メールマガジンの定期配信をご希望のお客さまは以下のボタンからお申込みください。

配信申込⁄停止

(情報掲載日:2014年5月12日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

クレド経営で主体的に動く社員を育てる

VOL.28


企業理念をより具体化し、個々の社員の行動基準に落とし込んだクレドを制定し、日々活用する企業が多く見られます。かつてはコンプライアンス経営を推進するために制定され、現在は組織改革や人材育成、ES向上のためにも活用されています。さまざまな効果が期待されるクレドについて、ご紹介します。

クレドとは

●クレドと企業理念のちがいとは

クレドと企業理念は似ているようで少し意味が異なります。一般に、企業では創業時に企業理念を掲げ、その使命、目的、社会的責任等を明確にします。つまり企業理念は、ビジョン、ミッションを含んだものと言うことができるでしょう。
他方、クレドは創業後しばらくしてから新たに作ることが多く、企業の変革、組織開発、コンプライアンス経営等を目的とします。クレドの語源はラテン語で志、約束、信条などを表す言葉です。アメリカでわざわざ古典的なラテン語を用いた理由は、「原点に戻る」、「基本理念に立ち返る」といった意図が含まれていると読み取ることができます。
クレドを導入する企業では、「わが社のクレド」といった直接的な表現をするところもあれば、「お客様への約束」といった表現を用いる企業もあります。「行動指針」もクレドに近いものであると考えられます。企業理念は通常、創業者が作るものであるのに対し、クレドは従業員主体で作られるケースが多く、恒久的な理念というよりは、経営環境や経営目標に合わせて作り替えられる場合もあります。
クレドを導入している業種は、ホテルや旅行業のようなサービス業、食品など人々の日常生活にかかわる製品を提供しているメーカー、小売業、金融業、医療・介護など多岐にわたります。珍しい例としては、地方自治体やプロ野球の球団が導入し、話題になりました。

●クレドが注目されるようになってきた背景とは

クレドが注目されるようになってきた背景には、2000年代に入ってから相次いだ企業不祥事と、その防止策として各社が急いだコンプライアンス経営の構築があります。2001年に米国のエンロン社が、2002年にはワールドコム社が、不正を発端として大規模な破綻をして以来、企業のコンプライアンスの徹底が叫ばれるようになりました。日本でも金融不祥事や食品偽装事件が相次ぎ、2006年に企業の内部統制を義務づける金融商品取引法や公益通報者保護法が制定され、法令遵守はもちろん、法規制を上回る自主行動基準の策定や倫理綱領の見直しを行うようになりました。そのような流れの中で企業存立の原理原則に立ち返り、クレドの価値に注目が集まるようになりました。

●クレドの代表例

クレドの代表例として世界的に知られているのは、医薬品メーカーのジョンソン・エンド・ジョンソンの「わが信条(Our Credo)」です(※1)。当時の同社社長が取締役会でクレドを発表したときには「クレドはわが社の社会的責任を示したものである」と言い、「これに賛同できない人は他社で働いてくれて構わない」とまで断言したそうです。以来、同社ではクレドが一貫して経営判断や社員の行動の拠りどころとなっています。創立以来、118 年間で平均して年率11.6%の成長を続けてきた理由の1つは、クレドという原則にこだわり抜いたからであると経営陣が述べています。
同社のクレドは①顧客、②社員、③地域社会、④株主という4種類のステークホルダーに対する責任を表明する約束の言葉として、この順序で記述されています。例えば顧客に対しては「顧客一人一人のニーズに応えるにあたり、我々の行なうすべての活動は質的に高い水準のものでなければならない」等の言葉があり、社員に対しては「社員一人一人は個人として尊重され、その尊厳と価値が認められなければならない」等の言葉があります。
もう1つの代表例といえるのが ザ・リッツ・カールトンホテル・グループのクレド(※2)であり、こちらも「私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだそして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します」という顧客に対する約束の言葉が含まれています。同社ではクレドとともに「モットー」「サービスの3つのステップ」「サービスバリューズ(13項目)」「従業員への約束(3項目)」を定めています。
上記の2つの事例がいわばクレドの原型となり、後に続く企業の多くは2つの事例の表現形式や構成を部分的に取り入れ、自社に合う内容に変えてクレドを作成しています。対外的にはCS(顧客満足)の向上を、社内的にはES(従業員満足)の向上を約束する言葉としてクレドが構成されています。

※1 ジョンソン・エンド・ジョンソン「我が信条(Our Credo)」とは
https://www.jnj.co.jp/group/credo/01/index.html

※2 ザ・リッツカールトン ゴールド スタンダード
http://corporate.ritzcarlton.com/ja/About/GoldStandards.htm

クレドの作り方

●社員参加型で作る

クレドは社員参加型のボトムアップにより作成される事例が主流となっています。ES向上、離職率の低下、社員の意識改革、組織の風土改革といったクレドの社内的メリットがより強く意識されるようになってきていると考えられます。
社員参加型で作成する場合、下表のように①クレドプロジェクトのキックオフに始まり、②クレドプロジェクトチームの発足、③各種ステークホルダーへのインタビューやアンケート調査の実施、Cクレドの文言の作成、Dクレドカードの作成と配布といった手順を踏むことが一般的です。

クレド作成のプロセス
クレド作成のプロセス

クレドカードのサイズは、3つ折り、または4つ折りにしたときに名刺サイズになる大きさとするケースがあります。

名刺サイズのクレドカードの記載例(※3)
名刺サイズのクレドカードの記載例(※3)

