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(情報掲載日:2013年11月20日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

女性管理職登用の現状と育成法

VOL.23


政府は「成長戦略」の中に企業の女性役員や管理職の登用拡大を盛り込みました。数値目標を掲げ、女性管理職の育成に力を入れる企業が増えています。企業の女性管理職登用の現状と育成法についてご紹介します。

女性管理職登用の現状と課題

●8割の企業で女性管理職10%未満

女性の活躍が経済の活性化につながるとして、政府は全上場企業において「役員に1人は女性を登用する」ことを求めています。しかし、現状では役員に登用される女性の比率は極めて小さくなっています。内閣府男女共同参画局の調査(※1)によると2011年5月時点で上場企業に占める女性役員(執行役員は含まない)の比率は1.2%で505人でした。他方、先進諸国の女性役員比率は10%以上であり、日本とは大きな差があります。
女性役員が1人登用されるまでには、候補となる女性の事業部長や部長が多数存在することが条件となりますが、帝国データバンクの「女性登用に関する企業の意識調査」(※2)によると、8割の企業で女性管理職の比率が10%という低いレベルにとどまっています。

女性管理職割合 ※小数点以下第1位まで記載
女性管理職割合

帝国データバンク「女性登用に関する企業の意識調査」

業種別の傾向としては、小売(7.8%)、不動産(5.9%)、サービス(5.0%)等で女性管理職を50%以上登用する企業の比率が高くなっています。これらの業種では、市場の動向に対して女性消費者の影響が強いと言われるので、企業経営や商品戦略でも女性の活躍が期待されているからと考えられます。
現状では女性管理職の登用実績が決して多いとは言えませんが、増加の兆しは見えます。同調査で「5年前と比較して女性管理職の割合がどう変わったか」について質問したところ、16.8%の企業が「増加した」と回答しました。そして、「現状と比較して今後どのように変わるか」については22.0%の企業が「増加する」と回答しています。

帝国データバンク「女性登用に関する企業の意識調査」

帝国データバンク「女性登用に関する企業の意識調査」

●女性管理職の登用が進まない理由

将来の管理職候補である総合職の女性について、10年後の離職率が65.1%と高い数値になっています。では、継続して就業している女性は男性と同等に昇進しているかというと、必ずしもそうではありません。総合職で採用された男性が10年後に係長相当職に就いた割合が34.6%であるのに対して女性は11.1%、課長相当職で男性の4.6%に対して女性が1.3%という低い数値にとどまっています(※3)。

10年前に総合職で採用された社員の現在の職位(男女別、平成22年)
女性管理職の登用が進まない理由

内閣府「男女共同参画白書」平成25年版 第1-特-33図

女性管理職の登用がなかなか進まない理由として、企業側からは「結婚を機に退職する女性社員が多く、女性よりも定着率が高い男性社員の登用が優先されがちである」という声が多くあがっています。実際、第一子が生まれるまでに退職する女性の割合は、内閣府の調査(※4)によると1985年以降60%前後で大きな変化は見られません。
スタートが平等であっても、結果として管理職の数が同等にならない理由について、働く女性側の意見としては「育休を利用しづらい雰囲気がある」「管理職になっている女性の先輩がいないのでイメージがわかない」「女性の中途採用や再雇用制度など、キャリア中断をしても復帰できる仕組みがない」などの声が多くなっています。

※1 内閣府男女共同参画局「政府の経済界への要請〜女性の活躍推進関係から」
http://www.gender.go.jp/policy/sokushin/pdf/yosei.pdf

※2 帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査」
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p130802.pdf

※3 内閣府「男女共同参画白書」 平成25年版 第1-特-33図
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h25/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-00-33.html

※4 内閣府「男女共同参画白書」 平成25年版 第1-3-3図
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h25/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-03-03.html

数値目標を掲げて女性の登用を進める

●政府が女性活用度の公表を要請する

企業側としては、政府が「女性を積極的に登用してください」と言っているのに、それを無視することはできかねます。重ねて政府は上場企業を対象に女性の管理職数を調査し、内閣府のホームページで公表する方針を表明しました。各企業の女性の役員・管理職の人数のほか、男女別の割合、男女別の育児休暇の取得者数、取得率などを調べ、各企業に許可を取ったうえで2014年1月の公開を目指すというものです。
公表されれば企業間での女性活用の格差が明らかになるため、後れを取っている企業にはプレッシャーがかかり、他社の好事例にならって何らかの女性活用施策を打ち出さざるを得なくなりそうです。
女性活用の好事例は、すでに厚生労働省が2004年から「ポジティブ・アクション応援サイト」(※5)を設けて各企業が共有できる仕組みをつくっています。各地の労働局が企業を訪問して好事例の掘り起こしを行い、企業の協力を得て掲載した女性活用事例は2013年11月現在で919件にのぼっています。このサイトの中には就職活動をする女子学生向けに公開されているページもあり、女子学生の意識啓発にもひと役買っています。

