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(情報掲載日:2014年8月11日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

個別労働紛争の実態と企業の対応策のポイント

VOL.31


個別労働紛争の相談件数は年々増加し、ここ数年は年間25万件前後という高い数字で推移しています。相談内容は、当初は「解雇」が一番多かったのに対して、最近では「いじめ・嫌がらせ」が増加しています。平成13年10月に発足した個別労働紛争解決制度に持ち込まれる相談の実態と主な解決事例、予防策をご紹介します。

「いじめ・嫌がらせ」に関する労働相談が増えている

●労働相談は6年連続で100万件を突破

平成13年10月に「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行されたことにより個別労働紛争解決制度が始まり、以後、厚生労働省から施行状況が毎年報告されています。都道府県の労働局、労働基準監督署、主要都市の駅周辺ビルなどに設けられた総合労働相談窓口に寄せられた相談件数および民事上の個別労働紛争相談件数はともに増加の一途をたどりました。中でも平成20年度の増加率が著しく、これは同年9月に起きたリーマンショックの影響が大きいと考えられます。
また最近は6年連続で100万件を超え、平成25年度は105万42件にのぼりました。そのうち、明らかな労働基準法等の違反に係るものを除き、労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争になった「民事上の個別労働紛争」は24万5,783件にのぼりました。

厚生労働省「平成25年度個別労働紛争解決制度施行状況」
厚生労働省「平成25年度個別労働紛争解決制度施行状況」(※1)

●「いじめ・嫌がらせ」「自己都合退職」が3年連続で増加

ここ数年では総合労働相談、個別労働紛争相談ともに件数の増加傾向が一段落し、全体の件数は横ばい状態にありますが、相談内容の内訳は以前とは違ってきています。例えば、相談件数が増加した平成20年度の民事上の個別労働紛争相談の内訳を見ると、多い順に「解雇」67,230件(25.0%)、「労働条件の引下げ」35,194件(13.1%)、「いじめ・嫌がらせ」32,242件(12.0%)、「退職勧奨」22,433件(8.4%)などとなっていますが、平成25年度の民事上の個別労働紛争に係る相談件数の内訳を見ると、「いじめ・嫌がらせ」の59,197件(全体の19.7%)が「解雇」の43,956件(同14.6%)を抜いて最多となっています。3番目が「自己都合退職」の33,049件(同11.0%)、4番目が「労働条件の引き下げ」の30,067件(同10.0%)でした。このうち「いじめ・嫌がらせ」及び「自己都合退職」については3年連続の増加、「解雇」及び「労働条件の引下げ」については3年連続の減少となっています。
増加している「いじめ・嫌がらせ」の背景については、①企業間競争の激化による社員への圧力の高まり、②職場内のコミュニケーションの希薄化や問題解決機能の低下、③上司のマネジメントスキルの低下、④上司の価値観と部下の価値観の相違の拡大などが考えられます(※2)。

最近3カ年度の主な紛争の動向 (単位:件)
厚生労働省「平成25年度個別労働紛争解決制度施行状況」(※1)
厚生労働省「平成25年度個別労働紛争解決制度施行状況」(※1)

●非正規労働者からの相談が増えている

民事上の個別労働紛争相談件数について、相談者の雇用形態別に集計したデータがあります。これを見ると平成14年度は正社員からの相談が53.6%を占めていたのに対し、平成25年度は正社員の比率が39.7%まで減少しました。その他の雇用形態は、パート・アルバイト16.5%(平成14年度は16.3%)、期間契約社員10.9%(同3.9%)、派遣労働者4.1%(同2.6%)、その他・不明28.8%(同23.6%)の順に多くなっています。
期間契約社員及び派遣労働者からの相談件数の比率が高まっている理由としては、平成20年のリーマンショック時に「雇止め」をめぐるトラブルが急増して、社会問題となったことが関係していると考えられます。「雇止め」の相談件数は、平成19年度に7,886件だったのが平成20年度に12,797件に急増し、その後も減少することなく、平成25年度は12,780件となっています。
「雇止め」とは、有期雇用契約において雇用期間を更新せずに契約を終了させることをいいます。 有期雇用契約は雇用期間を定めた契約であり、期間が満了すれば終了するのが原則です。当該有期雇用契約が複数回にわたって更新が繰り返され、雇用期間も長期に及んでいる実態がある場合等、実質的に期間の定めがない雇用契約と変わらず、労働者側も更新されるとの期待を抱くような状態にある場合の「雇止め」は、判例上、正社員を解雇する場合と同様に扱われ、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は」(労働契約法第16条)、無効となります。
これを「雇止め法理」といいますが、平成24年施行の改正労働契約法では「雇止め法理」がそのままの内容で法律として規定されました。また、新たに「5年ルール」すなわち有期雇用契約が通算で5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換するというルールが定められました(※3)。

※1 厚生労働省「平成25年度個別労働紛争解決制度施行状況」
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10401000-Daijinkanbouchihouka-Chihouka/0000047216.pdf

※2 厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000021hkd.html

※3 テンプスタッフ ナレッジマガジン Vol. 25「改正労働契約法“5年ルール”への対応策」
http://www.tempstaff.co.jp/magazine/nippon/vol25.html

