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(情報掲載日:2014年1月20日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

改正労働契約法「5年ルール」への対応策

VOL.25


労働契約法の改正に伴い、有期労働契約が通算で5年を超え反復更新された場合には、労働者の申込みに基づき、無期労働契約へ転換される仕組みが導入されています。有期契約の労働者を雇用している企業では、雇用管理施策の見直しの必要に迫られているでしょう。そこで、あらためて改正内容の要点をまとめるとともに、対応を模索する企業の状況や、対応における注意点等についてご紹介します。

「5年ルール」の適用で何がどう変わるのか

●改正労働契約法の「5年ルール」が導入された背景

2013年4月に改正労働契約法が全面施行されました。この法律は、有期労働契約に関する新しいルールを定めるものであり、有期労働契約の反復更新の下で生じる雇止めに対する不安を解消し、働く方が安心して働き続けることができるようにすることが目的です。
リーマンショック以来、雇止めをする企業が続出し、雇止めを不服とする労働者と企業間での個別労働紛争が急増しました。こうした個別労働紛争が生じた場合には、裁判よりも迅速な解決を図るため、都道府県労働局長の助言・指導制度、紛争調整委員会によるあっせん制度、労働審判制度などが用いられます。その際の判断基準としては、過去の裁判例が蓄積されて形成された判例法理を当てはめることが一般的でした。しかし、こうした紛争を解決するための裁判外の民事的なルールや判断基準が十分には知られていなかったため、労働契約についての基本的なルールを労働契約法という形で明らかにすることになったのです。

●改正労働契約法の内容が「よく分からない」企業は30%

これまでに雇止めを行ったことのある企業や、有期労働契約者の反復更新を繰り返している企業にとっては影響が大きい法改正ですが、中には「更新を5年繰り返した場合は正社員にしなければならない」といった誤解もあり、必ずしも内容が正確に伝わっていない側面があります。
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が2013年11月に発表した調査(※1)によると、改正労働契約法の認知度は、「改正内容まで知っている」が63.2%で6割を超えていますが、「改正されたことは知っているが、内容はよく分からない」が30.4%でした。なお、この調査に答えた有効回答企業7,179社のうち、有期契約労働者を雇用している企業は5,588社で77.8%を占めています。

●改正労働契約法で加わった3つの新ルール

2013年4月に全面施行された改正労働契約法で、有期労働契約について下表のような3つのルールを規定しています。有期労働契約とは、1年契約、6ヶ月契約など期間の定めのある労働契約のことをいいます。パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託など職場での呼称にかかわらず、有期労働契約で働く人であれば、新しいルールの対象となります。

改正労働契約法の3つのルール

Ⅰ 無期労働契約への転換(第18条)
有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールです。

Ⅱ「雇止め法理」の法定化(第19条)
最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、そのままの内容で法律に規定されました。一定の場合には、使用者による雇止めが認められないことになるルールです。

Ⅲ不合理な労働条件の禁止(第20条)
有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることを禁止するルールです。

厚生労働省「労働契約法改正のポイント」(※2)

●無期労働契約への転換とは

まず、無期労働契約への転換ルールについては、有期を無期に転換することを求めるものであり、就業日数や時間を正社員と等しくすることを求めるものではありません。転換後の労働条件については、労働協約や就業規則に別段の定めがない限り、無期転換前と同一の労働条件が適用されます。たとえば、「週3日、20時間の有期雇用のパート」をそのままの条件で無期転換することができます。あるいは「別段の定め」を新たに設けて、「週5日、40時間の無期雇用のパート」とすることもできます。

無期転換する「5年」のカウントの仕方については、下図のようになっています(※2)。契約期間に関わらず同一の使用者との間で有期労働契約が通算で5年を超えて反復更新された場合は、労働者が申込みをすると、使用者が申込みを承諾したものとみなされ、無期労働契約がその時点で成立し、申込み時の有期労働契約が終了する翌日から無期労働契約へ転換されます。また、申込みがその契約期間内に行われなかった場合は、次の更新以降でも無期転換の申込みができます。

