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(情報掲載日:2014年6月10日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

改正雇用保険法のポイント

VOL.29


改正雇用保険法が2014年3月28日に成立しました。今回の改正には3つの柱があり、(1)育児休業給付の拡充、(2) 教育訓練給付金の拡充及び教育訓練支援給付金の創設、(3)就業促進手当(再就職手当)の拡充となっています。それぞれのねらい、改正の詳しい内容、改正による企業のメリットについてご紹介します。

育児休業給付が引き上げられる

●給付割合を67%に引き上げる

1歳未満の子を養育するために休業する場合の育児休業給付が、2014年4月1日から引き上げられました。従来50%であった休業開始前の賃金に対する給付割合が67%に拡充され、母親に支給される出産手当金(産前6週間、産後8週間において1日につき標準報酬日額の3分の2相当額)と同じ水準になります(*1)。ただし、この給付率が適用されるのは育児休業開始後6ヶ月に限られ、7ヶ月以降の給付率は従来と同じ50%となります。

男女ともに育児休業を取得する場合の給付のイメージ
男女ともに育児休業を取得する場合の給付のイメージ

●改正のねらいは男性の育休取得の推進

今回の改正の最大の目的は、男性の育休を取りやすくすることにあると考えられます。女性の育休取得率がここ数年80%を超えているのに対し、男性の取得率は1〜2%という低い水準にとどまっています(*2)。
男性が育休を取得しない理由はさまざまにありますが、中でも経済的な理由が大きいとの推測から、政府は給付割合の引き上げの検討を指示し、今回の改正に至りました。ちなみに法改正に伴う給付増は年間約800億円と試算されています(*3)。
家計負担で考えると、一般的に給与水準が女性よりも高い男性が育休を取れば収入減のダメージがより大きくなるでしょう。そのせいか男性は育休を取得したとしても、その期間は女性に比べると非常に短くなっており、2012年は女性の平均9.8ヶ月に対して男性は平均3.2ヶ月でした(*2)。
今回の改正で育児休業給付が拡充されたことにより、男性の育休取得による家計負担は軽減し、育休取得のインセンティブが高まると考えられます。給付金は非課税扱いとされており、育休中は社会保険料の免除措置があるため、休業前の税、保険料支払後の賃金と比較した実質的な給付割合は8割程度と言われています(*1)。

●育休取得率を上げるには企業の支援策が必要

しかしながら、実際に男性の育休取得率を上げていくには企業の支援策が必要といえます。例えば今回の法改正の内容を社内に周知徹底するための広報活動、相談窓口の開設、上司から対象者への働きかけ、男性の育休取得に対する意識を変えるための社内研修等の支援策が必要になるでしょう。詳しくはテンプナレッジマガジンVol26「パパも取りやすくなる? 育休の給付、引き上げへ」(*4)をご参照ください。

●企業側のメリットは?

今回の法改正は、夫婦それぞれが育休を取ることにより、妻が単独で取るよりもメリットがある点が大きな特徴です。女性はもちろん、男性も育休を取る人が増えていけば、女性の退職も減っていくかもしれません。それにより会社全体の定着率が上がれば、人材の流出を防ぐことができるでしょう。同時に、「働きやすい会社」として社会から高い評価を得ることにつながり、採用の広報活動にもプラスに作用するというメリットが期待できます。また、育児休業者がいる職場では、育児休業中の間、欠員状態が発生し対応が必要になるため、仕事の効率化や進め方を見直すきっかけにもなるでしょう。

*1 厚生労働省「育児休業給付の充実」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/seido/dl/140331-01.pdf

*2 厚生労働省労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会資料(第93回)「育児休業給付について」
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000027872.pdf

*3 厚生労働省労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会資料(第96回)「財政運営」
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000031969.pdf

*4 テンプナレッジマガジンVol26「パパも取りやすくなる? 育休の給付、引き上げへ」
http://www.tempstaff.co.jp/magazine/nippon/vol26.html

教育訓練給付で中長期的なキャリア形成を支援する

●「専門的・実践的な教育訓練」には最大6割まで給付

教育訓練給付金は現行の制度に加え、2014年10月1日以降は厚生労働大臣が「専門的・実践的な教育訓練」として指定する講座を受講する場合に、受講費用の4割が支給されます(*5)。
指定される講座は、社会人向けの専門職大学院や国家資格が取得できる養成校などのように修業年限が2〜3年にのぼる講座で、給付期間は原則2年、資格取得等につながる場合は3年が上限です。給付は、訓練開始日から6ヶ月ごとに区分した1つの期間が連続して2つあるごとに受講者の申請に対して支給されるもので、1年間の上限が32万円 であり、修業年限3年の場合は給付上限額が96万円になります。
資格取得等の上で就職に結び付いた場合や、在職者が訓練修了後引き続き職に就いている場合には受講費用の2割が追加的に給付されるため、給付割合は最大6割となります(*6)。
教育訓練給付を受けるには、雇用保険に継続して2年以上加入していることが要件となり、一度給付を受けた後で次に利用するには現行の一般教育訓練の場合で3年、新設の専門実践教育訓練の場合で10年の給付制限期間を待たねばなりません。

教育訓練給付の種類と給付内容
教育訓練給付の種類と給付内容
*給付制限期間とは、1度給付を受けた人が次回受給できるまでの制限期間

●業務独占資格の取得、専門職大学院の修了などが対象に

専門実践教育訓練の指定基準としては下表の3分野の講座が想定されており、IT、環境関連、医療・福祉などの成長分野の仕事において必要とされる能力が獲得できることや、学習効果がキャリアにおいて長く生かせることなどが求められます(*7)。