個別労働紛争の公的な解決制度とは

●3種類の対応で解決を図る

個別労働紛争解決制度は、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づく制度であり、①総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談等、②都道府県労働局長による助言・指導、③紛争調整委員会によるあっせんの3種類の解決方法が用意されています。
解雇、雇止め、いじめなどの問題をめぐり、労働者と事業主の間で紛争が発生した場合、企業内における自主的解決が図られない場合に、労働者もしくは事業主は都道府県労働局にある総合労働相談コーナーへ相談を持ち込むことになります。この場合、都道府県労働局は都道府県にある労政主管事務所や労働委員会、裁判所、法テラスなどと連携をとり、個別相談対応および情報提供を行います。この段階で解決しない場合は、「都道府県労働局長による助言・指導」や「紛争調整委員会によるあっせん」による解決が図られます。また、①を経ずに②、③で解決を図ることも可能です。

●都道府県労働局長による助言・指導で扱う範囲

都道府県労働局長による助言・指導の対象となる範囲、ならない範囲は、下記のとおりとなっています。

厚生労働省「職場のトラブル解決 サポートします」 (※4)をもとに作成
厚生労働省「職場のトラブル解決 サポートします」 (※4)をもとに作成

●「助言・指導」の事例

都道府県労働局長による「助言・指導」の制度は、行政機関が紛争の当事者に対して、紛争に係る事実関係を調査し整理したうえで、法令や判例等に照らして問題点を指摘し、主に文書の交付で解決の方向性を示すように助言・指導を行い、これを受けて当事者が話し合いの場をもつなどして自主解決できるように支援するものです。この制度の具体的な事例として、厚生労働省のパンフレット(※4)には次のような2事例と事業主、労働者の声が紹介されています。

厚生労働省「職場のトラブル解決 サポートします」 (※4)をもとに作成
厚生労働省「職場のトラブル解決 サポートします」 (※4)をもとに作成

●紛争調整委員会によるあっせんの特徴

あっせんは、紛争当事者である事業主と労働者の間に、公平・中立な第三者として弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家からなる紛争調整委員会が介入し、双方の主張の要点を確かめ、双方から求められた場合には、両者が採るべき具体的なあっせん案を提示するものです。
あっせんの特徴としては、①手続きが裁判に比べて迅速・簡便、②専門家が担当する、③利用は無料、④双方から受諾されたあっせん案は民法上の和解契約の効力をもつ、⑤非公開で行われるのでプライバシーが保たれる、⑥労働者があっせん申請をしたことを理由として解雇その他の不利益な取り扱いをされることは法律で禁止されている等があります。

●あっせんの手続きはどのように行われるのか

あっせんの手続きは、都道府県労働局総務部企画室および最寄りの総合労働相談コーナーに、あっせん申請書(※4)を提出することから始まります。これを受けて、都道府県労働局長が紛争調整委員会へあっせんを委任します。その後、事業主、労働者の双方にあっせんの開始通知がなされ、あっせんの参加・不参加の意思確認が行われます。このとき、通知を受けた一方の当事者が、あっせんの手続きに参加する意思がない旨を表明したときには、あっせんは実施されず、打ち切りになります。
双方の合意を得てあっせんが開始される場合は通常、次のように進められます。あっせんが行われる期日が決定された後、あっせん委員が①紛争当事者双方の主張の確認及び必要に応じて参考人からの事情聴取をし、②紛争当事者間の調整と話し合いの促進を経て、③両者が採るべき具体的なあっせんを行います。紛争当事者双方があっせんを受諾するか、その他の合意が成立すれば終結し、合意が成立しなかった場合は、あっせん打ち切りとなり、他の紛争解決機関の説明・紹介が行われます。

●あっせんによる解決事例

あっせんの事例としては、下記のような事例があります。解決法としては、解決金を支払うことで合意が成立するケースなどがあります。

あっせんによる主な解決事例
埼玉労働局「紛争調整委員会によるあっせん事例」(※5)をもとに作成
埼玉労働局「紛争調整委員会によるあっせん事例」(※5)をもとに作成

※4 厚生労働省 都道府県労働局「職場のトラブル解決 サポートします」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/dl/01a.pdf

※5 埼玉労働局 紛争調整委員会によるあっせん事例
http://saitama-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/assen-jirei.html

紛争を予防するには

●紛争事例をもとに雇用契約や対応マニュアルの見直しを行う

前述のとおり、全国の各都道府県労働局はホームページで解決事例を紹介していますので、この事例をもとに社内で雇用契約のあり方や労働法対応マニュアルの見直しを行うことで、紛争を未然に防ぐ準備ができます。場合によっては、裁判に持ち込まれた事例から予防策を検討することも必要かもしれません。

●自主的解決を図れる相談窓口を設ける

上記のほか、自主的解決を図れる相談窓口の常設等が、個別労働紛争の予防および早期対応に効力を発すると考えられます。個別労働紛争の中には、労使間のコミュニケーション不足が発端となっているものも少なくないようです。相談窓口を設けることにより、相談対応、情報提供、事実関係の調査、解決策の提案、当事者間の話し合いの場の調整、似たような問題が再発しないための再発防止策の提案、労働契約書や労働法対応マニュアルの整備といった作業をシステム化して一元的に行うことができるでしょう。

個別労働紛争が発生すると、事業主側、労働者側の双方に大きな負担がかかります。事例によっては、企業にとって不名誉な噂が流布される場合もあり、社会的信用に傷がつくリスクもあります。裁判になれば、判例の中に企業名が半永久的に残る場合もあり、そのリスクは賠償額以上に及ぶかもしれません。紛争事例を「対岸の火事」として見過ごすことなく、紛争事例の背景とその解決策、根拠となる労働法等を踏まえ、法務部門と人事部門が協力して予防策を準備することが望ましいでしょう。

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