前述のとおり、クレドは社員の代表者から成るプロジェクトチームを中心に社員参加型の仕組みで作成することにより、企画・作成の時点から浸透を図ることができます。また、アンケート調査やヒヤリングを行うことにより、クレドは社員の意向や希望を取り入れた「みんなのもの」として作るという姿勢をアピールできるので、結果として多くの社員にとって納得性の高いものになっていくようです。

※3 クレド 〜etos style〜
http://www.etos.jp/mind/credo.html

クレドの浸透のさせ方

●社員に携帯させる

社内にクレドを浸透させるために、クレドを印刷した名刺サイズのカードを配布し、周知徹底を図るところが多くなっています。また、朝のミーティング時にクレドの文言を全員で唱和する例や、その日の担当社員がクレドをテーマにした3分間スピーチを行うといった行事を恒例にしている例もあります。

●ホームページを使って外部にも公開する

外部に対してはホームページのほか、会社案内パンフレット、株主向けの年次報告書等の広報ツールにクレドを掲載したり、本社の受付の目立つ場所に掲示するなどして、企業イメージの向上を図る例が見られます。また、求人媒体などにクレドを掲載する例もあります。長期的に働くことを考えている人は、企業理念や社風などに着目する傾向があり、クレドの内容に共鳴して集まってくる優秀な人材の確保につながると期待されます。

●クレドサーベイを実施して定期的に見直す

毎年1回程度、クレドの浸透状況や見直すべき項目がないかを判断するために、調査を行うことが有効であると言われています。そのときの調査項目として社員に投げかける質問項目としては、下表のようなものがあります。

クレドサーベイの質問項目

・クレドに基づいた行動が行われているか
・改善行動が社風として根付いているか
・社員間のコミュニケーションは良くなっているか
・管理職は、クレドの実行を支援しているか
・CSを向上させることができたか
・ESは向上したか
・職場環境は良くなってきたか
・変更したほうがいいクレドの文言はないか

クレド導入のメリット

●クレド導入で組織が変わる

クレドを導入することにより組織全体が変わり、同時に対外的なイメージが望ましい方向へ変わってくると期待できます。

クレド導入で期待される組織の変化

①クレドの中で顧客に対する「約束」を宣言する⇒顧客満足の向上を図れる
②社員の全員参加でクレドを作成させる⇒組織の風通しが良くなり、目標を共有化しやすい
③クレドの中で行動基準を明確化する⇒危機管理とコンプライアンス経営のツールになる
④企業理念を踏まえてクレドを作成する⇒会社と個人の価値観を近づけることができる
⑤クレドを採用時に活用する⇒企業イメージの向上で優秀な人材の確保を図れる
⑥クレドを公開する⇒社員、顧客、株主等のステークホルダーにメッセージを伝えられる

●クレドが企業の危機管理につながる

クレドが企業の危機管理につながることについては、ジョンソン・エンド・ジョンソンで起きたタイレノール事件への対応がよく知られています。1982年に小児用鎮痛剤「タイレノール」に毒物が混入され、7名もの尊い命が失われるという企業にとって致命的な事件に見舞われた際、経営陣はすぐにマスコミを通じて情報公開を行い、現場の社員ばかりでなく、退職して引退していたOB、薬局等の取引先が自主的に迅速に動いてすべての製品回収を成し遂げました。また、毒物の混入を不可能にする新パッケージを開発し、6週間後には再び市場に「タイレノール」を送り出しました(※4)。このときにすべての人を危機管理のために動かした原動力が、同社のクレドであると言われています。

●クレド導入で社員が変わる

クレド導入により、社員1人ひとりの意識や行動が変わることも期待できます。クレドを体現して主体的に動ける社員が育つということを第1に挙げることができるでしょう。また、下表のような変化も期待できそうです。

クレド導入で期待される社員の変化

①自主行動基準の明確化⇒社員が主体的に動くようになる
②社員参加型によるクレドの作成⇒社員の経営への参画意識が高まる
③経営理念・目標の共有⇒仕事への意欲の向上
④クレドに表現された価値観を共有できる⇒価値観の共有により意思疎通がスムーズになる
⑤CS向上という目標の共有⇒目標達成のために社員が改善提案などの主体的行動を取る
⑥CS向上で顧客から高い評価を得る⇒社員の達成感が高まり、自信がつく

個人の自由や尊厳が重んじられ、人々の価値観が多様化している現代においては、以心伝心、上意下達といった旧来のコミュニケーションのスタイルが通用しづらくなっています。クレドを導入して企業の価値観や方向性を示し、クレドの浸透によって社員が同じ目標を共有できるようになれば、主体的に最適行動を取る社員が増えて、結果としては上意下達のコミュニケーションよりも迅速に、質の高い成果を挙げることができると期待できるでしょう。激変する経営環境に対応し、事業の内容を多角化させたり、グローバルに展開するための分社化、分権化を進める企業が増える中で、クレドの価値が再認識されているとも言えそうです。

※4 片山修著『大切なことはすべてクレド―が教えてくれた ジョンソン・エンド・ジョンソンの驚異的な企業業績の核心に迫る』(PHP研究所)

配信申込⁄停止

“旬”なテーマで人材活用やビジネスに関するお役立ち情報をお届けします。メールマガジンの定期配信をお申込みのお客様は左のボタンからお気軽にどうぞ。

このページのトップへ

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」 一覧へ