●女性活用度が投資先を選ぶ基準の1つになった

企業に女性の積極登用を迫るのは政府ばかりではありません。東京証券取引所など全国5証取と内閣府が2014年春に「コーポレートガバナンス報告書」の中で女性登用の実態を開示するように要請しました。これを受けた企業が内容の書き換えに着手し、最終的には全上場企業の1割以上が何らかの対応に踏み切りました。「◯年後に女性管理職を◯人にする」といった明確な目標を掲げる企業も見られます。「コーポレートガバナンス報告書」は上場企業に義務づけられた年次報告書であり、投資家にとって重要な判断材料になります。
すでに欧米の先進諸国では、企業の女性取締役の数や女性登用施策の内容が、投資や信用取引の対象を決定する際の重要な判断材料の1つと見なされています。「女性を活用する企業に投資するとリターンが高い」という投資家もいます。
わが国では、よりわかりやすいかたちで投資家向けに女性活用企業を推奨すべく、「なでしこ銘柄」が発表されました。東京証券取引所と経済産業省が共同で女性活用企業を選定したもので、自己資本利益率(ROE)の高さと、女性の登用実績や仕事と家庭の両立支援の取り組みが評価基準となっています(※6)。
投資家が「なでしこ銘柄」を評価して投資するようになれば、企業はそこから得た資金をハード面での設備投資に使えるのはもちろん、女性人材の育成といったソフト面での投資にも使うことができ、その結果、業績が向上すれば投資家にも還元され、企業評価がさらに高まるという好循環が生まれることを期待できます。

※5 厚生労働省 「ポジティブ・アクション応援サイト」
http://www.positiveaction.jp/pa/

※6 経済産業省 女性の活躍で企業を視る「なでしこ銘柄」を発表
http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/nadeshiko.html

企業が女性管理職を増やす方法

●女性社員を一定数以上のレベルに底上げする

企業が社会に向けて「◯年までに女性管理職の比率を◯%にする」とか「◯人にする」といった具体的な数値目標を掲げれば、それを達成する責任が生じます。目標値のとおりに女性管理職を増やす方法として何が有効かについて、すでに女性の積極登用に取り組んでいる企業の事例をご紹介しましょう。
目標を実現するには、管理職の候補となる女性社員を一定数以上のレベルに底上げすることが必要です。その方法は、(1)女性の採用数を増やす、(2)結婚・出産・介護によるキャリア中断を防ぐ、(3)管理職になることへの動機づけとエンパワーメント、 (4)現場の男性上司に対する意識啓発の4 領域に分けられます。

将来の管理職候補となる女性社員の数を底上げする方策
将来の管理職候補となる女性社員の数を底上げする方策

●女性管理職がメンターとなり後輩を支援する

女性を管理職にふさわしい人材として育てようとしても、女性の側にその気がなければ空回りしてしまいます。女性の意識の変革を促し、管理職になるという目的意識とモチベーションを引き出す仕組みがあれば、そのようなミスマッチを防ぐことができるでしょう。
すでに女性管理職がいる企業では、その女性たちが将来の管理職候補の女性の「メンター」となり、悩み事の相談に応じたり、アドバイスを与えるといった支援をして、効果を上げています。マンツーマンでメンターをあてがうほどの人員がいない場合は、「女性管理職フォーラム」といった気軽に参加できる場を設け、管理職になった女性が後輩たちに向けて講話をしたり、質疑応答に応じたりする例もあります。
とくに管理職候補の女性が妊娠・出産に直面し、仕事と家庭の両立が具体的な課題として立ちはだかって来たとき、その困難さを乗り越えた先輩の話が聞けると、勇気づけられ、仕事を辞めずに続けてみようという気持ちになれる女性は少なくないようです。

●選抜研修を実施し使命感を持たせる

当初は「私は管理職には無理」と考えていた女性が、管理職や役員に抜擢された例があります。ある女性役員は、管理職候補の女性ばかり集められた研修において、「30年後の会社の姿を考える」という課題を出され、自分なりに深く考え進めた結果、「この組織でがんばっていこう」という気持ちが固まったそうです。
とくに女性管理職の先行事例がない場合や数が少ない場合は、こうした選抜教育を実施して女性の活躍に道を開くパイオニアとしての使命感を持たせ、具体的なビジョンを構築させる方法が効果的のようです。その際、選抜方式ではなく、対象者を公募制にして、管理職になる意欲を重視するところもあります。

●現場の上司の意識啓発をする

女性を管理職候補として育成するには、現場のOJTが重要な意味をもち、その際にキーパーソンとなるのが上司です。ある企業で女性初の役員に抜擢された50代の女性は、「仕事に男も女もないという考え方の上司に鍛えられたおかげです」と、雑誌のインタビューで語っていました。
上司に対して女性管理職候補を育てるための意識づけをし、OJTの進め方や女性に必要な配慮などを指導する研修を始める例が増えています。中には部下の女性を管理職として育てる育成責任を負わせ、評価の対象とし、行動計画を提出させる企業もあります。

●役員候補の女性の人材バンクが構想されている

上記のような施策を打っても目標値に達しない場合は、社外の人材をスカウトして登用することも必要になってくるでしょう。しかし、課長や部長はまだしも役員となると社外で見つけるのが難しいという企業が多いようです。役員候補となる女性がいないという企業の声に応えるため、政府主導で「女性社外取締役候補のデータベース」を作ることが検討されています。政府審議会の女性委員データベースを、本人の許可を得て企業に公開することが想定されています。

欧米ではクォータ制(割当制)といって、女性役員比率を30%また40%以上など、一定数の登用を法律で義務づける国も見られます。日本でそこまでするのは時期尚早と言われますが、グローバル経済の中で企業の舵取りをする役員の中に女性が1人もいないという状況では、世界中の多種多様な消費者や取引先、投資家、そして進出先の国の政府の支持を得ることが難しいという見方もあります。管理職に就く意志と能力をもつ女性が増えることを期待するよりも先に、企業が女性管理職を増やす数値目標を掲げ、その実現に責任をもち、実効性のある方策を打つことが迫られているようです。

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