メールマガジンの定期配信をご希望のお客さまは以下のボタンからお申込みください。

配信申込⁄停止

(情報掲載日:2012年3月21日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

人事部の果たす役割は、調整機能から「現場」の課題解決機能へ

「現場」を巻き込んだマネジメントを、いかに実現していくか

VOL.3

昨今、人事部に求められている役割が変化してきていると言われています。経営を取り巻く環境が大きく変化していることに伴い、経営資源として「人材」を最大限に活用することが期待されています。そこで人事部には、これまでの要員管理を中心とした組織の調整的な役割から、現場の課題を把握し、それをともに解決していくといった、現場を巻き込んだマネジメントが求められています。では、そのために人事部はどのような働きかけを行っていけばいいのでしょうか。

人事部に対する期待は、法令・人事制度から、人材育成・モチベーションへ

これまでの人事部は労働条件や勤怠、労働関係などの労務管理や、人事制度の運用とメンテナンス、採用・異動や昇進・昇格、人事考課などの調整といった業務が中心となっており、どちらかと言うと組織の調整役としてのイメージがありました。

財団法人労務行政研究所が2010年に実施した「人事部門の役割・課題と人事担当者の育成に関する実態調査」を見ると、「人事部門の役割に関する現状の取り組み状況」と「将来の重要度」に関する項目がありますが、現状の取り組み状況の上位3項目は「労働に関する法令遵守など」「人事制度の企画立案」「人事制度の効果的運用」であり、法令や人事制度に関する項目が上位にきています。ところが、将来の重要度の上位3項目では、「人材の育成」「従業員の健康(メンタルヘルスを含む)」「従業員のモチベーションアップ」であり、法令や人事制度よりも、人材育成やモチベーションに関する項目が上位になっています。特に、「従業員のモチベーションアップ」と「現場リーダーの人材マネジメントに関する支援」については、現在の割合に対して将来の割合が30ポイント以上高くなっており、今後の人事部が果たす役割として注目されています。これらの結果を見ても、人事部に求められる役割が変化していることが分かります。

*図表:現在、力を入れているものと、将来、重要度が高まると思うものの上位10位の比較(%)

*図表:現在、力を入れているものと、将来、重要度が高まると思うものの上位10位の比較(%)

近年は事業戦略を実現するための施策を、いかにスピード感をもって実行していくかという経営側に立った視点が強く言われてきています。しかし、経営側に立った視点が求められているにも関わらず、調整役の域を脱しないと現場から遠ざかってしまい、人材を最大限に活用することはできません。

これからの人事部は現場へと積極的に入り込んでいき、現場の抱える問題点や課題を知ることが大切です。まず管理職に対して現場の抱える問題点や課題を聞きますが、最近では求められる仕事の内容が複雑化、高度化してきており、管理職も問題点や課題を知り尽くすことは難しいため、メンバーからもヒアリングし、それらを解決するための効果的な施策や仕組みへと落とし込んでいく必要があります。

人事部が現場と連携を取りながら、人材育成やモチベーション向上を図っていくことが、最近の人事部に期待される役割として非常に大きくなってきています。

仕事を通じた達成感と成長感が、人を行動に駆り立てていく

経営資源には、「人材」「物」「金」の3つがありますが、人材が物や金と大きく異なるのは、「心」を持っていることです。人というのは、心のあり方や気の持ち方一つで、パフォーマンスが大きく違ってきます。例えば同じ人材でも、働きがいを感じて仕事をしている時と、そうでない時とではパフォーマンスが大きく異なってきます。また、置かれた環境を前向きに捉えることができるかどうかでも変わってきます。だからこそ、人材に対して適切な対応が求められてくるのです。

一時期、成果主義が積極的に企業に取り入られた時期がありましたが、うまくいかなかったケースが多いようです。これも、人の心の部分にあまり注意を払わず、成果ばかりにこだわりすぎたためだという見方もあります。

では、人材を最大限活用するためには、何がポイントとなるのでしょうか。ここでポイントとなるのは、個人的要因と環境的要因です。個人的要因とは、個人が持つ目標や能力、意欲など、個人に関することです。一方、環境的要因とは、組織風土や教育制度・処遇など、働く人に関わってくる外部環境や諸体系のことです。これらが、人の行動に影響を与えると考えられます。
その中でも特にポイントとなるのは「意欲」であると考えられます。従業員がいきいきと働き、成長している企業では、働く人の意欲に対して働きかけを行っているケースが非常に多くなっているからです。具体的には、仕事を通じた達成感と成長感への働きかけです。