なお、通算の契約期間が5年を超えた場合に自動的に無期労働契約に転換されるわけではありません。労働者からの申込(無期転換への申込権の行使)がない限り、無期労働契約に転換されることはありません。しかし、そうかといって無期転換の申込をしないことを契約更新の条件とするなど、あらかじめ無期労働契約転換申込権を放棄させることは無効と解されています。

有期労働契約の前後に空白期間(労働契約を締結していない期間)がある場合、それが6ヶ月未満の場合は、前後の契約期間を通算して計算しますが、空白期間が6ヶ月以上(クーリング期間)ある場合にはリセットされ、それより前の有期労働契約期間は通算契約期間に含めません。有期労働契約の契約期間(2つの有期労働契約がある場合には通算した期間)が1年未満の場合は、その2分の1以上の空白期間がクーリング期間になります。たとえば、6ヶ月の契約期間の場合は、3ヶ月以上のクーリング期間が必要になります。

無期転換の申込みができる場合

【契約期間が1年の場合】
契約期間が1年の場合
*1年契約の場合は、5回目の更新が成立した時点で、労働者は無期転換を申し込むことができる。

【契約期間が3年の場合】
契約期間が3年の場合
*3年契約の場合は、1回目の更新が成立した時点で、通算5年を超える労働契約が成立するため、労働者は無期転換を申し込むことができる。

【空白期間がある場合】
空白期間がある場合
*空白期間の前はカウントに含めない

●雇止め法理の法定化とは

雇止めは、使用者が有期労働契約を更新しないことにより、契約が終了することを意味します。多くの場合、有期労働契約は使用者が雇用調整の柔軟さを確保するために導入するものですが、更新手続きに不備がある場合や、反復更新を繰り返して、働く人に雇用が続くと期待させた場合には、合理的な理由がないと雇止めできないというルールが最高裁判決で確立していました。このように法定化されていませんが、裁判所の判断でルールが確立しているものを「判例法理」と言い、今回の改正労働契約法は「雇止め法理」を法定化するものです。
具体的には、下記の2つの場合に労働者が契約の更新を希望し、解雇相当の理由がないときは、雇止めができないと定められました。

雇止めができなくなるケース

①有期労働契約の更新の手続きがずさんで、更新時の合意があいまいであった場合
(例えば、入社時には契約書を交わしたが、それ以後は自動更新となっていた場合)

②上司、人事担当者等から契約更新に期待を抱かせる発言があった場合
(例えば、「契約期間は形式的なものなので、希望すればいつまでも働ける」と上司から言われていた場合)

●不合理な労働条件の禁止とは

改正労働契約法第20条の「不合理な労働条件の禁止」とは、有期労働契約者と無期労働契約者とで差があること自体が禁止されるのではなく、合理的な理由がなく差を設けることが禁止されるものです。ここでいう労働条件の中には賃金や労働時間だけではなく、労働契約の内容となっている災害補償、服務規律など、労働者に関する一切の待遇が含まれます。また、労働条件の相違が不合理と認められるかどうかは、個々の労働条件ごとに判断されます。

「不合理な労働条件」に該当する可能性のある例

・正社員には通勤手当を支給するが、契約社員には通勤手当を支給しない
・正社員は社員食堂が利用できるが、パートタイマーは社員食堂が利用できない
・正社員には安全管理上の備品を無償で支給するが、臨時社員からは実費を徴収する

※1 独立行政法人労働政策研究・研修機構「高年齢社員や有期契約社員の法改正後の活用状況に関する調査」
http://www.jil.go.jp/press/documents/20131112.pdf

※2 厚生労働省「労働契約法改正のポイント」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/h240829-01.pdf

