者が選ぶことができますが、国は標準的な調査票として「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」(※6)を推奨する予定です。検査頻度は今後省令で定められる予定で、毎年1回とすることが想定されています。


職業性ストレス簡易調査票(抜粋)
厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票質問紙」より抜粋

※1 厚生労働省「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000049293.html

※2警察庁「自殺統計」
http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/H26_tukibetujisatushasuu_sokuhouchi.pdf

※3 厚生労働省「人口動態調査」(2013年)第5.17表 性・年齢別にみた死因順位
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&listID=000001108740&requestSender=dsearch

※4 厚生労働省「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳」改正労働安全衛生法のポイント(メンタルヘルス関連のみ)
http://kokoro.mhlw.go.jp/etc/kaiseianeihou.html

※5 厚生労働省「事業者ならびに産業保健スタッフの皆様へ」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/kouhousanpo/

※6 厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票質問紙」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/kouhousanpo/summary/pdf/stress_sheet.pdf



義務化開始までに企業が準備すべきこと

●ストレスチェックをどのように実施するかを考える

健康診断のように、ストレスチェックの実施を外部機関に委託しても問題はありません。また、ストレスチェックと健康診断を、同じタイミングで併せて実施することも可能です。ただし、外部委託で実施する場合も、ストレスチェックの結果に実施者から直接労働者に通知する必要があり、労働者の同意なく事業者に通知してはならないという点に注意する必要があります。健康診断とストレスチェックとでは扱いが違うため、きちんと分けて考える必要があります。


●面接指導への抵抗感を払拭する

ストレスチェックの結果通知で、高ストレスの判定を受けた者が誰なのかを企業が知ることはありません。しかし、労働者が面接指導を受ける場合は事業者である企業に従業員自ら申し出ることになるため、企業はそこで対象者を知ることとなります。ここで「高ストレスと知られると、社内での扱いが悪くなるのではないか」と考え、面接の申出といったアクションを起こさない従業員が出る可能性があります。とくに高ストレス者には、仕事で活躍し、将来を有望視されて気負う従業員も多いため、尚さらそういった行動を取る可能性があります。そこで本人に面接指導をきちんと受けてもらうために、判定した医師等から本人宛に、手紙やメールなどで面接指導の必要性をきちんと説明することが求められます。企業は「面接指導を受けることが、本人に不利に働くことはない」といったアナウンスを丁寧に社内に向けて行い、不利益な取扱いをしないことについて従業員から信頼されるよう努力する必要があります。


●秘密が守られる相談窓口の設置

高ストレス者が自ら申し出ない可能性が高いような場合、申出の秘密が守られる相談窓口をつくるといった手法が有効になります。産業医や保健師などによる相談窓口を社内につくったり、外部機関に窓口業務や相談業務を委託するといった方法が考えられます。企業には、いかに安心して相談できる場をつくれるのかが求められています。


●ストレスが職場に起因するときの対処法を考える

面接指導の結果、高ストレスの原因が職場にあるとわかった場合、就業環境を改善することが求められます。いかに医師等と職場がスムーズに連携できるのかが、その後の高ストレス状態改善につながります。そのため事前に、医師から会社への情報および対応の流れをどのように行うかを決めておく必要があります。その上で就業上の措置として、業務量の調整、就業場所の変更、配置転換、労働時間の短縮、深夜業務の縮小といった方策を取ることになります。

実際に職場改善を行うには、職場をよく知る産業医や衛生委員会の機能を強化するといった施策が必要になる可能性があります。具体的には、より詳細に該当者にヒアリングを行ったり、企業に対して改善提案ができる場やルートを整備し、改善を促せるようなポジションを与えるといった内容になります。

ストレスチェック実施Q&A

Q.なぜ、労働者にストレスチェックを受ける義務は課されなかったのでしょうか?

A.労働者のメンタルヘルスに関する情報という、極めて機微性の高いものを取り扱うこと、既にメンタルヘルス不調で治療を受けている者にとっては、ストレスチェックを受けなければならないこと自体が精神的負担を与えるおそれもあることから、希望しない労働者にまで一律に義務づけることは適当でないとの意見を踏まえ、労働者がストレスチェックを受ける義務の規定は設けられませんでした。労働者はストレスチェックを受けなくても法令違反にはなりませんが、メンタルヘルス不調を未然に防止するためにも、ストレスに気付くことは重要になります。できるだけ検査を受けてもらうことが望ましいと考えられます。そのため、事業者には実施までにストレスチェックの意義を丁寧に周知させる努力が必要であり、また、受けることで不利益な取扱いを受けないことを従業員に約束するといった姿勢が求められます。


Q.ストレスチェックの実施により、労働者のメンタルヘルス不調の予防に資するという根拠はあるのでしょうか?

A.現在、ストレスを評価するための調査票としては、産業現場で広く活用されている57項目の「職業性ストレス簡易調査票」があります。この調査票は、1995年から1999年までの厚生労働省の委託研究により開発されたもので、約1万2000人を対象とした試験的調査により、その信頼性、妥当性が統計学的に確認されているものです。ストレスチェックの具体的な項目は、今後、この「職業性ストレス簡易調査票」などを基本に、労使や専門家の意見を聴き検討を行い、標準的な内容が示される予定です。また、ストレスチェックを効果的に実施するための手法等についても示される予定となっています。


Q.外部機関にストレスチェックの実施を委託した場合、ストレスチェックを実施したその機関の医師等は、産業医に結果を提供しても問題ないのでしょうか?

A.産業医がストレスチェックの企画・評価に関わり、実施者となる場合には問題ありませんが、産業医が実施者とならない場合には、その産業医は事業者側と見なされるため、労働者の同意なく結果を提供してはならないことになります。このように産業医がストレスチェックの実施者とならない場合はチェック結果の扱いが複雑になるため、できる限り、産業医はストレスチェックの実施者となることが望ましいといえます。


Q.面接指導の結果は、労働者の同意なく事業者が把握しても構わないのですか?

A.面接指導は労働者の申出に基づくものであり、面接指導の結果、事業者は必要に応じて労働者の健康の確保ため、就業上の措置を講じなければなりません。そのため、事業者は面接指導を実施した医師からその結果を入手することとなっており、労働者の同意なく、その結果を把握することができます。

ストレスチェック制度は、従業員の精神という目に見えないものを扱うだけに、検査の実施には細心の注意が求められます。今後、ストレスチェックを根付かせメンタルヘルス不調を未然に防ぐようにするには、事業者、従業員、実施者による情報交換や話し合いが不可欠です。企業の人事部門、産業医などが積極的に取り組み、早期に信頼関係を築くことが求められます。

以上、厚生労働省「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳」Q&Aより作成
http://kokoro.mhlw.go.jp/etc/kaiseianeihou.html

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