そのためには仕事に求められる意味・役割を紐解き、期待される成果を達成するためにはどのようなプロセスが必要となってくるのか、また、それを行うことでどのような成長を遂げることができるのか、ということへの理解を深めてもらうことが必要です。このように仕事の意義を理解してから働くことにより働きがいが感じられ、行動が促進されていきます。

上司と部下との面談で少し上の目標を設定し、達成感・成長感を得る

達成感や成長感のある仕事とは、何も特別なものではありません。目標設定をどのように置くかで、それが可能となります。目標は会社から与えられる数値目標などのほかに、現場で上司と部下が面談を行い、両者のすり合わせによって決める目標があるケースが多いようです。後者のような目標においては、現場の上司に目標設定する権限をもたせ、本人にとって多少困難は伴うけれども、挑戦のしがいのある目標を設定することで、達成感や成長感を得ることができます。しかし、そのような仕事は、今自分の持っている能力やスキルより高いレベルが求められることが少なくないので、必ずしも予定通りに仕事が進んでいくとは限りません。場合によっては、高い目標を設定したために、目標を達成することができなくなってしまった、というケースが出てくることがあります。すると、達成感や成長感を得られないだけでなく、失敗体験による意欲低下や失敗グセがつき逆効果になってしまう可能性があります。

このようなことをなくすためには、目標を設定するだけでなく達成させるためにサポートする必要があります。最終的な目標に到達するまでの間に幾つかの段階を設け、具体的なチェック項目を用意することです。それらの段階でどの程度できているか、どこがまだ未達成なのか、その原因は何か、それをクリアしていくにはどのような対策が必要かなど、上司と部下による面談を実施し、キメ細かなフォローを行うことが大切です。さらには、ここで明らかとなった部下の強化すべきポイントについて、具体的なプランに落とし込んでいくことも必要です。研修だけではなく、OJT、自己啓発、職場での勉強会などいろいろな手段の中から適切なものを選んで、いつまでにこういう形で強化していくというアクションプランを作成していくことです。

このように、少しずつ高い目標を目指しながら最終目標達成ができる仕組みを、人材育成と絡めながら人事部が現場と一緒になって策定していくことです。この流れを進めていくことにより、現場にもより高い目標を目指していこうとする風土が形成されていきます。そうすれば部下も、仕事への達成感や成長感を覚えていきます。また、このような現場を巻き込んだ人材マネジメントへの取り組みが、現場を活性化していくことでしょう。

現場を巻き込んだ人材育成に、どう取り組むか

また、最近人事部では、現場を人材育成の「場」としていくという考え方がより強くなっています。人事部が現場のリーダーのマネジメント能力を上げていく支援をしたり、さまざまな人材育成の機会を現場に持ち込むなど、「現場を主体とした人材育成」の取り組みに力を入れているようです。

その時、人材育成においてキーとなるのは現場の上司です。しかし上司にしてみれば、「人を育てたいという気持ちはあるが、現場ではそれどころではない。やるべきことが多くて、とても人を育てていくような時間がない」というのが実情かもしれません。そのためでしょうか、単に提示された研修に部下を出すことが、人材育成だと思っている上司が少なくようです。研修から帰って来ても、研修内容の感想は聞くけれども、部下に何か変化があったのか、パフォーマンスは上がっているかなどについて、あまり関心を持たない上司が多いのです。部下の育成は上司にとって最も重要な仕事の一つであるため、人材育成においては上司に対する働きかけがとても重要になってきます。

【事例紹介】上司が人材育成の責任者となり、職場を学びの「場」としていく

ある大手電機メーカーA社では、以下のように人事部スタッフが現場の上司を一人ひとり説得に回っています。

「人材育成の目的は、職場のパフォーマンスを上げることであり、そのためには一人ひとりの仕事のパフォーマンスを上げることが不可欠です。部下が正しく知識・スキルを身に付けて、仕事への達成感や成長感を覚え、一人前のプロとなっていくにはどうしたらいいのかを考えてください。そのために、ぜひとも現場の上司であるあなたが、人材育成の責任者となってください」

当初はなかなか理解を得ることが難しかったようですが、後述する上司同士の「対話の場」や他事業部リーダーへの「弟子入り」制度、人事制度の見直し作業を行うプロジェクトに参加してもらうなどの機会を通して、現場の上司が人材育成の責任者となること、そして現場全体で人材育成へと取り組むことの大切さを徐々に分かってもらえるようになりました。現場を学びの「場」として、一人ひとりのパフォーマンスを向上させ、職場全体のパフォーマンスを上げていく、そうすれば上司である自分の評価も上がっていくことが分かり、その結果、人材育成に対するモチベーションも高まっていきました。

ポイントは、仕掛け役としての人事部が、現場にどのような学びの「機会」となるものを提供していくことができるのかということです。A社では試行錯誤を繰り返しながら、以下のような取り組みを行うことになりました。