有期労働契約の新ルールへの対応法とは

●有期労働契約のあり方の見直しか、無期化の推進か

改正労働契約法によって導入された有期労働契約の新ルールに企業が対応するには、①有期労働契約のあり方の見直し、②無期化の推進の2つの方向が考えられます。
前述のJILPTの調査 (※1)では、フルタイム契約労働者およびパートタイム契約労働者とも、「5年ルール」への「対応方針は未定・分からない」が最も多くなっています(同順に38.6%、35.3%)。これに次いで多い項目が、「通算5年を超える有期契約労働者から、申込がなされた段階で無期労働契約に切り換えていく」(同順に28.4%、27.4%)となっています。「適性を見ながら5年を超える前に無期労働契約にしていく」や「雇入れの段階から無期労働契約にする」と合わせると、何らかの形で無期化を推進していく意向のある企業割合が、フルタイム契約労働者で42.2%、パートタイム契約労働者は若干少なく35.5%でした。
他方、「有期労働契約が更新を含めて通算5年を超えないように運用していく」はフルタイム契約労働者で14.7%、パートタイム契約労働者で12.9%でした。

「5年ルール」にどのような対応を検討しているか (単位:%)
「5年ルール」にどのような対応を検討しているか
独立行政法人労働政策研究・研修機構「高年齢社員や有期契約社員の法改正後の活用状況に関する調査」

●契約更新判断を厳格化する企業が53.6%

有期契約労働者の雇用管理の見直しを既に行った企業のみを対象に行った複数回答形式の調査(※3)を見ると、より具体的な対応策の実施状況が分かります。有期労働契約のあり方の見直しについては、「有期契約労働者の契約更新判断(人物や働きぶり等の選別)を厳格化していく」(53.6%)、「有期契約労働者の更新を抑制していく(回数上限や通算勤務上限等の設定含む)」(46.4%)などの方策が採られています。
他方、無期化の推進については、「正社員とは異なる無期契約労働者(地域・職種限定等)の区分を新たに検討する」と「有期契約労働者から正社員への転換制度を新設/既存のものを活用する」がともに35.7%でした。つまり、既存の正社員と有期契約労働者の間に「地域限定社員」のような無期契約労働者の新区分を設けるか、そうした新区分を設けないで正社員化するかという2つに大きく分かれるようです。

改正労働契約法を踏まえた有期契約労働者の雇用管理の見直し(複数回答) (単位:%)
「改正労働契約法を踏まえた有期契約労働者の雇用管理の見直し(複数回答)
JILPTビジネス・レーバー・モニター調査「労働法制の見直しにどう対応するか」をもとに作成

有期労働契約の更新のルールを見直すときの注意点

●契約更新を5年までとする際には

「5年ルール」に対応した有期労働契約のあり方としては、「有期労働契約が更新を含めて通算5年を超えないように運用していく」こともできます。実際、有期労働契約の新規採用のときに「契約更新は5年まで」とする例がでてきています。このような対応方法をとる場合は、前述の「雇止めのルール」に基づいた運用が必要になります。すなわち、契約更新のたびに書面を交わし、労働者側に自動更新を期待させるような言動をしないことが条件になります。

●労働契約書はどう変えるか

有期労働契約の更新回数を制限する場合には、その旨を契約書に明記する必要があります。労働契約書の内容については、厚生労働省がホームページでひな形を示しています(※4)。「期間の定め有り」とする場合は、契約の更新の有無、更新の基準について明記しておく必要があります。

有期労働契約の労働契約書の例(抜粋)
有期労働契約の労働契約書の例(抜粋)

※3 ビジネス・レーバー・モニター調査「労働法制の見直しにどう対応するか」
http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2013/02/062-063.pdf

※4 厚生労働省 労働条件通知書のサンプル
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/meiji/dl/h241026-2-betten.pdf

無期化のメリットと対応の注意点

●無期労働契約に転換するメリットとは

有期契約労働者を無期労働契約に転換することは、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。企業のアンケート調査(※1)で最も多かった回答は「長期勤続・定着が期待できる」の61.2%でした。次に多かったのは「有期契約労働者の雇用に対する不安感を払拭し、働く意欲を増大できる」(56.5%)で、3番目が「要員を安定的に確保できるようになる」(37.0%)でした。多くの企業で有期契約労働者に対して長期勤続を前提としており、戦力として期待している実態が伺えます。

