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(情報掲載日:2014年3月20日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

いま広がる健康経営〜福利厚生から健康投資へ〜

VOL.27


健康管理を個人任せにせず、企業が積極的に関与する「健康経営」が注目されています。福利厚生から一歩踏み込み、従業員の健康管理が企業の生産性向上やブランド価値の拡大につながるという考え方に基づく経営戦略です。健康経営が注目されている背景や、企業の事例についてご紹介します。

企業が積極的に関与する「健康経営」とは

●健康な従業員こそが収益性の高い会社をつくる

「健康経営」は、1980年代に米国の臨床心理学者ロバート・ローゼンが提唱した「ヘルシー・カンパニー」(健康な企業)という概念から出発しています。ローゼンは、従業員が健康になれば意欲が高まって生産性が上がる一方、離職率は下がり、 さらには企業が負担すべき医療費が減るといったように、結果として健康な従業員が企業の収益を高めるという好循環が起きることを、多くの企業の事例をもとに実証しました。著書『ヘルシー・カンパニー 人的資源の活用とストレス管理』の邦訳が1992年に出版されて以来、日本では「健康経営」という呼び名でその考え方が広まり、いまでは多くの企業で具体的な取り組みが始まっています。
従来の福利厚生制度とは異なり、健康経営は企業の成長に必要な投資であるという考えに基づいており、具体的な数値目標を掲げ、推進されます。労働契約法にある従業員に対する安全配慮義務や、労働安全衛生法等で義務づけられている健康診断等の健康施策から一歩踏み込んだ内容となっています。取り組みの分野としては、メタボリックシンドロームの改善といった生活習慣病対策、うつ病予防などのメンタルヘルス対策、長時間労働対策などが組み合わされています。

●9割の企業が健康経営について前向きである

東証一部上場企業1,695社(うち226社が回答)を対象に実施されたアンケート調査(※1)によると、健康経営について「見聞きしたことがある」および「内容まで認知している」企業を合わせると81.5%にのぼりました。健康経営の認知度が進んでいることが伺えます。また、健康経営について「現在すでに取り組んでいる」企業は39.8%、「今後取り組みたい」企業は49.6%であり、両方を合わせると9割近くが健康経営について前向きな姿勢であることが分かりました。業種別にみると、とくに製造業で取り組みが進み、「現在すでに取り組んでいる」企業は46.5%にのぼりました。

健康経営についての認知度
健康経営についての認知度
2013年(株)電通ほか「健康経営」実態調査

※1  (株)電通、ヘルスケア・コミッティー(株)、(株)日本政策投資銀行 従業員への積極的な健康増進策で、生産性・収益性の向上を図る「健康経営」の実態を調査
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2013/pdf/2013025-0308.pdf

健康経営に取り組む背景とメリット

●メタボ健診が契機となった

わが国における健康経営は2008年から始まった特定健診、いわゆる「メタボ健診」を契機として急速に広がってきました。メタボ健診は、膨らみ続ける医療費の適正化を図るとともに、急増する糖尿病などの生活習慣病を未然に防ぐため、40〜74歳の健康保険被保険者と扶養者を対象に毎年実施するように、企業の健康保険組合など医療保険者に対して法律で義務化されています。
健診結果のデータ様式が統一されたため、血糖値などの項目ごとに基準値よりも高いか低いかが分かり、職種や業種ごと、あるいは事業所ごとの特徴を把握しやすくなったことから、個別の対策を立てやすくなりました。
基準値との比較により、生活習慣病の予備軍とみられる従業員への対策が手つかずでは欠勤者が増えるといった企業経営にとってのダメージを予測することができます。産業医や企業内保健師、健保組合などが経営者に働きかけ、健康施策の充実が図られるよう、取り組むこともできるでしょう。

●メタボ減少の数値目標にインセンティブがつく

各健保組合には特定健診実施率、特定保健指導実施率、メタボリックシンドロームの該当者とその予備軍の減少率についての数値目標が課せられ、数値目標達成のインセンティブとして、後期高齢者支援金の減算・加算が行われます。実績を上げている保険者は後期高齢者支援金が減算され、実績の上がっていない保険者は支援金の加算が行われます。

●重症疾患に対するリスクが不十分

多くの企業では従業員の年齢構成が高齢化するにつれ、生活習慣病になる人の割合が高くなる傾向が見られます。この年齢層の従業員は、管理職として現場での意思決定や若手の人材育成に関わっていることも多いため、長期欠勤あるいは離職することになれば、企業が受けるダメージは大きいでしょう。
厚生労働省の研究調査(※2)によると「重症疾患で倒れている従業員の多くは自己管理していない」ことが明らかになってきました。1万人規模の企業では年間十数名の重症疾患が新規に発症しているものの、発症者の3分の2は未治療(未受診)であることがわかりました。企業が行う定期健診を受けても自らのリスクを認識せず、医療機関への受診や生活習慣の改善といった行動変容に結びつかない状況が見て取れます。
従業員自身の健康管理に任せるだけでなく、企業が積極的に関与して生活習慣病のリスクを軽減し、病気の予防に努める必要性があるといえます。