『上司同士の「対話の場」を設け、思いを共有する』

上司全員を集めて、「ワールドカフェ」(*1)の手法を用いて、「部下の一人ひとりが仕事ができるようになるために、個人、組織として何が必要となってくるか」といった、マネジメントや人材育成をテーマとし、さまざまな人たちと話し合い、気づいたことを模造紙に自由な発想で描く取り組みを行いました。他の部課の上司の考え方や実践している取り組みを知ることで、そのプロセスや思いを皆が共有でき、自分の職場での問題点ややるべきことが浮き彫りとなるといった効果があります。また、自分一人が悩んでいるわけではない、ということも共有できます。普段はあまり顔を会わすことのない上司同士が話し合うことにより、全社的な一体感が醸成されます。

(*1)ワールドカフェ:カフェのようなオープンな空間で、創造性のある会話ができる場とプロセスを用意し、参加者同士の対話の中から、新たな知識や気づきを得てもらう取り組み。

『キャリアアップを図るために、一定期間「弟子入り」する』

近年、成長戦略がなかなか描けない中にあって、従業員の一人ひとりがどのようなキャリアを積んでいくかが、大きな課題となっています。しかし、通常のジョブ・ローテーションでは、必ずしも個人のキャリアアップを考えた異動や配置転換ができるとは限りません。そこでA社では、異動や配置転換を伴わなくても広い視野で経験を積むことができるよう、一定期間、他事業部リーダーに「弟子入り」する取り組みを行うことにしました。通常業務とは別に、個人のキャリアアップを図るための「特命プロジェクト」という形で実施されます。

人事部が中心となって、上司や各事業部リーダー、本人とキャリアの方向性をすり合わせた上で、メンバーに対し現在の部署ではなかなか身に付けることの難しいテーマが与えられます。組織全体のことを視野に入れた高い目線で物事を考えてもらうために、日頃仕事で接することのない事業部長クラスのリーダーの下で、3年間という期間限定で「弟子入り」をします。メンバーは必要に応じて現在の職場を離れ、「弟子入り」期間終了後、テーマに対する提言をまとめ、報告を行うというものです。徐々にメンバーの範囲を広げて実施します。

弟子入りした先のリーダーは、「メンター」(*2)として弟子にアドバイスをします。メンバーは現在の業務の延長ではなく、弟子入りした先のリーダーが関わる事業内でのプロジェクトにおける一定の遂行責任を負う形で参加することになります。この期間はリーダーの下、さまざまなものの見方や判断軸を知ることにより、現在の自分の職位では味わうことのできないより高度なレベルの実体験を積むことになります。これは、研修などでなかなか身に付くことのできない経験です。日々の業務と並行しながらのプロジェクト参加は負荷も大きいですが、3年間の中で単にプロジェクトの推進メンバーだけではなく、2年目はプロジェクトリーダーとしての牽引役を担い、さらに3年目ではプロジェクト全体を見渡しながらのアドバイザー役なども担っていくことになるので、ここでの3年間の経験は本人にとって得るものがかなりあるようです。

(*2)新入社員やまだ経験の浅い社員に対して、さまざまな助言を与えていく人のこと。社内において、一定以上の地位にある人がメンターとなることが多い。

『現場が人事部と一緒になって、人事制度の見直し作業に参画する』

A社では事業を取り巻く環境の変化に伴い、人事制度を随時見直しています。そうした見直しを検討するプロジェクトに、各職場から参加してもらいます。例えば、現場からみると「業務上どのような点に課題がみられる」ため、「どのような評価項目を設けると効果的か」、「それを評価するための基準をどのように定めるのが適切か」、「その対価としてどういったものを用意するのが効果的か」、といったことを現場から出してもらいます。それによって、現場が納得しコミットしやすい、より高い効果が見込める評価制度にすることができます。また、そのような人事評価制度の見直しをする側になることで、制度を通して会社から自分が求められているものがより明確に見えるようになったり、自分が部下を評価することや、評価される人材を育成することの大切さを学べるなど、多くの気づきが得られることにもつながります。

変化の激しい時代、人事部に求められる役割も変化してきています。現場とのコミュニケーションを図りながら、働きがいのある職場を作り上げていくこと、それが人材の育成にも大きく関係しており、人材を最大限活用することにつながります。そのためにも、人事部が現場とともに議論し、共同作業していくような取り組みをより進めていくことが期待されています。

配信申込⁄停止

“旬”なテーマで人材活用やビジネスに関するお役立ち情報をお届けします。メールマガジンの定期配信をお申込みのお客様は左のボタンからお気軽にどうぞ。

このページのトップへ

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」 一覧へ