無期契約に転換するメリット(複数回答) (単位:%)
無期契約に転換するメリット(複数回答)
独立行政法人労働政策研究・研修機構「高年齢社員や有期契約社員の法改正後の活用状況に関する調査」

●無期労働契約に転換するうえでの課題とは

他方、有期契約労働者を無期労働契約に転換すると、どのようなことが課題になるかというと、調査では「雇用調整が必要になった場合の対処方法」(55.6%)が最も多くなっています。無期労働契約に切り換えた場合は、正社員と同様に解雇権濫用法理が適用されるので、経営状態が悪化したからといってただちに解雇できるわけではありません。
2番目と3番目に出てくる「労働条件」については、無期転換前と同じであっても構わないし、別の内容に変更することもできます。この場合に考えられる労働条件としては、勤務場所、従事業務、転勤や勤務形態の変更の有無、労働日(休日)、労働時間(パートの場合には特に重要)等、多様なものが考えられます。同じ無期労働契約の労働者の中でも個別に契約内容を変えることができます。

無期契約に転換するうえでの課題(複数回答) (単位:%)
無期契約に転換するうえでの課題(複数回答)
独立行政法人労働政策研究・研修機構「高年齢社員や有期契約社員の法改正後の活用状況に関する調査」

●地域や職種を限定した無期雇用の新区分をつくる

雇用管理は、現在は正社員と非正規社員に分けて行う企業が大半ですが、今回の改正労働契約法によって有期契約労働者に対して無期化の道が開かれたため、正社員と非正規社員の中間に新区分を設けることも考えられます。その際は正社員とのバランスに配慮しながら、労働時間、休日・休暇、職務内容、定年などの労働条件を決定する必要があります。また、非正規社員のモチベーションやキャリア意識を高めていくためには、正社員とは異なる教育や評価方法、昇進・昇格の基準を新たに設計する必要も出てきます。改正労働契約法では、無期化されたときの労働条件は、有期のときと同じでも構わないが、変更する場合は有期のときに比べて不利益にならないように配慮しなければならないとしています。
このような無期雇用の新区分は、例えば勤務地や職種を限定することで従来の正社員とは区別されます。

●「無期労働契約に転換した後における解雇」に関する通達

もしも経営悪化などによって雇用調整が必要になった場合の対応については、下記の厚生労働省の通達が参考になります(※5)。

「無期労働契約に転換した後における解雇」に関する通達

無期労働契約に転換した後における解雇については、個々の事情により判断されるものであるが、一般的には、勤務地や職務が限定されている等労働条件や雇用管理がいわゆる正社員と大きく異なるような労働者については、こうした限定等の事情がない、いわゆる正社員と同列には扱われることにならないと解される

勤務地や職務が限定されている場合は、配転・出向などによる解雇回避が難しいため、正社員よりも先に解雇される場合があり得ると読み取ることができます。これをもとに、無期契約労働者との契約や就業規則の中に、勤務する事業場が業績不振のために閉鎖された場合や、対象とする職務が組織再編成のために廃止された場合は、会社都合の退職になる場合もあると明記する企業があるようです。

有期雇用の無期化は企業にとって固定費の増大につながるため、無制限に無期化することは非現実的です。また、働く側の要望は様々であり、年齢や家庭の事情などによって無期雇用よりも有期雇用を望む場合もあります。今後は将来のキャリアプランについて本人の意思確認を行ったうえで、企業側の期待像を明確に伝え、労働契約をめぐる誤解やトラブルを防いでいくようなコミュニケーションがますます重要になってきそうです。

※5 平成24年8月20日付け基発0810第2号「労働契約法の施行について」
(厚生労働省労働基準局長発 都道府県労働局長あて)(抜粋)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002hc65-att/2r9852000002hc8t.pdf

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