専門実践教育訓練の3分野
専門実践教育訓練の3分野
*1養成施設の課程とは、国または地方公共団体の指定等を受けて実践される次の課程
①訓練修了で公的資格取得、②公的資格試験の受験資格を取得、③公的資格試験の一部免除
*2 職業実践専門課程とは、専修学校の専門課程のうち、企業等との密接な連携により、最新の実務の知識等を身につけられるよう教育課程を編成したものとして文部科学大臣が認定(平成26年度より新設)

(1)については、看護師、介護福祉士、保育士、建築士等の資格取得を目指す訓練が想定され、その中でも受験率、合格率及び就職・在職率の実績からみて十分な効果があると思われる講座が指定の対象になります。 (2)については、情報、環境、観光、商業等の専門学校が企業等と連携して設計する実践的な課程等が想定されます。(3)については、技術革新や社会の変化等に対応した企業の現場で活かせる実践的な技術開発力、企画力、問題解決力等が身につけられ、就職・在職率、大学等の認証評価、定員充足率の実績等からみて十分な効果があると思われる講座が認定の対象となります。
講座を選ぶにあたり、自分のキャリアアップのために必要かつ有効な教育訓練はどのようなものかを相談するため、原則として本人が受講前にキャリア・コンサルティングを受けることが条件となります。これは、訓練内容と受講者のミスマッチや、せっかく学んだのにキャリアアップにつながらないといったトラブルを防ぐことを目的としています。教育訓練給付の支給申請の際には、キャリア・コンサルティングを受けた旨が分かる書類を添付することが求められます(*6)。

●教育訓練給付拡充のねらいとは

教育訓練給付拡充のねらいは、新たな成長戦略の「日本再興戦略」(*8)にあるように、行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換(失業なき労働移動の実現)を図ることのようです。そのためには、働く人がキャリアアップやキャリアチェンジができるように、「資格取得等につながる自発的な教育訓練の受講など社会人の学び直しを、今までにない規模で大胆に支援する」と明記されており、この「大胆に支援」という部分が今回の教育訓練給付金の大幅な拡充を指していると考えられます。

●教育訓練支援給付金の創設

社会人の学び直しについての「大胆な支援」の2つめが教育訓練支援給付金の創設です。これは45歳未満の離職者が前述の専門実践教育訓練を受講する場合に、訓練中に離職前賃金に基づき算定した額(失業給付の基本手当の日額の100分の50に支給単位期間の失業の認定を受けた日数を乗じて得た額)を給付する制度です。離職者が生活の不安なく教育訓練の受講に専念できるようにするという配慮が伺えます。ただし、この教育訓練支援給付金は平成30年度までの暫定措置となります。

●企業のメリットは?

手厚い給付が受けられる専門実践教育訓練は、受講者本人はもちろん、企業にもメリットが大きいと考えられます。たとえば、高度な専門性の証しとなる業務独占資格・名称独占資格や修士の学位を取得する社員が増えれば、その人数を会社案内等に示して社外にアピールすることにより、既存の顧客や取引先の評価の向上や、新規顧客の獲得が期待できます。また、資格や専門知識の習得という目標を自ら打ち立てて、達成するまで努力を重ねる社員が増えれば、会社全体の雰囲気がポジティブな方向へ変化していくかもしれません。企業は、社員が教育訓練で習得した能力を発揮しやすい環境を整え、その能力発揮による成果を評価する仕組みや体制づくりをすることが不可欠でしょう。

*5 厚生労働省「雇用保険法の一部を改正する法律案の概要」
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/186-01.pdf

*6 厚生労働省「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案概要」
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000042288.pdf

*7 厚生労働省「専門実践教育訓練の対象とする教育訓練の指定基準概要」
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11804000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku-Ikuseishienka/0000044797.pdf

*8 「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/saikou_jpn.pdf

就業促進手当が拡充される

●就業促進手当の拡充で就職後の賃金低下分を補足する

改正雇用保険法の3つめの柱は、就業促進手当(再就職手当)の拡充です。現行の給付は、早期再就職した場合に、基本手当の支給残日数の50〜60%相当額が一時金として支給されますが、加えて早期再就職した雇用保険受給者が、離職前賃金と比べて再就職後賃金が低下した場合には、6ヶ月間職場に定着することを条件に、基本手当の支給残日数の40%を上限として、低下した賃金の6ヶ月分が一時金として追加的に給付されます(*5)。これについては2014年4月1日から施行されています。

●早期再就職のインセンティブになる

就業促進手当は再就職の促進につながることが期待されています。賃金低下分を補償するインセンティブ効果は、賃金低下に納得できずに失業期間を長引かせる労働者の意識を大きく変える可能性があるでしょう。

雇用保険というと失業者の救済制度のイメージが強いようですが、実は育児休業給付のように仕事と育児の両立を支援する役割や、教育訓練給付のように職業能力開発と中長期のキャリア形成につながる役割も含んでいます。ひとことで言えば、働く人にとっての「失業予防」の機能も兼ね備えていると言うことができます。景気が上昇してきたとはいえ、個人にとっては先行きが見えにくい不確実な時代が続いている中で、働く人は雇用保険制度の中の給付金制度を上手に活用することにより、自らの能力を高めていくことができるでしょう。
雇用保険法が定める育児休業取得支援や自己啓発支援について、詳しく知らない人は多いようです。企業は、社内での周知徹底など、制度を利用しやすくする諸施策により、制度を利用する人が増えるような環境づくりをすることが必要でしょう。そして、男性の育休取得率向上、女性の長期勤続と管理職の輩出につながれば、企業の社会的信頼度が増し、優秀な人材を惹きつける魅力を獲得することができるかもしれません。

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