●健康経営企業に対する格付け制度が創設された

健康経営には、前述のような病気による長期欠勤や離職のリスクを小さくするというメリットに加え、企業の社会的信頼度およびブランドイメージの向上や、社員の健康度と意欲のアップによる企業競争力向上につながるというメリットがあります。
社会的信頼度については、2012年に創設された健康経営(ヘルスマネジメント)格付(※3)を受ける企業が増えてきています。従業員の健康配慮への取り組みの優れた企業を評価・選定し、その評価に応じて融資条件を設定するというものです。具体的には、長時間労働を減らす努力や生活習慣病対策をしているかなど約120項目を審査し、5段階に格付けして、優秀な企業ほど金利を安くします。年利1%台前半で借りている企業の場合、格付けに応じて0.1〜0.2ポイント優遇されます。2014年2月までに9社が格付けされており、実際に融資も行われています。

※2 厚生労働省 平成23年度 地域・職域連携推進事業関係者会議資料「職業別のライフスタイルと生活習慣病予防対策について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000022whe-att/2r98520000022wjk.pdf

※3 DBJ健康経営(ヘルスマネジメント)格付
http://www.dbj.jp/service/finance/health/

健康経営の進め方

●トップが明確なビジョンを掲げることが重要

健康経営を新たに導入するときの進め方としては、前述の健康経営格付けの第1号 となった企業の事例が参考になります。同社は、組織内で健康経営のPDCAサイクルが定着・運用されていることが高く評価され、選定に至りました (※4)。そのPDCAとは下表のように、第1のステップとしてトップが従業員社員の健康づくりに積極的に関与し支援していくという意思を、全従業員に向けてはっきりと打ち出し、従業員の健康意識を高めるように働きかけることからスタートします。このとき、どのような分野で健康づくり支援を行っていくかを明確にします。同社では、@生活習慣病対策、Aメンタルヘルス対策、B禁煙対策、Cがん対策、D女性の健康対策といった5分野を掲げています。
第2のステップでは、健保組合が把握している健診データ、医療機関のレセプトデータ等の数値や、社内アンケート等から得られる生活習慣の傾向などから自社従業員の健康状態の適確な把握・分析を行います。
第3のステップでは、その分析結果に基づき自社の重点目標を明確化したうえで中期計画を策定し、それにあわせた施策を事業者、健保組合、産業医、外部専門家らが協力して実施する体制を構築します。
第4のステップでは、現場レベルでの従業員への働きかけと、健康づくりの効果検証・改善活動を行います。同社では 「健康づくり実務責任者・担当者」を設置することで現場に健康づくりの意識を浸透させ、経営層に対しては、「健康づくり推進委員会」を通じた報告・改善の場を設け、経営管理課題として全社的に健康づくり事業を位置づけるといった活動を行っています。

健康経営を進める4つのステップ
健康経営を進める4つのステップ

●従業員の健康状況を「見える化」して改善の意識づけをする

従業員の運動習慣を点数に換算し、個別の健診データの危険値を提供するなど、健康状況の「見える化」によって改善の意識づけをすることにより、メタボの社員が減少するといった効果が期待できます。従業員の健康意識を高めるための仕掛けとして、ある企業では健康づくりに役立つ行動を行うたびにポイントがたまるマイレージ制でインセンティブをつけています。その他、歩いた歩数や減量のデータを競い合うイベントを実施し、競争意識を持たせている企業もあります。この企業は、健康イベント等を実施したことによって、部門の枠を超えた従業員相互の交流が盛んになり、風通しの良い組織に改善されたそうです。

●食習慣の改善提案など多角的に健康づくり支援を行う

企業で行われている従業員の健康づくり支援の内容は、下表のように多岐にわたります。ジャンルとしては、①独自の健康調査・情報の提供、②食習慣の改善、③運動習慣の定着、④産業保健スタッフ等による個別・集団指導、⑤職場環境の改善の5つに整理できます。

企業による従業員の健康づくり支援のおもな事例
企業による従業員の健康づくり支援のおもな事例

上記の健康道場の運営には年間4,000万円のコストがかかるそうです。これらの事例から、健康経営の概念下では、労働安全衛生法等に基づく従来の健康管理施策とは異なり、「投資」という意識が強いことがわかります。それだけ、企業の収益拡大の手段として有効であると判断されているのでしょう。

生活習慣病にかかるかどうかは、就業時間以外の従業員の過ごし方に左右されるので、本人の自己責任であり、会社がそこまで関与できないという考え方もあるかもしれません。確かに、従業員は自ら健康管理をして会社の業務に支障を来さないようにする義務を負っています。しかし、本人任せにしていたのでは、命にかかわる病気になるリスクを軽減しきれないでしょう。企業が従業員の健康づくりに対して投資し、積極的に関与することによって、かけがえのない人材を大切に育て、守っていくという企業側のメッセージが従業員に伝わるはずです。そのようなメッセージは社外にも伝わり、社会的信頼を厚くすることにつながるでしょう。健康経営は、金銭では測りきれない付加価値を企業にもたらすと考えることができそうです。

※4 (株)日本政策投資銀行 花王(株)に対し、「DBJ健康経営(ヘルスマネジメント)格付」(最高ランク)に基づく融資を実施
http://www.dbj.jp/ja/topics/dbj_news/2011/html/0000009497.html

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